※もしもフミの寿命が二年後には間に合ったら。




「フミ!!!!」
「フミ〜〜〜っ!!」

みんなの声が聞こえて、私はニッコリと微笑んでみせた。余命があと数ヶ月だったはずが、二年ももってしまったんだから、奇跡に近い。

「ルフィっ、」

ルフィに抱きつかれ、私はよろめいたけどガッチリと支えてくれた。久しぶりのルフィの匂いが鼻をかすめて、胸がホッとした。もう会えないと思ってたから涙が止まらない。

「ルフィ……うっ……ヒック……会いたかったぁ…!グスッ」

もう体の中はボロボロだけど、私は最期までみんなと一緒に冒険したかった。涙でぐしゃぐしゃになってもいい、あまり体に力は入らないけど、出せる分だけの力でルフィを抱きしめた。

「ルフィ、先に出港しないと…」
「ああ、そうだ。よし、野郎共ー!!!出港だァ〜〜〜!!」

おおっ!という声が聞こえ、船は海へと沈んでいく。次の島は魚人島だ。

私の二年間は、ベッドで寝たきりの生活が続いた。治療を続けて、薬を飲んで。また航海する日を願いながら。

「フミだ。本物だ。」
「ルフィ、苦しいよ。」

芝生の敷かれた甲板で、ルフィに抱きつかれて、じっと見つめられる。苦しそうな私を見てか、少し緩くなった。

「フミ。」
「ん?…………んん、」

突然押しつけられた唇は少し震えていて、でも私はなにもできない。ただキスに応えるだけ。

「ルフィっ…………大好き。」

激しくなるキスの中、ルフィの震えがおさまっていくのを感じた。

「フミが……帰ってきた。」
「うん。」
「フミ………おかえり。」

その言葉が嬉しかった。生きていてよかったと、心の底から思う。みんなからもおかえりという声が聞こえてきて、また涙腺が緩む。

「ただいま。みんな!」

ルフィの首に手を絡め、唇を唇に押しつける。二年ぶりのキスは激しく濃厚だった。



***




魚人島。そこはとても幻想的な世界で、私の心を癒してくれた。しらほし姫とも仲良くなって、魚人島も救えて。もう後悔はない。なんとなく、なんとなーく。もう。私は駄目な気がする。

くまさんとうさぎさんとパンダさんを抱きしめて、竜宮城のベッドに横になる。んー。誰もいないな。瞼が重くなって、自然と閉じていく。もう開くことはないのかな。

バタンッ!!!!

勢いよく扉が開いて、誰かが入ってきた。うーん、誰だろう。もう手足の感覚はなくて、左手に光る指輪を最期にみた。

「フミっ!」

あれはたぶん。ルフィの声。必死で私を呼ぶその声は胸の奥まで響いていた。意識が遠のいていく。これが、死ぬってことなんだ。




「ルフィ、ありがとう。」




最期のフミの言葉はこれだった。小さくて、消えそうだったその言葉をなんとか聞き取って、眠るようなフミをみつめた。触れると暖かくて、まだ生きてるんだと思った、また目覚めるんだと思った。でも、違う。フミは死んだ。

M(マスター)の基地で敵のひとりが悪感症だということがわかった。

「お前、悪感症なのか!?」
「ああ!そうだ!麦わらのルフィ!!」

くそ、はやくMを誘拐しねェと。と焦りながらフミの顔を思い出していた。

「どうした。麦わら屋。」
「トラ男!!」
「こんな雑魚にてこずってんのか?」
「違ェ!!けど、こいつが悪感症って言うから!!」
「悪感症、か。」

悪感症のやつをおれは倒していいのか。そんなおれらしくねェこと考えて、先に進めないでいた。

「治したら、倒すのか?」
「はぁ?……なに言って………」
「ROOM……これは末期だな。もうすぐ寿命だ。治すのは簡単だけどな。」

おれは腹の底から怒りと後悔と悲しみと絶望が沸き上がってきた。トラ男とフミは一度会っているはずなのに。あの時、説明していれば……なんでこいつが助かってフミは死ななきゃいけなかったんだ。なんで、なんで。

「おい、麦わら屋。」
「ああああああ!!!!!」

暴れずにはいられなかった。

「麦わら屋!!!無駄に暴れるな!!」
「ああああああ!!!!!やめろ!!!離せ!!!!」

建物が崩れ、誰の声も聞こえねェ。もう、どうでもいい。

なんでフミが死ななきゃいけなかったんだ。なんで、こいつが!!

フミが生きる道があったんだ。救えたのに。またあの笑顔が見れるはずだった。

「ああっ………フミ……」
「フミ……ああ、シャボンディの時会った……そいつがどうかしたのか?」
「悪感症で………死んだんだよ!!!」

トラ男が驚いた顔をしてるけど、どうでもいい。

フミは、おれの大切な人だ。愛しくて、愛しくてたまらかった人だ。

ずっと、一緒にいたいと思った人だ。

「フミ……あああっ!!!」
「暴れるな!麦わら屋!」

あと少し生きていたら、トラ男に会えてたはずなのに。おれの戦いが長かったからか?

まず、おれがフミを海に連れて行ったからか?わからない。誰が、フミを殺したんだ。






ーーールフィ!!やめて!!




聞き慣れた、フミの声におれは立ち止まった。周りを見渡せばたくさんの人が倒れてる。

フミはこんなこと望んでねェんだよな。誰のせいとかじゃねェんだよな。手が少しだけ暖かくなったかと思うと、フミの匂いがした。

「フミ、ありがとう。」

その言葉はフミに聞こえたかな。





もしも、私が。





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寧様リク
もし2年後会ってパンクハザード辺りで医者ローがいる 前で死ぬ話。

ローの前では死んでいません!ごめんなさい!

執筆 20130903
修正 20140905


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