「ひじか…十四郎…好き…」
秋。そう、読書の秋。私は、この季節がたまらなく好き。大好き。そして、今日は雨で坂田さんの家が雨漏りしてるらしいので、我が家にいます。雨漏り万歳。つか、雨漏りごときで何故?とか言わない。坂田さんがいるだけでオールオッケィオールグリーン。
坂田さんとは、あれから大変仲良くなりまして、今では夕食を一緒に食べるくらいに。
「や…そこは…やめ…」
え?この「」の内容は何か気になる?これは、坂田さんが同人誌を音読してる声だお←
あまりにも杉t…銀さんと声が似てるので、今日夕食をご馳走するのと引き換えに同人誌音読させてます。
もう腐女子だってバレてるんで、良いんです。
「千緒ちゃーん、もう良い?」
「ダメですぅー。ほら、」
「俺、夕食食える気がしない。」
「残さず食べなきゃ私が寝るまでさせちゃうぞ」
「あっヤメテ…イクぅ…」
棒読みとか気にしないのです。
坂田さんは、未だに下の名前を教えてくれません。年齢も。ただ、今は就活中でいつも食べ物に困ってるらしい。だから、大概が私の家で夕食を済ませています。私が引っ越して来るまでは、パン屋のご好意でパンの耳を頂いたりしてたとか。
「カレー、甘口で良いですか?」
私は、辛いものが大の苦手なんです。
「あー、俺辛口食えねえもん。甘口大歓迎。つか、もう良い?音読…」
真っ赤な顔して尋ねられると、押し倒したくなるんだが。あ、違うか。
「良いですよ。」
笑顔で答えると、決まって坂田さんは赤面して右手で口を抑えて、目を反らす。。それが堪らなく楽しいし嬉しい。夢小説とかだったら、きっとこれは「好き」という展開なのに。
そんなことを思いながら、私はルーを溶かす。
「千緒ちゃんさ、何でこんなん好きなの?」
「BLの事ですかな?」
「…おう」
「うーん…」
何で好きなんだろう。気にしたこと、なかったなあ。
「ま、言えねぇんならいいけど」
そう言うと、坂田さんは私の本棚を漁る。初めて私の家に来た時、坂田さんは私の家の玄関先で倒れてた。先の通り、彼は食べ物に困ってたわけで。ご馳走したら、元気になって、部屋を徘徊、そして本棚漁り。おかげさまで同人誌を読まれて、ドン引きされて、今の関係になった。
だから、今ではそういう部分まで認められてる、と思いたい。
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