今終わったーと連絡がきたのは夜の10時。出来上がった料理はとうの昔に冷めてしまい、ラップをして机の上に置いてある。

9時から始まったドラマも見終えて、撮り貯めていた映画やドラマも昼に全部見てしまった。

ルフィまだかなーと思いながらふと合わせたチャンネルが"探偵の浮気調査"という番組。私は昔からこういうドキュンメンタリーな番組が好きだったりする。

42歳の公務員の夫が最近疎遠で、夜になっても全然帰ってこないらしい。仕事は早く終わっているはずなのに、中々帰ってこなかったり会社の上司と飲みに行くことが多いという。

40歳の妻は泣いて語り、浮気ではないかと疑う。確かに帰ってこないというのは疑っても仕方がない。

そういえば、この前9時に帰ってきたことがあったけどその日は7時に終わったとルフィの勤める幼稚園の先生が言っていた。

それに最近よくウソップと飲みに行ってるらしいけど……本当にウソップ…?

私の顔が青ざめていくのがわかった。もしかしたら、浮気かもしれない。

ーーー時刻は10:19

ガチャリと玄関が開く音がする。問うべきだろうか。でも疑いたくない。


「ただいまー!」


元気なその声がリビングに近づいてくる、私はとりあえずテレビの番組を変えてソファから立ち上がり机にある料理を手に取った。

電子レンジに入れ、開いた扉に向かって おかえり と発した。


「今日のメシは!?」


キラキラと目を輝かせて聞くルフィに微笑みながらトンカツと答える。すると嬉しそうに笑った。

ルフィの一度の食事量は驚くほど多いし、大変だけど美味しいと言って笑顔で食べてくれるから頑張れる。


「○○ー明日トラ男とメシ行ってくる」


本当にローくん?と聞き返しそうになった私を殴りたい。私はわかったと頷いて温まった料理をルフィの前に出した。

そして向かい側に私も座る。


「うめェっ」


ニカッと笑うルフィの笑顔で作ってよかったと心から思った。


「今日しろくま組のローラちゃんが転んで大変だったんだ。大泣きして痛いって言うし、でも怪我はねェんだ。ロビンが手当てしようとすると泣くし。でもおれ出来ねェし……」

「ローラちゃんはルフィに構ってほしいんだよ」

「んー…ほうなのかー」


モグモグと呑気に口を動かすルフィは園児からもモテるらしい。

学生時代から付き合っている私たちだけど、ルフィがモテてモテて大変だった。

その頃からずっと私を好きって言ってくれてたけど、もうその愛も冷めちゃったんじゃない?


「○○?なんかあった?」

「……えっ」

「暗い顔してた」


どうしてこうもルフィは察しがいいんだろう。いつもは鈍感なくせに、こういう時だけ。

私は言おうか迷う。浮気してる?って聞いていいものなのか。


「今日どっか行ってたのか?」

「ううん、ドラマ見てて……」

「悲しいシーンで泣いたんだな」


悲しいシーンがあって泣き腫らしたのは本当だけど、それでいいんだろうか。でももし、ルフィが浮気していたら……私はどうしよう。

好き、大好きなのにルフィはもう私のこと好きじゃないってなったら…

泣くどころじゃ済まないだろう。


「なんだよ、思い出したのか?」

「…うん」

「泣いていいぞー。おれが抱きしめてやる」


そう言ってもうほとんど食べ終えたお皿に箸を一度置いて、私の椅子の後ろに立って後ろから抱きしめてくれた。

暖かくて我慢していた涙が落ちてしまった。ルフィの気持ちを想像しただけで涙が出るなんて、ただの想像なのに。


「…で?ホントは何があった?」


耳元で優しく囁いてくるルフィの声に胸の鼓動が早くなる。

やっぱり、ルフィは気づいてた。


「○○のことくらいすぐにわかる。何年一緒にいると思ってんだ」

「……さっきテレビで浮気調査って番組があって……」

「まさか、おれがしてるって思ったとか……」

「そうです。ごめんなさい。」


ハァアアと大きなため息が背中から伝わる。今になって疑ってしまったことを後悔した。ルフィは嘘が下手だから浮気してもすぐバレるし…。


「今失敬なこと考えたろ?」

「うっ…」

「おれが○○以外のやつと遊んでるって思われたんだなァ」

「ごめん…」

「こんなにも好きなのに。伝わってねェの?」


ドクドクと背中から伝わるはやい鼓動は正真正銘ルフィのもの。


「おれは幼稚園でも毎日○○のこと考えてんのに。」

「わ、私だってルフィが仕事に行った瞬間から頭の中ルフィでいっぱいで…早く帰って来てほしくて仕方ないもん」


普段言えないこんな恥ずかしいこともつい口走ってしまった。後々顔が熱くなるけど、もう言ってしまったから遅い。

ルフィの抱きしめる力が強くなった。


「今何してんだろ、もっと朝キスすればよかった、○○の顔みたい、もし泥棒が入ったら……ずっと考えてる」


私の顔はもう沸騰寸前で、ルフィの笑い声が背中から聞こえるけどそれどころじゃない。


「耳まで真っ赤だ」


耳元でそんなこと言われたら、ヘニャリと体から力が抜けるのもおかしくない。

耳の裏にキスされ、うなじにもキスされる。くすぐったくて、でもやめてほしくなくて、私は振り返ってルフィの唇に唇を押し付けた。


「んー…メシ残ってるけど先に○○食っても……」

「ダメ。先に食べてお風呂入ってからね。」

「えー……一緒に風呂入ろう」

「………いいよ」

「え!いつも嫌って言うのに」


いつも断るのにどうして聞くんだ、と思うけど今日はもうそういう気分だから仕方ない。

恥ずかしながら私だってご飯とかお風呂の前に食われてしまいたいと思ってしまった。


「いいから、はやく食べて」


ルフィは満足げに私から離れて椅子に座り、残りのご飯を食べて私の手を取った。

そのままお風呂に誘導され、甘い時間を過ごすんだけどその時間がたまらなく好きで、明日になってほしくないって思う。

それはルフィも同じで、また明日仕事があるから控えめにするのも辛いらしい。

「だから土曜日、ゆっくりな」


ルフィと過ごす貴重な休日。どこかに出かけるのもいいけど、ゆっくりダラダラと過ごしたい私たちはいつも土曜日は寝坊する。

ただそんな毎日がずっと続いてほしいと私は思う。






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ルフィとの結婚の話を前回書いたので、その生活も書きたくなってしまった

繋がってはいませんが、ルフィと結婚したらこんな感じだと思います


2015/10/20






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