ぽた、ぽた。

雨は冷たかったけど私は濡れていたかった。あの人との思い出も涙も、全て流したかったから。



雨に打たれる事数時間。いい加減下校時刻になってきただろうから私は髪をかきあげて学校を出た。

校庭に一人、ずぶ濡れになりながらあの人の事を考えていた。分かっていた。彼の愛情が私に向いていなかった事も、全部。



忘れたかった、何もかも。この雨に流してしまいたかった。





校門から出てすぐ、誰かに肩を叩かれた。振り向けばあの仁王雅治が居た。

「あの」仁王雅治というのは私のクラスでずば抜けてイケメンで(丸井くんもイケメンなんだけどタイプが違う)、ずば抜けて変人な彼。よく「ピヨッ」とか「プリッ」とか意味不明な言葉を口にする変な人。ピヨとかどんな時に使うんだし。

しかも、あの最強とか言われちゃうテニス部員。

数回した話した事がない仁王くんが、私に何の用なんだろう。


「お前さん、ずぶ濡れじゃのう」

「…何か用ですか」

「はは、そんな警戒せんでもええじゃろ。傘も差さんと何してたんじゃ」

「仁王くんには関係ないよ。」


私は仁王くんが苦手だった。クラスで目立つ存在な彼と日陰者の私。正反対なはずの彼と話すことも、その理由さえない。


「つれないのう。…本当は傘差してあげたいんじゃが…俺も持ってないき、あそこで雨宿りせん?」


そう言って仁王くんが指差したのは学校の近くの公園。確かあそこには大きな東屋があったはず。

でも私が仁王くんと一緒に居る理由なんてない。ずぶ濡れになってもいいからとにかく早くこの人から離れたかった。


「夜から弱まるって予報で言っとったし、それまででええよ」

「ちょっ…」


半ば強引に、私の反論も聞かずに腕を引いて仁王くんは私を公園へ連れて行った。





「………」

「………何も話さんの?」


相当嫌われとるんじゃな、と寂しそうに漏らす仁王くん。この人確か詐欺師とか呼ばれてたはず。この表情に、そんなに簡単に信用出来ない。


「雨、凄いね…」


やっと絞り出た言葉がこれ。雨を見てまた泣きそうになった。俯いて涙を堪えてたら不意に仁王くんが私を抱きしめた。


「に、おう、くん…?」

「何で、泣いとった?」


ああ彼は最初から知ってたんだ私が雨と一緒に涙を流していたことを。仁王くんの胸は温かくて、自然に涙が溢れた。

しばらくして彼は私の涙を指で拭ってくれて、おでこにキスをした。

そういえばあの人も付き合い立ての頃、よくおでこにキスをしてくれた。私のデコが出てて可愛いと、よく言ってくれた。

思い出してまた涙が出る。最悪だ。嫌いなはずの人に泣き顔を見られるなんて。でも今は何故か、仁王くんの胸の中が酷く安心できた。


「嫌じゃったら、言いんしゃい」


私は、彼に流されてしまった。





制服越しに触られる胸も濡れているせいで感じやすくなる。私は座っている仁王くんの正面に跨がって胸を揉まれている。


「あ、ン、あぁっ…っ」


乳首をきゅっと摘まれれば自然に出る声。最近していなかったせいかな。前より感じやすくなってる気がする。恥ずかしいはずなのに、体はもっともっとって、仁王くんの愛撫を求めている。

いつの間にかシャツのボタンを外されてブラジャーをたくし上げられて、仁王くんが乳首を舐めていた。くすぐったい、でも気持ちいい。てゆーか仁王くん上手い。胸だけなのにおかしくなりそう。


「雨で下着、透けとったろ?」

「ひゃんっ」


仁王くんが私のスカートの中に手を入れ、下着をずらして中に指を入れてきた。こんな状況で返事なんて、出来ない…!


「しかも泣き腫らした目で見られたら、俺だって煽られるぜよ」

「は、あんっ、んっ」

「こんな濡らしよって…これは雨のせいなんか?」

「わか、んなっ…ああぁんっ」

「苗字は嘘つきじゃな。ごまかせないくらいグチャグチャになっとるぜよ」


仁王くんの指に、声に、全てに侵される。仁王くんがベルトを外して勃ち上がったソレを押し付けてきても、私は抵抗せずただ彼を受け入れた。


「ん…、にお、くん、」

「何じゃ…?」

「き、もちい、い…」

「…俺も。」

「動いて、いいよ…?」

「反則ぜよ、それは。」


仁王くんは笑って、そしていきなり私を突き上げた。仁王くんの首に手を回して必死にしがみつく。下から突き上げられて擦れて、気持ち良すぎてどうにかなりそう。


「はっ、んん、あっ。」

「苗字…っ、」

「ん、あっ、にお、くん、ごめん、ねっ…」

「…え?…あ、っく、…!」


イく寸前、私は咄嗟に仁王くんに謝ってしまった。

仁王くんがイったあとに私の中に精子を吐き出してる間も、ずっと罪悪感でいっぱいだった。

私はこの人を利用した。優しくしてくれた仁王くんで、寂しさを埋めた。


「何で謝るんじゃ、苗字」

「だって私、仁王くんを利用した…っ、私、彼氏に振られて、寂しくて…、それでたまたま声かけてきた仁王くんと…っ、私、狡い女なんだよ…」

「ほんなら俺も狡い男になるのう」

「え…?」

「ぜーんぶ知っとった。苗字が男に振られたのも、放課後校庭で一人で泣いてたのも。」


仁王くんはテニスバッグからジャージを取り出して私の肩にかけてくれた。


「気になって、部活が終わってから声かけたら…ずぶ濡れであんな顔されて…我慢出来んよ。反則じゃ」


あの詐欺師の仁王くんの顔が、いつもの余裕を含んだものじゃなくなっていた。そして私はまた彼に抱きしめられた。


「ずっとお前さんの事見てたナリ。」

「仁王、くん…」

「この雨で全部、綺麗さっぱり洗い流せばええよ。そんで、また晴れたら…」


(俺を少しだけでいいから見てくれれば、それで…)










きっと私が雨に全て流す時は、そう遠くない。





20110709




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