※歴史は適当です。この時代になにがあったとか色々無視します。言葉も。






世は平安時代、高い身分であり百姓が一生着ることが出来ないような着物を着て毎日を過ごしてした。詩を詠み、働く事などしない。優雅な暮らしだった。けれど足りない、リヴァイがいない。
今度は生まれた時から覚えていた、けれど少し思い出せない記憶もあった。時が経つにつれて忘れていくのかと思えば怖くなった。彼は私のことを覚えているのだろうか。もう一度愛してくれるのだろうか。

「私はずっと、愛しています。」
「新しい詩の一部かなにか?」
「いえ……特に……」
「まさか、誰か気になる人でも?」
「そんな人いませんよ、姉様。」

姉様は沢山のお相手がいる。それも私達の血を絶やさない為だ。私も成人すれば沢山跡継ぎを産まなければならない。リヴァイに会わなくてよかったのかも。

「いない方がいいわね、辛いだけよ。」
「姉さんにもそういう人が?」
「ええ、けれどもうその方はいないわ。」
「え……?」
「消されたのよ、お父様に。」

駆け落ちしようとしたら姉さんの想い人は殺されたらしい。お母様が男を産まなかったから焦っているのだろう。どの時代でも人間は残酷だ、巨人の方がマシだったかもしれない。

「私はもう行くわね、また貴方の素晴らしい詩を聞かせてね。」
「はい。」

姉さんはまた汚れにいくのだ。もっと平和な世の中になってほしかった。巨人という脅威がいないのだから。

「リヴァイ………」

この時代に産まれて初めて口に出してみた。余計に会いたくなってしまって、辛い。この時代に生きているのかわからないのに。

「名前様。」
「開けていいわよ。」
「失礼します。」
「なに?」
「旦那様がお呼びです。」
「すぐ行く。」

どこかで見たことあるその家来は、黒髪で美人だった。

「貴方、新人?」
「はい、美伽と申します。」
「み……か……」

思い出せない、きっと前世で会っているのだろう。美伽も覚えていないみたいだし、ここは触れない方がいい。
すぐにお父様のいる部屋に向かえば、お母様もいた。

「赤子ができた。」
「おめでとうございます、お母様。」
「ええ、ありがとう。男なら貴方には苦労かけずに済むのだけれど。」
「いい加減、男を産めないのか。」

厳しい父だなと思う。子供の性別なんて親は決められないというのに。

「1年後にはお前も立派な大人、やることはわかっているな」
「はい、お父様。」

ごめんね、リヴァイ。私は貴方とは違う人と関係を持たなければならないらしい。胸が苦しく、そして痛い。




***






私が成人したその日、オギャー!そう泣き叫ぶのはお母様から生まれた赤子だった。急いで姉さんとお母様の元へ走る。どうか、男の子でありますように。

「お母様!」

部屋に入って布で包まれた赤子を抱きしめるお母様に微笑んだ。無事に生まれたみたいだ。近くにいたお父様の顔を見ると嬉しそうだ、ということは男の子だったのだろうか。

「男の子よ。」

抱えられた男の子の顔を覗き込んで衝撃を受けた。生まれたばかりでもわかる、顔が幼いリヴァイだからだ。この子はリヴァイなのだと確信した。私が何百年も愛した人なんだから、生まれたばかりでもわかる。

「おめでとうございます、お母様。」
「ええ、ありがとう。どうかした?名前」
「………どうして……」

あまりにも迎えに来るのが遅いではないか………。成人したばかりの私と生まれたばかりのリヴァイとじゃ年の差があり過ぎる、それに私達は姉弟だ。もしかすればリヴァイは助けてくれたのかもしれない。知らない男性と関係を持たなければならない私を。

「そんなに男が生まれたのが嬉しかったか」
「……お父様……そうみたいですね。」

溢れる涙を見られて勘違いされたが、好都合。私はリヴァイを抱きしめて、父さんを見つめた。

「私、お嫁に行きます。」

先日から婚約の話があった。この家系を救う為の所詮政略結婚である。それはリヴァイに見つからないように、成長していくリヴァイと年をとっていく私が出会わないため。

「こいつが生まれたから別に嫁になんぞいかなくても……」
「いえ、いきます。よりこの子が楽になるでしょう。」

リヴァイが立派にこの家を継げるように私は、何でもしよう。またどこかで出会う事を信じて私は、去りましょう。

「またね……」

泣き止んだ赤子の額にキスを落とし、部屋から出ていく。怒るかなぁ…なんて思いながらまた出会う事を楽しみに、私はお嫁に行く準備を進めた。




***





「貴方ももうすぐ成人ね?」
「ああ。」
「私は老いてしまったわ。」

両親が亡くなった今となっては俺と姉とその家族と家来達と共に暮らしていた。姉はもう50歳になる。そんな日、姉の部屋に呼び出されたかと思えば、深刻な顔である絵を見せて来た。墨で描かれたそれは記憶の奥にいる女にどことなく似ている。その女は物心ついた頃から記憶にあった、出会った事もないが町に出たときは意識して探すようになっていた。そいつの絵が目の前に出てきて、少しばかり驚いた。

「私の妹。」
「俺のもう一人の姉って事か。」
「そう………貴方が生まれた日に出て行ったの。」

今まで生きてきて会った事もない姉がいるとは思わなかったが、なぜか引っかかっていた。この絵から目をそらす事が出来ずにいる。俺はこいつと会った事があると確信があった。

「生まれたばかりの貴方を見て、泣いていたわ。」
「泣いていた?」
「理由はわからない。ああ、そういえば……“りばい”とよく呟きながら泣いていたわ。」
「……りば…?」

その時、スゥッと何かが頭の中に流れてくる感覚があった。映像がまるで頭の中で再生されているかのようだった。“リヴァイ”かつての俺の名前……そして姉は俺が愛した女だ。今まで忘れていた自分を名前は許してくれるか。

「名前は今…どこにいる。」
「やっぱり……貴方たちには何かあるのね。」
「ああ、どこにいる。逢いに行くと約束した。」
「名前は……もう……」

“亡くなったわ”という言葉に耳を疑う。俺より先に逝くとは、生意気になったもんだな。そう皮肉を言葉にしたとしても“ごめんなさい”と照れたように笑う名前はいない。舌打ちすれば姉は泣きそうな顔で俺を見る。

「次会った時覚えてろよ。」

何歳離れてようが、お前が家族だろうが、俺は名前をずっと愛すと巨人を削いでいたあの時代から誓ってる。“ずっと一緒にいよう”そう言って笑うお前の顔が頭から離れない。たった一人で俺をこの世界に残しやがって。自然に出た舌打ちにイラついているのがわかる。さっさと生まれ変わって、今度は力いっぱい抱きしめてやろう。

「その絵は貰ってもいいか。」
「ええ。」

姉の嬉しそうに笑う顔は少しばかり名前に似ている気がした。そういえば調査兵団にいた時に名前の家族の話を聞いた事がある。姉が一人いたらしいが、目の前の女がかつての名前の姉だとすれば偶然とは思えねぇ。

「神の悪戯かしら。」
「さぁな。」

神がいるかは知らねぇが、次も名前に会わせろ。絵の中の名前は嬉しそうに笑っていた。すぐいくから、待ってろ。



戻る
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -