真夜中の船。
きらきらと光る宝石やお金を息を潜めながら袋に詰めていく。
静かな寝息を立てながら眠るナミさんから、真っ赤なルビーの指輪を盗む。
隣で寝ているロビンさんも、静かな寝息をたてていた。


「いつも、ありがとうございます」


小さな声でお礼を言って、私のトレードマークの薔薇の花を置いたら、女部屋から出た。
部屋から出て、男部屋へと向かう。この船のことは大体知っていた。
男部屋からは、大きなイビキが沢山聞こえた。


「失礼します…」


この声はきっと誰にも聞こえていないだろう。
男部屋に入ると、女部屋とは違う匂いがした。だけど海の潮の匂いは変わらない。
沢山並んでいるロッカーを一つずつ開けていく。
音をたてないようにやるのが私の仕事だ。波の打つ音しか聞こえない。


「ん、」
「っ!?」


誰かの声に、私の肩はビクンッと揺れた。
ひとまずロッカーに隠れることにした。
こういうこともよくある。別に気にすることじゃない。
一体誰が起きたのだろうか。ゾロさんなら相当厄介だ。


「んー…、メシー…」


この声はきっとルフィさんだろう。
真夜中だというのに、食べ物を求めて、キッチンへと向かって行った。
はやく退散しなければ、サンジさんまで起きてしまう。
ロッカーにあった少しのお金をまた袋に詰め込んだ。


「いつもありがとうございます」


真っ赤な薔薇を置いて、部屋から出た。
キッチンから見えないように退散しないと。
足音をたてずに、芝生で埋め尽くされた甲板を歩く。


「○○―?なにしてんだ?」


また肩が跳ね上がった。近くにルフィがいたから。
いつの間に移動したんだ。私は知らんぷりして歩き出す。


「その袋置いていけよ?ナミに怒られるぞ?」


ルフィは私の隣を歩く。私の両手にかかえられた袋を見ながら笑った。
おいおい、船長だろ。とツッコみたかったけど、声が張るのでやめた。


「んなに宝石ほしいなら、仲間になれよ。」
「それ、何回も聞いたし、何回も断ったでしょ?」


声を潜めて言った。ルフィは困った顔をする。
そんなルフィを無視して、私は小舟へと向かう。
私は海賊専門の盗賊だ。海賊になんてなるわけない。
嫌いでもないけど、好きでもない。まぁ、ルフィといれば少しだけ楽しそうだけど。


「だっておれ達、恋人同士だろ?」
「それ、関係ある?」
「、あるだろ」
「好きと仕事は別物だから」


私がそういうと、ルフィは少し顔を赤くさせた。
照れてるのか?
月の光に照らされたルフィの顔はよく見える。


「…、マジでなんなんだ…」
「は?」
「可愛すぎ」
「な、なに言ってんの」


急にため息をつくから、何事だと思ったら…、ルフィに褒め言葉をもらってしまった。
私はこんなところで照れてる暇はない。ルフィの麦わら帽子に薔薇を挿し、私は船に飛び乗った。


「○○、また来いよ?………、大好きだ」
「…ん。私も」


ああ、私の顔も赤いかもしれないな…。
船のエンジンをいれる。もうバレても追いつけないだろう。
女部屋の扉が勢いよく開かれたと同時に、私の小舟はサニー号から離れていく。


「○○――!!!またあんたねー!!!」


ナミさんの叫び声に、男部屋の扉も勢いよく開いた。
ロビンさんはナミさんの後ろで小さく笑っている。さすが悪魔の子ですわ。
私はナミさんにお礼を言ってから、手を大きく振った。


「ルフィ!○○を捕まえて!!」
「好きと仕事は別物なんだとよ。」
「なに言ってんの!?はやく腕伸ばして!!」


ルフィはただ笑って私に手を振りかえすだけだった。
今度いつ会えるかわからないけど、大好きなのは変わらない。
いつか、私も…、あの中に入れる時が来るのだろうか。
そんな想像も二度三度とした。
でも…、私は盗賊だから。
これからも、あなたたちの宝石を盗み続けます。







またどこかで会いましょう
(宝石でもなんでも持って行っていい)
(だから毎日でも来てくれ)
(お前と一緒にいたい、)
(そう言ってもお前はいつも帰るんだよな)
(でもおれはずっと待ってる)
(お前が海賊に生まれ変わるまで)













盗賊と海賊の恋。
一回書いてみたかった。
もっと甘くしたかったのに、なんだかシリアスちっくになってしまった。






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