「はーいショート始めるぞー」


気怠そうに担任である坂田銀八がそう言うと、3Zの者はダラダラと各々の席に着き始める。
私の席は窓側の1番後ろ。
頬杖をついて、銀八の連絡は右耳から左耳に。

目の前には空いた席。
"高杉晋助"
それが席の主の名前。
まあ殆ど来ないんだけど。
私は3年になって、彼と初めて知り合った訳だけど知り合っただけで親しくは……多分ないわけで、ただ私は"高杉係"という係で彼とは些か繋がりが無いわけではなかった。


「千緒ちゃーん、もうショート終ってんだけど」


ダルそうな声が頭上から降って来た。
見上げれば、銀八のダルそうな半開きの目。
クラス日誌で私の頭をコツンと叩いた。音が固そうなのは、銀八が日誌の角で私の頭を叩いてるからだ。


「いったー!!暴力教師ぃー」


「暴力じゃありませーん。あ、千緒ちゃんこのプリント高杉によろしくー」


"高杉係"
それは、高杉の家にプリントを持って行く他、学校に連れて来る係の事だ。
要するに、担任がめんどくさいから誰かに押しつける為に設立した係なのだ。
高杉は不登校とかいうけど、私は知ってるつか知ってしまった。高杉は、いつも屋上に生息してる。
屋上よりも高いとこ、梯子を上ったとこ。
四角いそこに、奴はいつもいる。
決して町全体を見下ろせるほども高くないけどまあ高いとこで、朝から夕方まで寝てるんだ。


「高杉っ!!起きろ馬鹿」


「……っち…」


「っち…て、こっちが…っち…だわぃ!!」


私はドカドカと高杉の横まで歩み寄って、腰に手を当てて(お決まりのポーズで)言った。
高杉に私の長い…とも言えない影が被る。
高いとこ特有の強い風が吹く。スカートのプリーツがフワリフワリと気持ち良く揺れる。

同じように高杉の前髪も、気持ち良さそうに揺れてる。