行為を終えた後のベッドの上。私は水を飲みながらタオルで汗を拭った。


「…亮?」


亮がそそくさと服を着て私が飲んでいた水を手から取って、同じように飲み干した。

亮はいつも終わった後は後戯を大事にしてくれていた。腕枕をしてくれて、私が寝るまで髪を撫でてくれていたのに。


「親、もうすぐ帰ってくるから」

「あ…うん、ごめんね。すぐ準備する」


確か亮の親はいつも夜まで帰ってこないのに。今日はなんだかひどく急かされている気分だった。


「ねぇ、次はいつ会える?」

すると亮は困ったような顔をして私の頭をポンと叩いた。


「また連絡する。試合が近くて忙しいんだ」

「…分かった。頑張ってね」


別れ際は、至って淡白。だって私達は付き合っているわけじゃない。



―――ただのセフレ、だから。










数日後、亮から連絡がきた。「4時に家で待ってる」たったそれだけのメール。でも私はそれが嬉しくて、思わず携帯を開いた瞬間に笑ってしまった。

亮に会える。それが凄く嬉しい。

私は亮の事が、好きだから。





学校が終わり、亮とはもちろん別々に帰った。私達の関係は絶対に秘密だから他の人に見られないように。

亮の家の前に着いて電話をしたら、ドアを開けて迎えてくれた。部屋に入ってカバンを置いた途端、ベッドの上に押し倒された。


「ちょ、ちょっと亮…!」


いつも強引でせっかちだけど、今日は一段とそう感じる。


「んっ…」


いつも以上に強引なキス。唇を舐められて開かされ、舌を捩込まれる。私も必死に応えようと舌を絡ませた。


「はぁ、ふぅ…っ、んっ」


息もできなくなるくらいの激しいキスに体の奥が無性に疼く。次第に亮の唇が首筋に下りてきて、いつの間にか脱がされていた胸元に口づけられる。


「んっ、や、くすぐったい…」

「嘘つけ。気持ち良いんだろ?もうこんなにしやがって…」


ぷっくりと突起した乳首に舌を這わせ、べろりと舐められた。同時にちゅうちゅうと音を立てて吸われ、無意識に亮の頭を掴んで胸に押し付けてしまった。


「あっ…、ぁん、きもちいい…っ」

「ちゅ、んっ、…だろうな、凄ぇ濡れてる」

「はぁん…っ!」


スカートの中に手が入って来て敏感な部分を押された。くりくりと刺激されて益々下着が濡れてしまって気持ちが悪い。

それを察したのか亮は私の下着を脱がせて床に放った。そして足を思い切り開かされてソコに舌が入ってきた。


「ああぁっ…!りょ、う、…!」


ピチャピチャと音を立てて舐められて、クリトリスを強めに吸われる。

亮のセックスは強引で荒っぽいけど、それがまた気持ち良くてハマってしまう。何回も何回もソコを激しく舐められて私は簡単にイきそうになる。


「あっ、もうダメ、あ、あ、いくぅ…っ!」


じゅるじゅると思い切り吸われ、私は激しく体を痙攣させてイってしまった。


「はぁ、はぁ…」

「入れるぞ?」

「うん…っ、いっぱい、してぇ…っ」


亮の大きくなったペニスを宛がわれ、一気に貫かれた。激しく腰を揺らし奥まで何度も突かれる。ペニスが気持ちいいところに当たって私は何度もイってしまった。


「はあ、ぁん、亮、亮っ…!」

「俺のちんこ、そんなに良いのか?」

「すごい、いいっ…、あ、だめぇっ」


奥を突きながら、亮が体を密着させて私に抱き着いてくれた。私も亮の首に腕を回してキスをせがんで舌を絡めた。


「ああっ、気持ちいいっ、あ、ん、もっとぉ…っ」

「っ…、く、もう、出すぞ…!」

「あぁんっ、あ、中、中にちょうだいっ…!」

「う、あ…っ、出るっ」

「あああっ…」


亮の体が震えて、私の中に精液が出されるのを感じた。射精が終わった後も繋がったまま抱き合って、暫くしてから亮がペニスを引き抜いて、ティッシュで拭いてくれた。



ベッドに横になり、亮の背中に抱き着いた。なんだかこのまま亮が遠くに行ってしまいそうな気がして、それが堪らなくなってぎゅうっと強く抱き着いた。


「あのさ、俺…」


亮が私の方に向き直り、肩を掴まれた。いつも以上に真剣な亮の瞳に吸い込まれそうになって暫く見取れてしまった。


「レギュラー落ちたんだ」

「えっ…!?」


だって亮はあんなに頑張って毎日練習して、必死にレギュラー入りしたのに。何で…、何で亮が。


「負けたんだ、試合で。相手は確かに数段格上だったけど、勝てない試合じゃなかった」


亮は私から目を反らし、仰向けになって天井を見つめた。


「奢り…だったのかもしれねぇ。俺は強いって、氷帝のレギュラーだから負けるワケねぇって思ってた」

「亮…」

「違ったんだな。だから、俺は負けた。そして決めたんだ。…もう、お前には会わない。俺はテニスに専念する」


心のどこかでは分かっていた。いつかこんな日が来るんじゃないかって予想はしていた。だから、泣かないって。亮を笑って応援しようって、そう思ったのに…


「私が居たら、駄目?」


泣きながら、それでもこれだけは聞きたかった。亮を困らせるかもしれない。迷惑かもしれない。でも、亮の側に居たかった。


「…ごめんな」


私を抱きしめて、頭を撫でて、涙を拭ってくれた。いつもの優しい亮。変わらないその優しさが嬉しくて、また涙が溢れてしまった。


「もう泣くな。お前はいい奴と出会って、付き合って、幸せになれ」


頭を撫でてくれる亮の手は、とても温かかった。





暫く泣いた後、私は制服に着替えて帰ろうとしていたんだけれど、今日はら珍しく亮が駅まで送ってくれた。

改札に入ろうとした時、私は亮の体に抱き着いて泣かないように言葉を紡いだ。


「頑張ってね。またレギュラー、なってね。応援してるから」

「おう。任せとけ」


亮は最後に笑って私を見送ってくれた。私も笑ってた。

溢れ出しそうになる涙を堪えて、私は振り返らずに電車に乗った。










それから暫くして、亮がレギュラーに復帰したという噂を聞いて、更に全国大会に出場が決まったという話も入ってきた。

あれから亮は凄く必死に練習してレギュラーに復帰出来たらしい。私は嬉しくて嬉しくて、たまにテニス部の練習をこっそり見学しに行くようになった。


(今日も頑張ってるな…)


暑い陽射しの中、汗を流しながらラリーを続けている亮の姿が見えた。その顔はとても嬉しそうで、見てる私まで嬉しくなってしまった。



やがてラリーが終わり亮が私に気付いたみたいで、こっちへ駆けて来た。あの日以来、会ってもないし話してもいない。戸惑う私の手を取って、亮が私に言った。


「お前が好きだ。名前、俺と付き合ってくれ。…今度はもう、泣かせない」





20111129





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