ロボットの私は島には上陸しない。強いし、島に入る意味がないからいつも船番だ。だけど今、私はなぜか島の中にいる。極寒の冬島、ログは5日で溜まるらしいが、こんな寒さならメリー号で過ごした方がよさそうだ。と確かナミ様が言っていた。話が逸れてしまったが、私は今ベルナ様とその極寒の地を歩いている。
「ここどこだろうねー。」
『地図を検索します』
「あのね、私ルフィのこと好きなの。」
と、言われてもなんて返していいのかわからず、ただベルナ様の瞳を見つめることしかできない。
「でもルフィはロボットのあなたが好きでしょう?」
『なにが、言いたいのですか』
「この極寒の地に、あなたを置いていけば凍結してロボットでも制御不能になるでしょう?」
あの、明るい笑顔はどこにいったのか、冷たい瞳で言ったベルナ様。でもきっとそれはできないことを知っている。私の方が絶対的に強い。そういう強く作られたロボットだから。
「でも、できないのよね。」
『はい』
「だから、ここで二人で残りましょう。命令よ。」
クルーの命令は絶対。ベルナ様をクルーに登録している以上、逆らうことはできない。
「そしてルフィに見つけてもらうのよ。きっと大事な方を一番に助けてくれるはず。」
『そんなことをして何になるんですか』
「どちらが大事か気づいたとき、私たち三人の関係は確実に変わる。」
そう言って、ベルナ様は冷たく笑った。
「それにしても寒い。」
『暖房モードに切り替えますか』
「そんな機能まであるの?」
『冷房モードもあります』
自身を暖めたり冷やしたりして、周りの温度を変化させる機能だ。ウソップ様が機械を買うより安いからという理由で取り付けていた。
「あのね、ルフィが前の島……つまり私の島で助けてくれたの。」
木の下に座り、暖房モードをつけながらベルナ様の話に耳を傾ける。ちなみに充電もしながら、だ。
「私、お父さんに虐待されてたの。毎日苦しくて、痛くて。そんな日々からルフィが救ってくれたの。おれがお前を守るからって。そしてお父さんに説教してくれた。」
おそらく、説教という名の暴力をルフィ様はしたんだろう。
「そのとき、この人に着いていきたい。って思う頃には恋に落ちてたの。」
と、言われても。私はどうすればいいのだろう。
「だから、本当に邪魔なの。」
『そう言われましても』
なぜだかわからないけれど、ベルナ様は小さく笑った。私の手のひらにある小さな雪の結晶は静かに溶けて行った。
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