※青峰と体操選手を目指してた女の子
「あーあ、またサボってる。」 さっきちゃんが懊悶してたよ。とそこまで言うと、屋上で巨乳の人妻なるかなりマニアックな雑誌を日除けに惰眠を貪っていただいきは、オーモンってなに。と頭の悪さを露呈させる。心の奥で深刻に悩んでましたよ。と彼の目の前に仁王立ちして懇切丁寧に換言してやったら、うるせーよ。と奴はページを捲った。だったら文脈で解れよ。 「いこうよ部活。」 「やだね。」 「エロ本読んでるよりもずっとリビドーが発散されるというのに。」 「されねーよボケ。」 さっきから意味わかんねー言葉ばっか使ってんな。腹立つ。と睨まれたので、活字の行列でも読めば。と言い放った。部活をサボって、悶々としたその何にも言い難い塊を性欲と誤魔化すのはとてもとても無駄なことに思えるのだ。何もしたくないから、そういうことに時間を費やしてしまうのはわかるけど、とても勿体無い。才能も、体格も、ある種のストイックさも持ち合わせているのに。ほんとうに、勿体無い。努力をしても耐えられる体をしているのに。やらないことを選択するなんて、恵まれてる。 ひとしきり黙ってから、つーかお前さ、とだいきが口を開いた。 「桐皇行かねーんだな。」 「うん。海常にした。りょたから聞いたの?」 「まぁな。それよか、うちの方が設備いいって聞いたけど、なんであっち行くんだよ。」 「パパの転勤で横浜に引っ越すから。翠嵐も候補にはあったんだけど、学力的にちょっと危ういかなって。」 私、もう一回体操やってみようかなって思ったんだ。私がそう言って笑ったら、どうしてだよ。と彼は言った。泣きそうな顔に見えた。 「私、だいきのプレーは好きだよ。今は微妙だけど、本気の時は励まされたし、本当に憧れた。いつだって綺麗だから。だから、今度はわたしが頑張ろっかなって。」 バスケと体操じゃ、勝ち負けの決め方なんか全く違うからだいきの適当な相手がいないなんて悩みは深くまで理解できそうにないけど、競う相手がいないのはきっと張り合いがないんだろうなとは思う。でも、だからって見てる世界が狭すぎるんじゃなかろうか。上なんか、下よりもいくらでもいると思うのだ。だから、今、対等に戦える相手がいなくったっていいってわたしは思うのである。 あっそ。と鼻を鳴らすだいきに、はやくしてね。と伝える。私は短気じゃないけれど、ずっと待ってられるほど気が長いわけでもない。 そもそもスポーツってのは根本的に自分との戦いでしょうよ。俺を倒せるのは俺だけだとか意味分からんこといつまでも言ってたら蹴り倒しに行くね。としゃがんでだいきのおでこをぺしぺしと叩いたら、呆れたようにに目を伏せて溜め息をつき、私の名前を呼んだ。 「レースとか結構お前攻めるな、パンツ。」 一回くたばれ。 短編久し振りすぎて何書きたいか忘れた。不完全燃焼。長編の一部みたいな気持ちで書くからよくない。 title by クロエ 20130709 |