※イメージ的には、それは誘っていると判断してもよろしいのでしょうか?の子


「いざや、」

「何?」

「うわさ、聞いたよ。」


彼女、できたんだってね。といじってないのに形の整った眉毛をハの字にしてなまえが笑った。ほしいって言ってたもんね、おめでとう。なんて言って、髪を耳に掛けるふりをして、目を少し擦るのが目に入る。
彼女が内心、穏やかなんかじゃないことくらいわかっているのに、俺は、覚えてたんだ、ありがとう。と乾いた声で笑った。


「わたしね、いざやに彼女ができたって聞いて、すぐ見に行ったんだ。」

「…どうして?」

「え、あ…えっと、だって、いざや、かわいい子すきっていうか、面食いだから、きっとかわいいんだろうなって。目の保養だよ。かわいいね、あの子。」

「当たり前だよ。」

「、そっか。…やさしいの?」

「…まあ、やさしいよ。」

「いざやとおしゃべりうまくいくんなら、頭もいいんだろうね。」

「そんなことないよ。ちょっと頭は足りないかな。」

「でもそこがいいって?」

「そう。」


よかったねえ。彼女はそう言って、膝を抱えて座りなおして、顔を埋めた。ほんとうに、よかったねえ。でも、ごはん、もう一緒に食べれないね。その声が震えているのを、俺は何も指摘できなかった。しなかった。


「俺、教室戻るけど、なまえは?」

「…まだ、ちょっとここにいる。えっと、ごはんのあとだし、すぐに動いたらお腹痛くなっちゃうから…。」

「わかってるよ。そんなに焦らなくてもいいじゃん。ずる休みするみたいに聞こえる。」


焦って顔を上げた彼女が、何も言えなくなって俯くのを見て、見なかったことにしてから、先行ってる。と屋上を後にした。


「…本当は彼女がいるなんて真っ赤な嘘で、向こうが勝手に言ってるだけだよ。」


誰も見ていない掲示板を階段を降りながら眺めて、呟く。高校に入って、シズちゃんと喧嘩して、知らないうちに敵を作って、気付かないうちに君は狙われてたんだよ。あの子は、それを逆手にとって、この俺に脅してきたんだよ。あともう少しで根回しが終わるからいいんだけど、あの顔を見るのは、正直、居たたまれないっていうか、


「(…堪えるなあ。)」


君と僕はね、似たもの同士なのに、分かり合えないのはなんで?なんで?
俺が嘘をついて、君も嘘をついて、そんなどうでもいい話のせいで君は作り笑いして、俺はそれに蓋をして、後で謝ればいいや。なんて思いながら、さらにで君を傷つけてく。
第三者…例えば新羅辺りが知ったら、たぶん、隠し事ばっかりして、君達おかしいと思うよ。って言うんだろう。家にいる“未来のお嫁さん”とやらに包み隠さず自分を見せるのがあいつのスタンスらしいし。知ったこっちゃないけど。


結局、なまえは戻ってこなかった。
俺に一言もなくなまえが授業をサボるのは初めてだ。不思議には思ったけれど、後でノート写させてって言うんだろうなと思って、彼女のために小綺麗に板書をまとめてノートに書いた。
鐘が鳴って、学級委員の号令が終わると同時に立ち上がる。あの女子生徒が、話があると腕を引いたけれど、放課後にしてと振り払った。それと同時に錆の臭いがした。


「…寝てるの?起きてるでしょ。どうしてまだおまえ、」


なまえはまだ屋上にいた。彼女が行きそうな、サボりの定番っぽい保健室と裏庭にはいなかったから、そんなまさか、とは思いつつ足を運んでみたのだ。
どうしてまだお前はここにいるんだ。って半ば呆れながら、横になって体を丸めたなまえに足を向けていたのだけれど、止めた。止まった。俺は、ボロ雑巾みたいな、あんななまえは知らなくて、思わず駆け寄った。眉間に皺を寄せて涙を流していた瞳は、俺をその中に映すと丸くなった。


「ちが、っ、…ちがうの、」

「まだ俺、何も言ってない。
怪我は?」

「な、い。」

「うそつけ。血の臭いがする。」

「いざや、授業、はじまっちゃうよ。」

「どうだっていいだろ。話逸らすな。」


スカートのプリーツに、じんわりと赤い色が広がっていくのが見えて、なまえが隠す前に少しだけ捲り上げる。真っ直ぐな赤い線が二本、交差していた。少し遅れて彼女が手を伸ばしたのだけれど、途中で息を詰めてそれを止める。上、少し捲るよ。と言って、応えを聞く前にワイシャツを上げた。紫、青、黒、そんな色の痣がいくつか散っている。なまえは諦めたのか、それに抵抗しなかった。


「お腹痛くなっちゃうから、じゃなくて、お腹が痛かったってこと?それとも、これからお腹が痛くなるってわかってた?それとも両方?」

「…今日、ドア開けようとしたら、その前に開いてぶつかった。」

「ドアノブにぶつかって切り傷なんかできるわけないだろ。カッターじゃないの?」

「、……ちがう…。」

「ねえ、言ってよ。お願いだから、話して。」


ちがう、ほんとうにちがうんだよ。と、どこまでもお人好しでバカで間抜けななまえの涙を拭う。その涙の理由を話してよ。俺の前では強がらないでよ。そう言ったらなまえの頬に涙が落ちた。いざや、泣かないで、いざや。なまえが俺の目蓋にそっと触れる。


「どうして泣いてるの?」

「…なまえが、ぼろぼろになっても頑張ろうとするからだよ。」

「…それで、どうしていざやが、」

「俺が、なまえを、どうしようもないくらいにだいすきだからだよ。」


嘘つきだらけのこの世界で、僕は君を信じ、そして、つまんないこんな世界を壊したいんだ。






書いてる間に10月になりました。今日はヒビリの誕生日です。明日はヒビリの弟の誕生日です。今なんか地震起きた気がしたんだけど気のせいかしら?

意地っ張りと意地っ張りの話(もしくはツンデレ×ツンデレ)だと推測して、それを書こうとしたのに、どうしてこうなったと思うくらいにベタベタでコテコテなものに…あぁorzでも満足。すっきり。
その後は…まあ折原が色々やって、ヒロインのこと心配しすぎてベタベタしてるんじゃないですか。傷でもぺろぺろしてるんじゃないですか←

すこっぷさんによるニーナさんの二息歩行のリミックスがよすぎて吐く。オマケCDだけでもいいからほしいなーほしいなー。
BGM by 嘘つきの世界/すこっぷ
20111001
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