麦わらの一味が上陸したのはワノ国に似た雰囲気の島だった。
その島では、王がすべてを支配していた。
“お内裏様”と呼ばれるその王と、それに仕えるのは沢山の美人な女達。
その女達は“お雛様”と呼ばれた。
「わー!桜だー!」
冬島で育ったチョッパーは、桜が大好きだった。島では満開の桜が咲いていた。
「花見しようぜ!花見!!」
「ちょっと待ちなさい!ルフィ!」
騒ぐルフィに、ナミが怒るのはいつもの光景だ。船番のフランキーとブルック以外がこの島に上陸していた。○○は初めてみる桜に、感動している。
「ナミちゃん!私もお花見したい!」
「○○まで!?」
「だよなー!したいよなー!」
○○とルフィは見つめ合い、笑った。このふたりはクルー全員が公認する、バカップルだった。あのサンジまでもが、あまりのラブラブさに○○を諦めてしまうほどだった。それくらいふたりは愛し合っている。
「ナミさん!美味しい料理とお酒を用意しますよ」
「お花見、いいわね」
「酒があるなら」
「花見♪花見♪」
サンジの言葉に、みんな乗り気になった。ナミは小さくため息をつくと、諦めたのか笑顔でいいわよと言った。そのナミの言葉に、みんなは飛んで喜んだ。
「ブルックとフランキーも呼んでこよう。安全そうな島だしな」
「あ、あれ!うまそー!!○○、行くぞ!!」
「えっ…ル、ルフィ!」
「こらー!!待ちなさい!!」
ゾロとウソップはブルックとフランキーを呼びに、サニー号へと戻った。ルフィは○○の手を掴むと、無理矢理近くの団子屋へと入って行った。そんなルフィをみて、ナミは大きなため息をついた。
「そういえば、ここは女性が少ないのね」
ロビンの言葉に、ナミとチョッパーとサンジは辺りを見回した。サンジの好きな、若い女性はいない。お婆ちゃんと小さな子供達だけだった。
「ホント……、若い女性がいないのね」
その時は、あまり気にもとめていなかったナミ達は、少し町を歩くことにした。花見の場所は、一番大きな桜の木だと決めていたので、ゾロ以外迷うことはない。
「あ、これ可愛い」
この島に入ってずっとナミが気になっていたのが、着物だった。自分たちが浮いてみえてしまうくらい、すれ違う人々は着物をきていた。
「みんなの分、買いましょう」
「そうね、きゃー!可愛い!」
ナミは店員を説得し、値引きしてもらっている。あまりの迫力に、チョッパーは脅えていた。そんなチョッパーをロビンは小さく笑ってみていた。
「ナミさん、ロビンちゃん!!素敵だー!!」
着物に着替え、髪を整えたふたりはあまりにも綺麗で、輝いていた。チョッパーとサンジも着物に着替えた。
「さ、あのバカップルを探しに行きましょう」
「ふふ、そうね」
カランカラン、と下駄の音を響かせて、ナミ達は歩き始めた。
+
「ふー、食った食った」
「美味しかったねー、団子」
団子をたらふく食べたルフィのお腹は、風船のように膨らんでいた。そんなルフィを、○○は小さな笑みを浮かべて見つめていた。
「ナミ達、どこ行ったんだ」
「探しに行く?」
「そうだな、探しに行くか」
ルフィはすっと○○の手を優しく握り、歩き出した。そんな無意識な行動でも、○○にとっては重要なことで、顔を少し赤く染めた。
「あ、ナミ達だ!」
「ホントだ!!すごい綺麗!!」
向こうの方から歩いてくるのは、綺麗な着物に身を包んだナミ達だった。
「ルフィ、あんたまた勝手に行動して」
「わりィ、それよりそれなんだ?」
ルフィは着物を指差した。
「この島では、これが普通みたいね」
「○○達の分も買ったから、着てね」
「わー!ありがとう!!」
○○とルフィは着物を受け取ると、ナミやロビンに着付けをしてもらい○○は髪も整えてもらった。淡い水色の生地の着物に、黄色い帯をつけていた。シンプルな着物だが、頭についた水色の花の髪飾りがアクセントになっており、美しい。
そんな○○をみて、ルフィは固まった。あまりにも綺麗で、いつもは可愛いと思うのに、今日は“綺麗”だと思った。
「ど、どうかな……?」
○○が上目使いで聞くと、ルフィの息を呑む声が聞こえた。
「すっげェ、綺麗だ」
「あ、ありがとう」
○○の顔は真っ赤に染まった。本当にその姿は綺麗で、すれ違う男性がみな振り返るほどだった。
「予想以上ね、本当に綺麗だわ」
「船長さんも、大変ね」
ナミとロビンがそんな会話をしていたことは、○○とルフィはしらない。花見をするため、6人は一番大きな桜の木へと向かった。
+
楽しい花見の宴が始まった。酒を飲み、肉を食い、笑い声が絶えることはない。着物に身を包んだ麦わらの一味は、いつもの海賊の一味にはみえない。
「もっと酒だ!酒!」
「さーくーらー♪さーくーらー♪」
「いいぞー!もっと歌え!ブルック!」
○○は笑顔でお酒を飲みながらみていた。みんなで騒ぐ、宴が○○は大好きだった。そんなとき、一味のところに声が聞こえた。
「お内裏様がいらっしゃるぞ!!」
「はやく!!隠れろ!!」
そんな声が聞こえたかと思うと、賑やかだった町から、人が消えた。みな、家の中へと身を潜めたのだった。その光景に、訳が分からず、一味は首を捻る。
「なにが…、起きるんだ…?」
「人が…、いなくなった」
砂の道の先に、大行列がみえた。その行列は少しずつ、こちらに近づいてきていた。
「おだいりさま、と言っていたわね」
「お、だいり…?」
「よくわからないけど、きっといい人ではないわ」
もしかしたら戦闘になるかもしれないと、ゾロは器に入っていたお酒を一気にお腹の中へと流し込んだ。
ルフィは黙ったまま、その行列がくるのを待つ。
「に、逃げた方がいいんじゃねェか…?」
「それはスーパー怪しくみえる」
「そ、そうか……」
向こうからも一味は見えている。今逃げ出せば、怪しまれて追いかけられる。行列は一味の前に到着した。
「お主ら、何者だ!!」
大きな箱、輿(こし)の前には沢山の家来のような男達がいた。家来たちは剣をルフィ達に向ける。
「た、旅をしている者です。この島に寄ったので、ログを溜めさせていただいてます」
ルフィが正直に言わないうちに、ナミが嘘をついた。家来たちは輿の中にいる、人に話しかける。すると輿が開いて、中から人がでてきた。○○はこの時、すこし胸騒ぎがしたことを覚えている。
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