「ネクタイ結んであげるー」
「ん………ぐえっ」

ネクタイを渡したオレが馬鹿だった。案の定強く締め付けられたオレの首は空気を少ししか通さない。

「くるしっ……緩めろ」
「あっ、ごめん!」

不器用で、馬鹿なこいつは何の反省もせずただ笑顔をオレに向けた。名前からネクタイを奪い取り、自分で結ぶ。
執事になったからには、きちんと身だしなみも整える様に心がけてるつもりだ。

「緩めて!」
「は?」
「ネクタイ緩める姿が好きなの!この前アルミンがね教室でやってたの!」

先日まで、まだ夏だったからか真面目なアルミンのそんな姿を見るのは珍しい。
アルミンの事を語り出した名前に少しムッときて、ネクタイを緩めてみる。

「キャーッ!エレンかっこいい!エロいー!!」
「うるせっ、鼓膜が破れるだろ」
「最高だね、男の子はみんなネクタイするべきだよ」
「別にみんなする必要はねぇだろ」
「えー、みんなかっこいいのに」
「誰もお前になんて見せねぇよ」

他の男なんて見てねぇで、オレを見ろよ。って言おうとして思い止まって良かった。こんなこと言ったら絶対名前は調子に乗る。緩んだ頬をオレに見せてくるはずだ。

「ひどーい!冷酷!冷徹!!」
「はいはい、言ってろ」
「もうっ!」
「今日はホットケーキでいいんだよな」
「うん!メイプルシロップいっぱいかけてね!」

現金なやつ。名前の機嫌をとるのは簡単だ。誰でもできる。やる必要ねぇし、やらせねぇけど。



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