この世にいる、全てのレディが好きだ。レディのためならなんでもできる。そんなおれにも、特別で愛しい人がいるんだ。触れたくて、愛したくて、でも近づけなくて。おれってこんなに弱いんだな、って実感した。

「ふぅー」

上を見上げると綺麗な青色の空。そこにタバコの煙が上がる。いつから吸ってるかは忘れた、けどこうしてる時と料理してる時がおれの幸せだ。

「サンジくーん!」
「○○ちゃん!どうしたの?」

○○ちゃんは小さくてとても可愛い。その可愛い笑顔で、おれの名前を呼ぶ。もっと呼んでほしくて、たまには聞こえないフリをしてみたりする。

「ミルクティーもらえるかな?」
「いつもみたいに甘めでいいの?」
「うん!ありがとう!!」

○○ちゃんと一緒にキッチンへと向かう。横でおれを見上げてくるその顔もたまらない。ナミさんとは違う魅力だ。

「○○―!」

そんないい雰囲気をぶち壊したのは、これでもうちの船長のルフィだ。こんなバカのくせに、恋なんてしてやがる。おれと同じ、人物。目の前の女の子だ。

「なーに?」
「釣りしようぜー!」

クソゴムから直接聞いたわけじゃねェが、見るだけで○○ちゃんに好意を寄せてることくらいわかる。それくらい、わかりやすいやつなんだ。

「ちょっと待って!サンジくんにミルクティー淹れてもらうのー!」
「サンジー!おれもー!」
「てめェは自分で淹れろ!!」
「えええ…」

ルフィはさっきの元気な表情じゃなく、心の底からガッカリしている。まぁ、どっちみち淹れてやるつもりだった。うまい、って言ってくれるのは素直に嬉しいからな。

「椅子に座って待ってろ、クソゴム」
「ありがとな!サンジ!!」

それを待ってたかのように、笑顔で返事をするルフィ。ホント、わかりやすい奴。

「○○ちゃん、アイスでいいんだよね?」
「うん!」
「おれもおれも!」
「お前には聞いてねェよ!!」

そして冷たいミルクティーを2つ淹れる。

「うめェー!」
「さすがサンジくん!美味しい!」
「○○ちゃん!可愛いー!」
「むっ……、サンジ!なんか甘いもん食いてェ!」

ルフィは一瞬ムカついたような顔をした後、いつもの笑顔でおれにデザートを要求してきた。嫉妬してるならしてるで言えばいいのにな。

「サンジくん、私も……食べたいです…」
「わかりましたー!今すぐ作るからねー!!」

○○ちゃんのために甘い甘い、ショートケーキを作る。

「出来ましたよー!!」
「わぁ!美味しそう!!」
「うめェ!」
「食うの早ェよ!!」

2人がケーキを食べて嬉しそうに笑うのを見て、ついおれも頬が緩んでしまう。洗いもんでもするか。2人から離れて洗い物を片付ける。そして○○ちゃんを眺める。あ、クリームついてる。可愛い。

「○○!クリームついてるぞ!」
「え、どこー?」
「ここ!」

クソゴムは○○ちゃんの頬に付いていたクリームを舐めとった。○○ちゃんの顔は真っ赤で、クソゴムはいつも以上の笑顔を見せた。

「な、ななな、なにしてるの!?」
「やっぱうめェなー!」
「ちょっと聞いてる?」

おれは開いた口が塞がらない。ゴムのくせに…ゴムのくせに…なんてクソ羨ましいことを…。

「付き合ってるんだし、いいじゃねェか!!」
「で、でも…」
「にしし!○○は可愛いなー!」
「もう!!!」

“付き合ってるんだし、いいじゃねぇか!!”……?って言ったか?クソゴムの野郎…。

「おいクソゴム!!!!」
「な、なんだよサンジ」

手に泡が付いたままクソゴムに近づく。

「さっきなんて言った?」
「にしし!○○は可愛いなー!」
「違ェよ!!!いや、○○ちゃんは可愛い。その前だよっ!!」
「付き合ってるんだし、いいじゃねェか!!」
「っ…、もう一回」
「付き合ってるんだし、いいじゃねェか!!」
「何回言うんじゃっ!!このクソゴムっ!!」
「痛ェ!!サンジが言えって言ったんだぞ?」
「○○ちゃん……本当なのかい?」

顔を真っ赤にして頷く○○ちゃん。おれは無意識にその場に座り込んだ。おれも好きだ。真剣に。ナミさん達とは違うトキメキ。○○ちゃんが好きだ。

「サンジくん?大丈夫?」
「そっか!サンジも「言うな!!クソゴム!!」
「…わりィ…。」

おれの瞳からは自然と涙が溢れた。本当に、心の底から好きだと思える人が、もうほかの男のものだったなんて。諦められるわけもなく、ただただ悔しい。

「サンジくんっ!?どこか痛いの?」

おれのことを心配してくれる○○ちゃんがやっぱり好きで、この気持ちは当分消えそうにねェな。

「○○ちゃんがあまりに可愛い笑顔を見せるから涙が出たよ」
「え、あ、ありがとう!」

ハニカム○○ちゃんもやっぱり可愛くて。おれは抱きしめたい衝動にかられる。なに言ってんだおれ。おれらしくねェな…。

「今日は宴にするぞ、船長」
「え、今日なんかあったか?」
「…おれが一歩進むためだ」
「?、まぁいいや!!よし宴だ――!!!」

今日くらい酒に呑まれてもいいよな?こういう気分になるのは初めてで、どうか壊れてしまえばいいと、思った。






酒にのまれて









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