幸せな時間がなくなる恐怖
  






こんなに早く、来るなんて思いもしなかった
もう少しだけ、待ってて欲しかった




高校入学前の出来ごとで、一人暮らしするのに全く用意してなかったから
慌てて買い出しに行ったあの日。
デパート一角で凄い人だかりを見つけた。
人だかりの真ん中には、背の高い、金髪の男の子が一人。
凄いかっこいい感じの男の子だったから、女の子がほっとかなかったんだろう
黄色い声が響き渡ってた。

私はとりあえずこの場を離れようとした時に、真ん中にいる彼と目が合った。
それは『助けて』と言っているかのように

それからは無我夢中で、人をかき分け、彼の手を取り走り出していた。
あの状況から抜け出せたなと、運が良かったとしか思えなかった。


息を切らせながら走り着いたのは地下駐車場。
走りながら、彼が下に行って!と、

『黄瀬君!!無事だった!!?』


車の陰から、一人の男性がこちらに向かってきた。どうやら彼の知り合いらしい。
男性は私を見て軽く頭を下げ、彼を車に案内して行った。
車に向かう途中彼は何度もこちらを振り返り、何か言いたそうにしていたけど、
男性がそれを許さなかった。無理やり車に乗せ、車を走らせた。


その場に立ちつくした私。
よくよく考えれば、有名人だったのかも……そうしたら、男性の取った行動も納得がいくし、
彼が囲まれてた事も分かる。

そう、納得してその場を後にした。





「まさか、モデルさんだったとは思わなくて…元々そう言うのに疎いの…」



苦笑いをこぼし、黄瀬君に謝る。
ホントにこの状況になるまで、分からなかった。ちょっと引っかかってた所はあるんだけど。


「いいんッス!……けど、あの時ちゃんとお礼言えなくて…ホントごめんッス」
「イイの。あの状況で言えって方が無理な話だよ。それに私もすぐに思い出せばよかったんだけど」


「わざわざ、会いにきてくれたのが嬉しいよ」


たった一瞬の出来事で、ここまで来てくれたのが嬉しかった。


「事情は分かりました。黄瀬君、よく水稀さんの学校が分かりましたね」
「それは、会った時に持ってた封筒に書いてたんッスよ。学校案内?みたいなの」
「あぁ、そう言えば持ってた。よく見たね」
「はいッス」
「けど、こないだ練習試合の時に黒子に聞けば良かったじゃねぇか」
「……あの状況で聞けないッスよ。火神っちに喧嘩売られるし」
「売ってねぇ!むしろお前だろっ!!」


あ、また始まった。……楽しそうだからイイか。

「黄瀬君って律義な人だね」
「…そうですね。昔からそうですね。彼のイイところです」
「分かる気がする」





ズキン……


え……


ズキン…ズキン……



嘘でしょ…こんな時に、来ないで、お願い……今はまだ、知られたくないの…!!




少しづつ痛み始めた、胸元を見つからない様に、押さえた。
ばれないように、ココで別れたら、まだ知られない。
このまま病院に行けば大丈夫。



「そう言えば水稀さん、気になったんッスけど……」
「え……?っ……!!」


黄瀬君の顔を見上げようと、上を向いた。
胸に急激に痛みが走った。
今までとは違う痛みで、思わず口に出してしまった。


「いたっ……」



それが、最後。
そのまま、気が遠くなった。
黒子君と、火神君、黄瀬君の声が遠くで聞こえてる。

起きなきゃ、目を開けなきゃ……



けど、ごめんね……
なんだか、無理っぽいの…








次会えるのは…どこ…?




(水稀さん!!しっかりしてください!!)
(水稀!!!おい!!)
(……水稀さん…起きて!!)








なんでこんな展開にした…









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