最近なぜかルフィ様に無視し続けられている。特に私から話しかけることはないから、命令されるまではわからなかったのだけれど。毎日数十分置きに話しかけてきたにも関わらず、数日間話していない。

「レミちゃん、ルフィ呼んできてくれ。」
『はい。今日はなんですか。』
「あいつの好きな骨付き肉がメインかな。」
『わかりました。』

いつも『夕食です』と呼びに行くと料理のメニューを聞かれるため、前もってサンジ様に聞いておいた。きっと甲板にいるはずだ。歩いていくと、ああやっぱり。ルフィ様はいた。そしてベルナ様も。

私に話しかけない分、ルフィ様はずっとベルナ様といる。ウソップ様やチョッパー様の遊びの誘いを断ってまで、ベルナ様といる。その理由はわからないけれど、たまらなく胸が痛む。

『ルフィ様。』
「おお、レミ。」
『夕食の時間です。』
「すぐ行く。」

あれ、聞かれなかった。そして目も合わせてくれなかった。あの雨の日から、ずっとこんな感じだ。私はそのままキッチンに戻る。黒いもやもやを抱えながら。

『ウソップ様、体の中に黒いモヤモヤとした霧のようなものがあります。どうすればいいでしょうか。』
「黒いモヤモヤ?んー。一応見てみるか。」

ソファに座るウソップ様は私を地面に寝かせて、お腹を開いていく。色んな線が張り巡らされているだけで、特になにも異常はないみたいだ。黒いモヤモヤもないらしい。

『これはなんでしょう。』
「嫉妬じゃない?」
『嫉妬?』

ずっと私とウソップ様の様子を近くで見ていたナミ様がニヤニヤと笑いながら言った。嫉妬とは、人間が抱く感情のことで、私とは関係のないもの。

「感情が生まれてるんでしょ?じゃあ、嫉妬しても当たり前じゃない。」
「嫉妬してるってことは、レミはルフィが好きなのか?」
「どうなの?」

ナミ様とウソップ様は同時に私をみる。その目は好奇心に満ち溢れていて、でも期待に添えるような返事はできない。

『わかりません。まず私はまだ好きという感情の意味がわかりません。』
「感情っていうのは、考えるものじゃないの。」
「好きってのはな、感じるものなんだよ。」

威張りながら言うウソップ様の言っている意味がよくわからない。好きは感じるもの、なにを感じればいいのか。

「ルフィの作戦、大成功ね。」
「ロボにも通用するんだな。」
『なんの話ですか。』

ルフィ様の作戦?二人がニヤニヤしている意味もよくわからないし。もう頭が熱くて、キャパオーバーしてしまいそうだ。

「押してダメなら引いてみろ、だ。」
『なにを押して、なにを引くんですか?』

二人は笑うだけでなにも教えてくれなかった。結局次の日から、ルフィ様は前以上に抱きついてきた。しかも顔がニヤけながら。きっとウソップ様とナミ様が話したのだろう。

「レミーーー!」
『なんですか、ルフィ様。』

こんな日々がずっと続けばいいと思う。人間は老いていくし、いつかは死ぬ。だからこそ、大切にしなければいけないこの短い幸せな時間を。

『ルフィ様。』
「ん?」
『やっとわかりました。』
「なんだよ」

私がなんのために生まれて、どんな風に生きるのか。それは全て私次第なのだと、初めて気がついた。



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