大きな街に出た。人が行き交い沢山の声が聞こえ、見失わないように歩く。先頭を歩く黄色の麦わら帽子を全員が追いかけた。 比較的大きな島で、上陸して3日が経つ。ログが溜まるのに2週間もかかるらしいので、とりあえず島を点々と移動していた。 昨日の朝から歩き始め、やっと新しい街に着いたところだ。ここではぐれないように1番の問題児ルフィから目を離さず、ゾロはロビンによって監視されている。 この街で一泊することになった。 安めのホテルで2部屋借りて、女と男に別れる。荷物を置いてホテルの前に集合すると早速ルフィが消えていた。 「あの、バカ」 「おれが目を離した隙に…悪いナミさん」 「もう仕方ないわ。この街からは出ないように釘を刺しておいたし…」 その釘がルフィにどれくらい刺さっているのか… とりあえずそれぞれ行きたいところを言い合って、意見が合う人と街に繰り出した。 私はウソップと雑貨屋さん巡り。 ちゃんと女の子専門の雑貨屋さんにも寄ってくれて、ウソップは意外にも紳士だと思う。 入るときは恥ずかしそうにしていたけど、入ったらもう吹っ切れたのか一緒になって選んでくれる。 ウソップは何か発明に使えそうなものを、私は可愛い置物やアクセサリーを購入してカフェに入った。 「まだ街は静かだし、ルフィが騒ぎを起こしてねェってことだな」 「んー……もうそろそろじゃない?」 「あーやだやだ」 ウソップのケーキを一口貰いつつ、店内から窓の外を見た。気持ちの良いくらい晴れていて、これから騒ぎが起きるようには見えない。 でもルフィは必ずトラブルを抱えて戻ってくる。そのトラブルが大きいか小さいかは別にして、必ずだ。 「美味いなこのケーキ」 「今度サンジに作ってもらおうよ」 「○○から言ってくれよ?」 「任せて!」 ウソップと微笑み合い、ケーキを完食して店から出た。もう一つ雑貨屋さんを寄ってブラブラしていると、オレンジの髪の美人を見つけた。その後ろには黒髪の美人もいる。 その二人の美人を見つめてトロンとしている男性もちらほら。 そんな二人に話しかけていく私とウソップは他人から見ると異様な二人なのかもしれない。 「ウソップ、これ持って」 沢山の荷物の中はきっと服や小物なんだろう。それを渡されたウソップは明らかに嫌な顔をするがナミは見ていない。 「○○、気に入った物は買えた?」 「うん!美味しいケーキも食べたし大満足」 「いつもならこんな満足感は最後まで続かないんだけど……珍しいわね」 一向に騒ぎが起きない様子をロビンも不思議に思っていたみたいだ。 いつもなら長時間楽しい時は続かない。 「まさかあいつこの街から出たとか言わないでしょうね…」 「ま、まさか…そんな……」 ナミの言葉にウソップの顔は真っ青になる。この街から出てしまったら、大きな島から自由奔放なルフィを探さなければならない。 「一度荷物を置いてルフィを探しましょうか」 ロビンの提案に私たちは大きく頷いた。 早足でホテルに戻ると、入ってすぐのロビーにはサンジとブルックがいた。サンジはタバコを吸いブルックは綺麗な女の人を眺めていた。もちろん、サンジも吸いながらチラチラと盗み見ている。 「あっ、ナミさん…ルフィは…」 「ホテルに戻ってきてないわよね…」 「ああ。あいつが居なくなってこんなに平穏な1日あるわけねェ。」 こんなにも信用がない船長いるだろうか。でもこれが麦わらの一味では日常なんだ。 私とウソップとナミとロビンは部屋に戻り荷物を置いてまたロビーに戻ってくる。 荷物を置いてきた間にチョッパーとフランキーとゾロも戻ってきていた。ルフィ以外全員集合だ。 「じゃあ手分けしてルフィを探しましょう。5時にまたここで」 私はウソップと街の南の方を目指した。ルフィなら何となく、こっちに行く気がしたから。 さっき私たちが雑貨屋さん巡りをした東の方とは違い、南の方が栄えていて人が多い。 ウソップを見失わないように歩いていたけど、少しよそ見をした瞬間に見当たらなくなってしまった。 ルフィを探しているのに私もいなくなれば元も子もない。 でも5時にホテルに戻りさえすれば良い話だ。私は迷わずルフィを探した。 さっきよそ見をしたというのも、ルフィに似た人を見つけたからでよく見ると全然違う人だった。 行き交う人を避け、ルフィを探すがいない。空もオレンジ色になってきて、5時まであと1時間しかない。誰か他の人が見つけたもしれないけど、見つけてないかもしれない。 ふと立ち止まって、辺りを見回すと黄色い麦わら帽子に赤色のベストを着た人を見つけた。 私は迷わず近づき、手を掴んだ。 「ルフィっ、」 違う人だとは思わなかった。 案の定振り返ったのはルフィで、突然現れた私に驚いている。トラブルにも巻き込まれず、何をしていたんだろう。 「もうっ、みんな探してるんだから。夜になるよ」 「え!もうそんな時間なのか」 「何して………」 ルフィの顔から目をそらし、彼が見ていた方向を見ると白いウエディングドレスが飾られている店があった。 「○○がこれ着たら似合うだろうなァって。」 「ずっと見てたの?」 「最初はいい匂いがする方に歩いてたんだ。じゃあ見つけた。」 このドレスの意味をルフィはわかってるのだろうか。ルフィがいなくなった昼から私たちが買い物を楽しんでいた時間も、ずっとこのドレスを眺めていたんだろうか。 「ルフィは、このドレスが何なのか…わかってる?」 私の問いにルフィはキョトンとした。 「失敬だな、○○……それくらいわかる」 「ええっ!?」 わかったらわかったで驚いてしまい、またルフィに失敬だと怒られる。"結婚"という意味がわかって言ってるんだろう。 「おれ達の今の関係だって、○○はわかってないと思ってるだろ?おれはちゃんと○○が好きだ。」 私が好きといえば、ルフィから同じ言葉が返ってきていた。キスはするけど、ルフィは私のこと恋愛的な意味で好きじゃないと思ってた。 勝手に私が浮かれて、恋人気分に浸ったいるんだとばかり…。 「やっぱり……わかってなかったのか」 「うっ……ごめん。」 いつも肉だ冒険だと言っているルフィがまさかわかるなんて思わないじゃない。 それはルフィ以外のクルー全員が思っていたことで、私はいつも可哀想と思われていたのかもしれない。 「おれは○○にこれを着てほしい」 「…………っ!?」 こ、これは……つまりそういう事なんだろうか。 えっ、まさか。信じられない。 息をするのも忘れ、ルフィを見つめていたから咽せた。 「○○と結婚したい。」 「結婚って…私たち海賊だよ…?」 ルフィは自由に生きたいんじゃなかったの。夫婦なんて肩書き、邪魔なんじゃ……… 「○○をおれのもんにしてェんだよ」 スゥッと頬に水滴が流れた。涙が溢れて止まらなくなり、私はルフィに抱きつく。 「私はもう…ルフィのものなのに……嬉しい」 「結婚したら、もう○○はおれだけのもんだ。」 「ルフィっ、」 優しく抱きしめ返されて涙は止まらない。プロポーズなんて生まれて初めてされたし、もうされることもないけど…こんなに幸せだなんて思わなかった。 思う存分泣いて、ドレスを眺めて気がつくともう5時になろうとしていた。 早く帰らないとみんな探してるし、怒られてしまう。そのことをルフィに伝えると、いつもはしない恋人繋ぎをして歩き始める。 「いつも、手繋ぐと○○を振り回しそうで怖くて、繋げなかった。けど悪い、離したくねェ。」 「振り回されてもいいよ。私はルフィと一緒にいたいもん」 また涙が出そうになったけど無理矢理止めて、ルフィと微笑み合う。 手は繋がった状態でホテルに戻ると、あんなにルフィを探して回って怒っていたみんなが笑顔になった。 「おれたち結婚することになった!」 「「え〜〜〜〜!?」」 クルー達の驚く声がオレンジの空に響く。 ルフィに振り回されてばかりだけど、しっかりみんなはルフィに付いていく。 それがルフィのすごい事だと思う。ししっと笑うルフィの笑顔が今日が一番輝いて見えた。 ーーーーーーーー お久しぶりです。 やっぱりルフィの笑顔が大好きです。 2015/10/16 戻る ×
|