大地にしがみついた。
この身が。
爪が剥がれる。
この鎖が。
引かれて食い込んだ。
自由を奪ったものがだいきらいなんだ。
しらない人達に引きずられた。
運命が憎いわけじゃなかった。僕が生まれ落ちたのはその運命のおかげで、生きてこれたのも運命のおかげ。
憎いわけじゃない、決して。
ただ何も…なにもかもがどうでもよかった。否、よくなった。
大切な人達が死んだのも、今のこの現状も…悔しいと思ったけれど、どうにもならなかった。
逃げ出せないんだ。
「疲れたよ…マーくん…。」
声は掠れてた。睡眠薬が入っているのはわかりきっていたから、水なんてものはあまり飲まなかったし食べ物だってそうだ。
「眠いよデイシャ…。」
眠っている間に何をされるかわからない。
「寒いよフロワ…。」
それには痛みが伴うことだけはわかるが。
「潰れる前に感電死、するのかなぁ…?
もう、会えないね…ユーくん。」
運命なんてどうでもいい。きっと狂ってはいないとわかる。歯車は壊れてなんかいない。
むかし、運命は時計と同じだと誰かが言っていた。
知り合いだったかもしれないし、下町に現れた浪人だったかもしれない。
歯車が狂うから時計は狂う。
歯車が狂うから運命は狂う。
歯車が止まるから命を落とす。
そう聞いた。
だから思った。時計が狂ったから、止まったからといってなにも時計のせいではないんじゃないかと。
つまり、運命に悪気はなかったと僕はいいたいんだ。
「!
ぁう…っ!!」
突然ドゴッて破壊音が聞こえて背後の壁が壊れた。その後、ドドドドッと弾丸の嵐。
「へ…?腕が遠くにいく…。」
壁に使われた石が、運よく鎖に直撃したらしいが僕は瓦礫に埋もれたまま。今の僕じゃブランクがありすぎた。
「行くぞ六幻。」
ただ、その言葉と共に翼を出した。
黒赤カンビオ
黒の彼と黒赤の僕、赤い血。
ほら、歯車は狂わず回ってた。
憎くは、ない。
だけど僕を救って貴方を闇に捕らえたままの、この歯車が堪らなく悔しいよ。 ←→ page: