あ。


という声が重なった。放課後、凛とコンビニに寄っていたら偶然会ってしまった。テスト週間だから鮫柄も岩鳶も部活が無いんだ。

「あだ名ちゃん!凛ちゃん!」

渚が私達に手を振っている。遙は真顔だけど、どこか嬉しそうだ。凛の事大好きだもんね。ゆっくりと近付いてきたかと思えば、コウちゃんに抱き締められた。

「あだ名ちゃんー」
「コウちゃん、苦しいよ!」
「コウって呼んでくれるのあだ名ちゃんくらいだよー!」
「江もいいと思うけど。」
「やめてー!」

女同士で楽しんでいたら、凛に無理矢理剥がされた。文句を言っても無視だから渋々黙る。遙、元気そうでよかった。どうせ毎日水に触れてるんだよ。いつか風邪引くと思うけど。

「名前、元気にしてたか。」
「ぷっ!なにそれ!遙おかしいよ、たったの二週間会ってないだけなのにー。」

私も元気そうで良かったとか考えてたくせに、こんな可愛げの無い事しか言えない。素直になれたらいいんだけど。

「もっと長く感じた。」
「そ、そうかな?」

遙は天然なのか、わざとなのか。乙女心をわし掴む台詞ばかり言ってくる。長く感じたって事は会いたかったのかな?なんて勘違いしちゃうよ、バカな女は。私だけど。

「名前、半分いるんだろ。」

凛がそう言って、パピコを半分にして渡してくれたからお礼を言って受け取る。夏はやっぱりパピコだよ、パピコ。すると渚が羨ましそうに見てくるから、食べかけを差し出してやった。

「「おい。」」

低い声が重なって聞こえて、いつの間にか私のパピコは凛と遙が持っていた。何してるんだろう、パピコ食べたかったとか?それとも、私と関節チューしたかったとか?

「もー、照れるなぁ。」
「何想像してんだよ。」
「いたっ!!」

凛に頭をバシッと叩かれて、痛みが広がる。いつも本気で叩いてくるから痛いんだよ。バカ。

あ、何だか懐かしい。私と凛と遙で話して、渚が拗ねて真琴が笑う、そんな日常だったな。コウちゃんと怜ちゃんも笑ってる。

「へへっ、楽しいね!」

笑顔を向けると、怒っていた凛も笑顔になって、遙以外が笑顔を浮かべた。遙もどこか楽しそうで、私はもっと嬉しくなる。

きっと遙は私の告白の事なんて忘れてしまっただろう。でもそれでいい、いつもの私達に戻れるのなら、それで。

「名前、帰るぞ。」
「あ、うん。」
「凛ちゃん!あだ名ちゃん!バイバーイ!」
「またね。」
「またねー!」
「………名前。」

皆が別れの挨拶をする中、遙が私の名前を呼んだ。振り返れば、ゆっくりと近付いてきて、遙の顔が目の前に。

「今度、プール行こう。」

私だけに聞こえる小さな声で遙が言った。つまり、私達二人だけってことなのかな。カァッと熱くなる顔を、大きく縦に振った。遙とプール行きたい。

「ハル、何言ったんだよ。」
「………別に。」
「帰るぞ、名前!」

ぐいっと手を引かれて引きずられていく。いつもなら怒るけど、今日は幸せだから大人しく引きずられてやるか。



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