「キャラ変したいの?」
「その質問五度目ね。。」
何度も同じ質問をしてくるこれでも神獣の白澤さん。私の口からこのような言葉が出たことが疑わしいのだと言う。
「姉さんの様な、ほんわかとした雰囲気の女性になりたいの。」
「名前ちゃんはどちらかと言うと大人びてるからね。」
「女性に詳しい貴方ならお答え出来るのでは、と。」
うーんと悩むふりをしているのか本当に悩んでいるのか。
「でもどうして、お姉さんみたいになりたいの?」
それは、と声を漏らしてから口を噤む。まさか鬼灯さんに気にかけてほしいなんてそんな事白澤さんには言えない。どうしたものか。
「…………プ、プライベートよ。」
「ごめんね、女の子には色々あるもんね。」
気を使われたのか、それともただの天然な優しさなのか。そんな事より今はキャラ変更についてだ。
「そのままでいいと思うけど?」
「はい?」
「そのままの名前ちゃんが好きだからさ。」
「そうやって沢山の女性の心を弄んできたのね。」
「こんな事言うのは名前ちゃんだけだよ。」
何とも嘘臭い台詞だ。この人に相談したのが馬鹿だったのだ。側にいた桃太郎さんに今度は聞いてみる。
「貴方キャラ変したわよね?1話での悪役キャラから今のツッコミ役に。」
「痛いとこついてくるこの人!!」
やはりツッコミがうまい。どうやってキャラを変更してきたのか、聞こうとしたら店の扉が開いた。もうお迎えが来たようだ。
「早かったね、鬼灯さん。」
「天国視察なんてもの、要らないと思ったのですが、ねっ!!」
相変わらず会った瞬間に、金棒を白澤さんへと投げつける鬼灯さんは流石だと思う。いいキャラをしていらっしゃる。
「仕方なく10分だけと言いましたが、何かされませんでした?」
「ええ、大丈夫よ。」
「会ってすぐ投げるのやめろ!」
「帰りましょう、名前さん。」
「無視か!!」
白澤さんと桃太郎さんにお礼を述べる。参考にはなっていないが、相談には一応乗ってもらったから。
「では、また伺うから。良い解決策をお願いしますね。」
そう言い残して私と鬼灯さんは極楽満月を後にした。
「解決策とは、何の話ですか」
「鬼灯さんには内緒。」
「私には言えなくて、白豚さんには言える事ですか。」
妬くなんて珍しい、と冗談のつもりで言ったのに鬼灯さんは大きく頷いた。
「嫉妬したくもなりますね。」
「ご冗談を。」
熱い顔をバレないように、顔を伏せて笑う。そんな冗談だけでも嬉しい私がいた。ここで姉さんならどう答えていただろうか、考えるだけ無駄なので頭の中に浮かぶ彼女の微笑んだ顔を消した。