もう一度シャボンディ諸島に戻ってきたおれは、ある女の子を探していた。残り数ヶ月の寿命だった彼女が、二年たった今、ここにいるのか。不安と心配でなにがなんだかわからない気持ちになっていた。 「フミっ………!!」 彼女の名前を呟いて、二年前にはなかった新しい帽子をかぶりなおす。悪感症のことをいっぱい調べて、特効薬をつくる方法もわかった。お願いだから、またおれに笑ってほしいんだ。おれがバケモノって言われなかったのはフミのおかげだから。 17:さぁ、嘘の話を聞かせましょう サニー号へ集まった9人の仲間たち。全員の顔は暗く、せっかくの再会という顔ではない。なにも話さず芝生の敷かれた甲板でそれぞれの時間をすごしていた。 「…………っ!!海軍の軍艦だ!!」 そう叫んだウソップの声を聞いても、下を向いていたルフィの顔は上がらない。軍艦から大砲が飛んできて、船が大きく揺れた。水しぶきが飛び、ウソップは慌てたようにルフィをみる。 「………、ルフィっ」 「っ、もうちょっと。」 ルフィは顔を上げ、ただ真っ直ぐにシャボンディ諸島を見つめた。彼女がいつやってきてもいいように、腕を伸ばす準備をして。だが、島から現れたのは見知らぬ老人だった。 「海兵かっ!?」 一応、戦闘態勢をとる麦わらの一味をみて、老人は小さく笑った。 「これが麦わらの一味か。」 「なんだおっさん!なんか用か?」 ルフィが問うと、老人はサニー号へと乗り込んだ。 「わしは敵ではない。首もとにある刀と足と腕を退けてくれんか。」 老人の首もとにはゾロの刀、サンジの足、ルフィの腕があり、なにかをすれば首が飛ぶ。老人の言葉を信じられないのか、ゾロの刀だけは首もとから退かない。 「フミ、といえばいいのかのぉ。」 「ッ!!」 ゾロはぎょっとした表情を向け、刀をもどす。ルフィたちは驚いて老人をみた。 「まずは自己紹介じゃな。わしはカメじゃ。」 しわしわの手が目の前に出されて、ルフィはそれを緩く握った。 「次は、なにから話せばいいかのぉ。」 「フミはっ!!!フミはいったい!!!フミ!!」 「落ち着け。全て話すつもりじゃ。」 ハンコックの船が軍艦を止めてくれているため、大砲は飛んでこない。全員は芝生の敷かれた甲板に座り、老人の話を聞くことにした。サンジの淹れた熱い紅茶なんてなく、本当に真剣な話。 「フミからだ。」 大きな袋を目の前に出され、ルフィがおそるおそるその中身を見た。 「ぬいぐるみだ。」 いろんな動物のぬいぐるみが9つ。それぞれ仲間の特長にあったものがついていた。たとえばルフィなら麦わら帽子だ。 「フミが毎日毎日丁寧に縫っていたものだ。」 ルフィは麦わら帽子をかぶったフワフワなぬいぐるみを優しく抱きしめた。ほのかなフミの香りが鼻をかすめる。そのルフィの姿をみて、一味はつらい顔をする。 「それで………フミは……」 ナミの言葉にカメは頷いて、ゆっくりと口を開く。ルフィは強くぬいぐるみを抱きしめ、自分を安心させた。そうしなければ、どうにかなってしまいそうだったからだ。 戻る |