私がバスケを始めたキッカケは、もう覚えてない。だけど、確か親に関係してたと思う。そんなことはもういいんだけど。でも今はバスケをやめた。それは怪我をしたからって理由もあるけど、キセキの世代のみんなを見てたらやる気なんてどっかいった。 「○○さん?また浮かない顔してますよ。」 「ねぇ、黒子。フルーツオレって美味しいよね。」 「そんなこと考えてたんですか。」 「なに?心配してくれた?」 隣にいた黒子は私を無視してどこかに行ってしまった。相変わらず冷たいな。まぁ、そこが黒子らしいんだけど。 バスケをしたいかって聞かれればもちろんしたい。コートの端から端まで走り回って、気持ちよくシュートをきめたい。ボールがリングに入ったあの瞬間が、楽しくてたまらない。 ―――――またいつかバスケやりましょう。 そんなことを言った中学時代の黒子を思い出す。あれは元気づける言葉だったのか、それともその場しのぎの言葉か、あるいは本当に私を心配してか。色々考えてみたけど、あの黒子の頭の中のことなんて私にはわからない。 ズズッとフルーツオレを飲み干してゴミ箱に投げた。ナイスシュート、私。 + 帰り道。いつも目にする公園のバスケットコートがいつもと違う様子だった。高校生のやつらが中学生の子たちとバスケをしてるんだけど、どうもいじめてるようにしか見えない。バスケをこういうことに使うなんて、許せなかった。気が付けば私の足は勝手に動いてた。 「ちょっと、そういうことやめてくれないかな。」 「はぁ、なんだよお前。女はすっこんでろよ。」 「それは聞き捨てらないね。女だからってなめないでほしい。」 高校生の男からボールを奪う。久しぶりのボールの感触に背中がゾクゾクする。この感触、やっぱり大好きだ。 「バスケの勝負でもしてェのか、女。」 「別にそうじゃないけど。バスケを使って弱い者いじめをするなって言いたいの。」 このまま走って、シュートしたいけど怖い。怪我をしてからトラウマになっている私は、ドリブルをするだけでこの場からは動けないでいた。 「じゃあシュートしてみろよ。おれ達結構うまいんだぜ。」 「お前の実力、みてやるよ。」 「そんなこと、頼んでないし。」 「逃げんのか?」 どどどど、どうしよう。今になって焦ってる私。見て見ぬふりをしとけばよかったんだ。中学生たちはもういないし。 「へぇ、口だけか。」 「そ、そんなこと……。」 動け!動け!私の足!!!そう心の中で叫んでも、無駄。足は固まって全然動こうとしない。すると私の手からボールが消えた。私も、男たちも慌てて辺りを見回す。 「ここです。」 急に現れた黒子に驚いて、私の足は動いた。助けに来てくれたのか。 「本当、○○さんは無茶ばっかりです。」 「黒子っ!」 「なんだ、次はお前があいてか?」 「○○さんはボクが守ります。」 そんな黒子のセリフにきゅんときた私の恋はここから始まった。 ヒーローはやってきて、それで (負けたね、黒子)(わかってました、結果くらい)(でも、ありがとう。助かったよ)(無茶しないで下さい)(うん) ――――――――――――――――――― いちごオレにしようか最後まで迷った。 どうでもいいですね。 20130728 戻る ×
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