『もう終わりにしましょう。』

レミがポツリと呟いた。おれはわけがわからず首を傾げる。レミの瞳が揺れ、色が消えた。真っ暗で、このまま消えてしまいそうだ。

「レミ、どうしたんだよ。」
『自爆します。離れて下さい。一分前。』
「は!?自爆!?」

おれが驚いてレミをみてると、笑った。笑顔機能なんてないはずなのに、笑った。するとレミは甲板の真ん中に立つ。

『もう、人間の心を持ってしまったロボットなんです。私はルフィ様に恋をしてしまいました。』

レミの柔らかなその声はウソップが好きな声らしいけどおれも好きだ。その声で、おれを好きなんて言うから心臓が跳ねた。

「なんで自爆するんだよ。」
『ロボットは人間に恋をしてはいけないんです。』

わけわかんねェ。そんなの誰が決めた? なんで恋しちゃいけねェんだ?聞きたいことが多くてうまく言葉にできない。

『私は故障してもなおります。でも、ルフィ様は故障してもなおりません。死ぬのです、人間は。』
「わかってる。」
『私だけ生きるのは辛いんです。ルフィ様とずっと一緒にいたい!』

スーッと流れるレミの涙は静かに甲板の芝生の上へと落ちた。嬉しかった、だから抱きしめた。

『離れて下さい。あと30秒です。』
「自爆するなら、おれもする。」
『なに言ってるんですか、あなたには夢が………!!』
「おれの夢はレミと叶えたい。」

おれだけが海賊王になっても、隣にレミがいなきゃ意味がない。ぎゅうっと強く抱きしめると、レミはもっと泣いた。

『ダメなんです。ルフィ様が死ぬところを見たくない。あなたが、他の人を好きになるのを見たくない。あなたが、離れるのを見たくない。ルフィ様、あなたを………!!』

そう言うレミの口を黙らせたくて強引に唇を奪った。レミの唇はロボットのはずなのに柔らかくて暖かい。

「なにも言わずに、おれの隣にいればいい。おれが死ぬ時、レミを殺せばいいのか?じゃあ一緒にいてくれんのか?」

きっとおれはレミを殺せない。けど、レミがそばにいてくれるならこんな嘘いくらでもつける。ウソップみたいにうまい嘘かは知らねェけど。

『ルフィ様………あなたが好きです。』
「おれも、好きだ。」

もう一度唇を重ねる。自爆は解いたみてェだ。安心して、おれはその場に座り込んだ。

『ルフィ様、あなたのその手で私を殺して下さい。』
「それまで死ぬなよ。他のやつに殺されるなよ。」
『了解しました。』

レミが、おれに抱きついてくるから嬉しくなって強く抱きしめ返した。今までレミがおれに抱きついてきたことなんて一回もない。

『私のご主人様はあなただけです。』
「ウソップは?フランキーは?みんなは?」
『ルフィ様、ただひとりです。』

白黒だった世界から、急に色が染まっていった。ってレミが言ってた。それはおれに出会ってからだったらしい。レミに一目惚れしたのはおれだけだと思ってたから、おれはそれを聞いたとき一日中ニヤニヤしててナミに引いた目で見られた。そんなことも許せるくらい、おれは浮かれてた。

『ルフィ様?口元が緩んでますよ。』
「レミー。」
『はい。』
「レミ、ルフィって呼べよ!」
『命令ですか?』
「おう。」

すうっとレミの息を吸う音が聞こえた。息なんてしなくてもいいはずが、最近になってレミの身体が人間に近くなってきたらしい。ウソップが言ってた。

『ルフィ。』
「もっかい。」
『ルフィ。』
「レミ。」

レミの腕を掴んで、ぐっと引き寄せる。ロボットとか、人間とかもうそんなの関係ねェ。好きなら別になんでもいい。ただ、レミが笑ってくれればそれだけで嬉しい。



20140208



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