「何を言ってるの?」


彼女が言う。臨也くんは何を言ってるの?繰り返した。「だからさ、いつになったら止めるの?」「稼げなくなったら。」「無駄な人生だね。」「そ、私はそう思わないけど。」まぁでも臨也くんが言うなら、きっと世間一般の言う人生の無駄遣いってわたしのことを言うんだろうね。
他人事の様に、ベッドに身体を沈めて、擦れた声でくすくすと笑う。なんて妖艶で、醜い笑顔なんだろう。

「借金、返したんでしょ。」「返したねえ。」「じゃあ生活に困らない程度に蓄財したら足洗いなよ。」「そしたら今すぐ止めなきゃいけなくなるからいやだなあ。」疲れたー。と俯せになって、彼女が枕に顔を埋める。「高校時代はあんなに純粋で聡明だったのに…、時間って怖いなあ。」とんだアバズレ、大層な金の奴隷がいたもんだよ。
俺が笑えば彼女の埋められた顔がこちらに向いて、笑う。「変わるよ。生きるために。生物なんだからさ、順応しなきゃ。自分の生きる世界に適応しなきゃ生きていけないよ。」「別に君には、普通の日常を過ごす事だって選べただろ。」「私の神経がもう少し太かったら、選べたかなあ。」なまえが仰向けになって枕を抱いて、天井にあるシーリングファンを見上げる。

「あの感覚がね、消えないの。」
「、」
「いっぱいいっぱい、塗り潰そうとしてもね、消えないの。」
「…、」
「だからね、お金を貯めて、満足感に変えるの。私、お金、だいすき。臨也くんは人間を愛してるって言ってるけど、敢えてその言葉を借りるなら、私はお金を愛してる、かな。」だって裏切らないもん。と、彼女は枕を放り投げ、顔面でそれを受けとめる。深く息でも吐いたのだろう。一泊置いてから再び顔が現れた。「それに、まぁ時と場合によるけど、大方お金があれば世界は上手くいくし、人生そうそう失敗しないし、お金で売買できる愛もあるし。」「まあ、その最たる例が君だと思うけど、それって愛?本当に?」「本当の愛なんかじゃないと思うけど、言うなればインスタントラブってとこじゃないかなあ。」カップラーメンみたいでおいしそう。そういう彼女に、如何にも人間の裏表を兼ね揃えてるよねえ。と薄く笑う。インスタントラーメンなんか、おいしくないのに、こいつの頭は理解出来ないなあ。

「私ね、私に身体があっても別に満足しないけど、稼げるなら別。臨也くんだってそうでしょ?自分が満足するためなら他は道具、とか。
私だってそうだよ、満足できるなら身体だって道具に成り得ると思うの。しかもほら、身体って自分のだから迷惑かからなくて丸く収まったままなんだからこんなに都合のいいことってないよ。」
だから、あってはいないかもしれないけど、間違ってもないよね、これ。
そう俺に聞くのだが、俺は黙ったままそれを聞いていて、それから顔を上げてなまえに覆い被さった。

「じゃあ、俺も君の愛とやらを買ってみよう。」口付けると、彼女は少し驚いた様子で、珍しい。と自嘲気味に笑う。ねえ、俺が声をかければ、なあに?とまた笑った。

「あの時、俺がすぐにでも塗り替えたら、なまえは俺を愛したかな。」




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書き方変えてみての愛がわからなくなった女の子と愛がほしい臨也くんのお話。ラブエステ見たら思いついたけどやりきれなかった感が拭いきれない。
埋没とは別で考えてた連載の、アナザー。
title by パッツン少女の初恋
20110707
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