――――秋


芸術の秋

スポーツの秋

食欲の秋



少し肌寒い季節。私が一番大好きな季節。



私が生まれたのは秋島。紅葉が有名でとても綺麗な島。秋は一見地味に見えるけど、私は秋が一番素敵だと思う。

「○○ー、秋島ってすごいのか?」
「チョッパーはまだ知らないんだ!?」
「教えてくれ!」

秋島の海域に入ったのでやっぱり肌寒い。チョッパーを抱っこして話すことにした。

「チョッパー、葉っぱって何色?」
「緑!」
「秋になるとね、緑の葉っぱが赤や黄色になるの」
「ぇえええ!?そうなのか!?」
「そうよ」

チョッパーの驚きかたが可愛くて、ついつい笑ってしまう。

「他は?」
「あとは、色んな果物や作物が実る季節」
「食べてみたいなー」
「島に着いたら一緒に食べよう!」
「うん!」
「○○の島は綺麗だったよな」
「る…ルフィ!!」

急に現れたルフィに驚いて、チョッパーを強く抱き締めてしまった。

「ぐえっ!」
「あ、ごめんチョッパー!」
「大丈夫だ」
「チョッパー、○○はおれのだからな」

夏が戻ってきたみたいに上がる私の体温。

「わりィルフィ!お、おれ薬の調合があるから!」

そう言ってチョッパーは医務室に入った。チョッパーごめんね。

「○○ー。」
「わわっ」

ルフィに抱きしめられる。

「秋島楽しみだなー!」
「ルフィはご飯目当てでしょ?」
「でも○○に案内してもらったとこは綺麗だったぞ!」

もみじやイチョウがヒラヒラと舞い落ちる幻想的な森にルフィを案内した。そこで仲間に誘われたっけ。

「赤と黄色がキラキラしててよ、○○もキラキラしてた」
「うん、楽しかったね」
「おれ、あのときに○○に一目……惚…れ?したんだ」
「私も、あの時にはもうルフィに惚れてたのかも」
「○○ー!」
「苦しいよ、ルフィ、」
「後よ、あの茸はうまかった!」
「松茸でしょー?」

最近食べてないな。夏島や春島で買おうとすると、めちゃくちゃ高い。でもあの香りと味は高級感がある、秋らしい食べ物。

「また食いてェなー」
「高いんだからあんまり買っちゃダメだよ。他のものが買えない。」
「おう!にししっ!」
「あ、今、なんだか懐かしい匂いがした。」
「島が近ェのかな?」

ルフィは離れて、展望台に登っていった。

「寒っ…」

人肌が恋しくなり、私も展望台に向かった。

「見えた?」
「おう!見えたぞ!赤と黄色の島!」
「ナミちゃーん!島が見えたって!」
「みんなにお小遣い配るわね」

秋。柿や栗、もみじ、イチョウ、綺麗な月。数え出せばキリがない。秋はいいところがいっぱい。





「上陸だ――――!」

ルフィが私を掴んで走り出したのは、いつものことだ。

「ちょっと待ちなさい!」

ナミちゃんに肩を捕まれた私達。

「な、なに?」
「見張り番を決めてないでしょ?」

そう言って微笑んだナミちゃんはとても恐ろしかった。









「ぅわぁああん!ルフィ、」

「○○、お土産いっぱい買ってくるからな!」
「○○、明日冒険しよう!」
「○○、船を守ってね?抜け出しちゃ駄目よ」

「はい…。」

見張り番になってしまい、みんなが島に入っていく背中を見守る。秋島、すごく楽しみにしてたのに。ルフィと一緒に出掛けたかったなぁ。そんな想いを胸に、甲板に寝転んだ。

「いい風ー。」

昼間でも涼しく、過ごしやすい秋。夜は月や星がキラキラと輝く。

「眠っ…。」

見張らないといけないけど、睡魔には勝てず眠ってしまった。




「っ……。」

目を開けると、もう夕方だった。夕日が眩しく、目を細める。ふと、視界に入った麦わら帽子。

「ルフィ?」
「ん……○○、起きたのか」
「うん」

私の隣でルフィが眠っていた。

「冒険は?終わったの?」
「ぅーん、やっぱり○○がいねェとつ
まんねェ。」
「嬉しい。」
「お土産あるぞ。手出してみろ」
「?」

ルフィはポケットの中から何かを取り出す。

「どんぐり?」
「おう!かっこいいだろ?これ」
「うん!」

お土産にどんぐりをくれるなんて…ルフィ可愛い。そしてすごく嬉しい。帽子を被ったどんぐりもあって、ルフィはそれを見てあの笑顔になった。ルフィのあの笑顔が、すごく好き。

「どんぐりって食えるのか?」
「ええ?食べちゃうの?」
「腹減ったー。」
「あ、私なにも食べてない」

朝からなにも食べてないな。サンジくんのことだから秋島の特産物を買ってくるだろう。想像しただけでお腹が空く。

「くしゅんっ……寒いね」

いつの間にか夕日も沈み、夜になりかけていた。ずっと甲板にいたから、風邪ひいたかも。

「こうすれば暖かいぞ」
「ホントだ」

ルフィにぎゅーっと抱きしめられる。それがなんだかすごく心地よくて、ずっとこうしていたいと思った。

「秋っていいな」
「どうして?」
「○○とずっとくっついていられる」

こんなこと言われたら、自然に私の顔が赤くなるのがわかる。

「おれ、秋好きだな」
「私も、大好き。」



――――秋

地味だけど、心地よくて、大好きな季節。



くっつきたくなる季節







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