体調はすごくいい。朝に薬を飲み、島へと上陸した。シャボンディ諸島、魚人島に行くためにはコーティングというものが必要らしいのだ。



14:嘘のない気持ちを叫ぼう



「フミちん!そのぬいぐるみ可愛いね!」
「ありがとう!」

今日はルフィからもらったパンダさんを持ってきている。ルフィは私とケイミーちゃんの会話を聞いた後、嬉しそうに笑って私をみた。

「ルフィからもらったの!」

ケイミーちゃんは優しく微笑んでくれた。このぬいぐるみと私の左手にある指輪は宝物。

「はやく魚人島行きたいね!」
「おう。魚料理かなー。」
「ちょ、ルフィ。少し残酷だね。」

ルフィと笑い合い、シャボン玉が飛び交う空の下を歩いていく。





ケイミーちゃんが売られそうになったとき、私はなにもできなくて、ただパンダさんを抱きしめてた。ルフィやみんなに戦うなと言われたから。

「フミ、大丈夫か?なんともないか?」

ルフィのゴツゴツとした男の手のひらが私の頭を撫でた。

「私は大丈夫。ルフィこそ……」
「おれはなんともねェよ。」

目の前には沢山の海兵たち。そして横にはローさんとキッドさんの仲間達。

「そんな餓鬼が仲間にいんのか。」
「ガ、ガキじゃないです!」
「じゃあ、それはなんだ。」

ぬいぐるみを指さされ、私はなにも言い返せなかった。やっぱり子供っぽいかな、17歳でぬいぐるみを持ってるなんて。

「やめろ。これ以上フミになんか言ったら、おれが許さねェ。」

ぐっとルフィに引き寄せられて、スッポリと腕の中におさまった。ローさんとキッドさんは驚いた顔をする。

「麦わら屋の、女か。」
「ああ、女だ。手出すなよ。」

きゅんっと胸が高鳴る。恥ずかしくて、私はパンダさんをぎゅっと抱きしめた。

「ッ!!、出すわけねェだろ。」

キッドさんの顔が赤いのは、怒ってるからなのかな。ルフィから離れて、私はチョッパーの近くへと移動した。今から3人は戦うから。

「フミ!!大丈夫か!?」
「うん、大丈夫だよ。チョッパーくん。」
「無理したら駄目よ?」

ナミちゃんの方を向いて大きく頷く。私がもし、今体調を崩せばみんなが助けてくれると信じてるから。無理なんてしないよ。

「あ、薬の時間だ!フミ!」
「え、ここで……?」
「当たり前だ!」

私の首にかかっていた水筒の蓋を外し、水をいれる。チョッパーくんに5錠貰うと、口に放り込んだ。この前、粉薬が嫌いだと打ち明けると、錠剤を作ってくれるようになった。

「よし。そろそろ戦いも終わるみたいだぞ。」

私たちは海軍大将が来る前に逃げなければならない。今度こそ、足手まといにならないようにしなきゃ。気合いを入れて、水筒を首にかけた。





ーーーーー怖い怖い怖い

私はただ、ルフィの近くにいて逃げるだけ。後ろからは戦桃丸さんが追いかけてくる。周りを見渡せば遠くのほうでみんなが逃げていた。

「ゴホッゴホッ………」
「フミ!!!!」
「だいじょ、ゴホッ」

私、足手まといだ。みんなに迷惑かけたくなかったのに。どうして。

「フミ!おれの背中に乗れ!」
「チョッパーくん、私大丈夫だから。」
「………フミ!!」

この場にいるのはルフィとチョッパーくんとロビンちゃん。三人は心配そうな顔をして私をみる。

「大丈夫ッ!!!!三日後にまた集まるんだよね!?」

そう言って、私が走り出すと三人もついてきた。

「私、頑張るから。」

私のこの言葉はみんなに聞こえただろうか。

「ゾロッ!!!」
「ゾローーー!!!!」

みんなの声が聞こえて、私はゾロさんの方をみた。本物の七武海バーソロミューくまがゾロさんの目の前にいた。

「ゾロッさん!ゴホッゴホッゴホッ!!」

苦しい。胸が締め付けられて、うまく呼吸もできない。頭痛もひどくなってきて、足も動かなくなっていた。するとバーソロミューくまさんの目が私に向いた。と思ったら、目の前に現れた。

「お前が先だ。」

ああ、私もう、みんなに会えなくなるかもしれない。そう直感してしまった。

「みんな!!!今まで、ありがとう!!!」

気がつけば全力で叫んでいた。

「みんなと色んな場所にいって、色んな物を見て!!!私!!!!すごく、すごく、幸せ……だったよ!!!私はみんなが大好きです。」

ルフィの手が伸びてくる。みんなの私を呼ぶ声が聞こえる。

「さらばだ。」

ポンッ

私の目の前からみんなが消えた。いや違う、みんなの前から私が消えた。


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