薄黒い煙が昇っては消える。 それを彼女は、ただ見つめていた。 彼女―――苗字 名前は沖田と同い年だ。女だてらに剣の腕は立つ人間で、それでいて世話好きで聞き上手。真選組の紅一点。そんな名前には1つ下の弟がいた。 弟の苗字惣太は名前の唯一無二の家族で、去年姉のいる真選組に入隊した。 名前は弟を「惣ちゃん」と呼んだ。 二人は長らく会えてなかったようで、その穴を埋めるよういつも一緒にいた。 そして、歳の近い沖田もまた仲良くなっていた。 「真選組のバカトリオ」なんてよく呼ばれていた。 そして沖田は、名前が好きだった。 好きだけど告白するつもりは毛頭ない。そんな話を沖田が惣太にしたとき、惣太は少しだけ寂しそうだったが、すぐに笑った。 「姉さんも総悟が好きだよ、多分な」 ああ、この光景どこかで見た。どこかで感じた。 そうだ。惣太の表情は、いつかの俺にそっくりだ。 「総悟、俺は姉さんを幸せには出来ない。姉弟だからな。だから、頼むな!!」 その翌日、惣太は死んだ。 倒れたときには額がパックリと割れていて、ほんの少しだけ目を開いたまま惣太は死んだ。 あっけない。人間なんて。 |