「たまには○○からキスしろよ」

そんな言葉を耳元で呟かれたら、顔が赤くなるのは当たり前。あまりに恥ずかしいものだから、逃げ出した。でもすぐにゴムの手が伸びてきて、引き寄せられる。ほんと、せこい能力だよ。

「キスしろって。」
「恥ずかしいもん。」

ガッチリと、肩を掴まれて逃げられなくなった。ちなみに、目も離せなくなった。見つめ合うだけで、こんなに心臓がうるさくなるなんて思わなくて、戸惑う。落ち着け、静まれ私の心臓。

「じゃ、おれも恥ずかしいからキスしねェ。」

ほんとはしたいくせに。とそんなセリフは飲み込んだ。だって私もしたいんだ。けど、やっぱり恥ずかしい。しかも私からだなんて、絶対に無理だ。ルフィはぷいっとそっぽ向いてしまった。こういう可愛いところもあるんだけどなぁ、なんて言ったらなにされるかわからないから黙っておこう。

「ルフィからのキス、好きだよ。」

この言葉が、今の私の精一杯。これ以上恥ずかしいこと言えない。でも、嘘はついてない。本当のことを言ったまでだ。

「すぐそうやって誘惑しやがって。」
「ゆ、誘惑!?」
「キスしたくなるだろ。」
「じゃあ、したらいいじゃない。」

やだ!!そう言ったルフィは私の瞳を見つめてくる。お前がしろ、と、言いたいのだろう。だから私は首を横に振る。

「頑固だな。」
「ルフィこそ。」

いつもならすぐに重なる唇。今日は一度も重なっていない。寂しいんだよ、でも私からするのはやっぱり恥ずかしい。勇気がでなくて、いつもルフィを呆れさせてる。

「一瞬でいいから、頼む!」
「うーん………」
「おれのこと、好きか?」
「うん、大好き。」

ルフィはぎゅっと、目を瞑る。ああ、しなくちゃいけないのか。好きだから、大好きだからキスしたいって思うけど、羞恥心は誰にでもある。だから私はほっぺに、ちゅっとキスをした。怒られる、そう思って少し離れる。

「っ、」

怒られなかった。むしろ、嬉しそうだ。顔が赤くて、ニコニコと笑っている。そしてキスをしたほっぺに手を添えては、また笑っていた。

「そ、そこでよかったの?」

聞かずにはいられなかった。これで納得したのか、これを求めていたのか。私にはわからないけど、でも、こんなに笑顔になるなら別にいいかな。

「これも、キスだろ?」
「ま、まぁそうだけど………」

納得いかない。だから私はルフィの首に腕を絡めて、唇を強引に奪った。私だってキスしたかったんだもん。仕方ない。

「大胆。」
「うるさい。」

嬉しそうに笑うルフィをみたら、これでよかったんだ、と思った。この笑顔をみたかったんだ。




たまには、
(キスされるのっていつもと違う)
(興奮して、クラクラして)
(おれからもキスしたくなって)
(いつのまにか唇が重なってた)





修正20131130






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