アガパンサス | ナノ
「あっ、家ここです!わざわざここまですいません…。」


「構わねーさ、一応玄関まで送っとく。」



今日の高杉くんはいつもより優しい。いつも優しいけど特に。私にとっては嬉しいことなので出来ればなるべく長くお家にいてほしいです。一人って静かだしいろいろ辛いんですもん。



「ずいぶんとまぁ立派なところで。」


「うち、借金あるんですけど母が私はしっかりしたとこに住ませなきゃいけないとかで…。」


「は?」


「借金です。だから今海外で社長さんやってるんです。」


「意味わかんねえよ。」


「生憎、私もよくわかってないんですよね…。」



管理人室前のガラス張りのドアのキーロックを鍵で解除して中に入る。そこからエレベーターで7階まで上がって、お家の鍵穴に鍵を差し込んで回した。



「ありゃ?開いてる。」


「いくらなんでも無用心すぎだろ。」


「言い返す言葉もございませんです。」



朝急いでたから閉め忘れちゃったのかな…?なんてドアを開けてパチリと電気をつける。



「?


え…あ…、あぁぁ…っ。」


「!」


「う、そ…また…?」



また無意識に唇に手が行った。

洗濯物は畳んで置いたものがグシャグシャでご丁寧に下着や靴下、バスタオルがごっそりなくて、ごみ箱は溢れかえってフローリングにはコロコロとティッシュ。あぁ嫌だ、誰かがいた。私のモノがなくなった。気持ちが悪い。



「相当、だな。」


「!
あっ、あのっ!いつもはこんなじゃないんですよっ?ホントはもっと…っ、もっとマシなんですっ!洗濯物も…畳んでたんですけど…っ、ごみ箱もっ、ちゃんと、ちゃんとしてて…!!」



涙が零れそうになるのを押さえて、違うんですっ。と俯いた。もう、何が違うのか…なんでこうなってるのか自分でもわからないや。

すぐ、片付けますね。ってしばらく(といっても10分ぐらい)片付けていた(ティッシュは何故だか高杉くんがやってくれました)(眉間の皺がそれはそれは深かったです)
一息ついたときトゥルルルルと無機質に電話が鳴る。あんまりこういうときって出たくない…だけど家族や妙ちゃん達だったら出なきゃダメだからと子機を手に取った。



「も、もしもし?どちらさまですか…?」


『…。』


「あのっ、黙ってちゃわからないです!どちらさま…あっ!」



切れちゃいました。と高杉くんに伝えて子機を戻す。無言電話も最近多いんですよね、誰か引っ越してきたんでしょうか(深く考えたく…ない、)

そういえば高杉くんにまだお茶出してないな。と思い立ち、パタパタと冷蔵庫に駆け寄って開ける。
あ、どうしよう…うち、どくだみ茶しかないや。嫌いな人多いんですよね…。なんてうちの節約術を恨んでいたとき、また電話。
はい、どちらさまですか?と出ると今度は無言電話ではなかった。



『はっ…はぁっ、睡…っ!!睡っ、はあ…っく…!!』


「あの、睡は確かに私ですけど…どちらさまでしょうか?えと…大丈夫ですか?」



相手の方は走っているのか息が荒くて、私の名前を連呼している。話が噛み合わなくてわけがわからない。声は男性のようですけど…誰、ですか…?



『ふっ、く…っ、おれの…オレの睡っなのに!!なんで男とかえ…っくあ…!!』


「それ、なんで知ってるんですか…?だいたい私、あなたのじゃあないです!モノみたいに言わないで!!」



相手の態度がなんだか気持ち悪くて、その上言い方にムッとした私が語気を少し荒げるとクスクス笑う彼。余計にムッとする私。



『っはぁ…そんなにカリカリするなよ、一昨日、保育園の帰りで疲れてコンビニのおにぎり、ツナだけだったもんなぁ…カルシウムとってないからイライラするのかな?』


「な…っ!?」



いきなり口調が変わった電話の相手は普通なら知らないことをペラペラ話し出す。
今日の…し、下着の色…とか、昨日の入浴剤とか…。
ご飯だって今朝がごみ回収の日だったから神楽ちゃんと妙ちゃんは知ってるかもしれないぐらいで、他の人は知らないはずだ。



「なに…言ってるんですか…っ?」


『あぁそうか、そういえば睡ってば生理だったもんね。大丈夫?お腹と腰、昨日辛そうにしてたから心配だよ…。』


「!
い…いやぁっ!!」



するっと子機が手から抜けて落ちる。
落ちた衝撃でデブラホンが押されたのか、その声すきだなぁ…元気になっちまったよ。なんて、耳にあててないのに聞こえる。
また息が荒くなってて、その息遣いでさえ私を強張らせた。すとんと腰が抜ける。



「睡?」


『…は…くっ、はぁっ…睡…、ね…睡…?もっと…もっと声聞かせてよ…っ!!』


「ひぃ…っ!!なん、でこんな…っ。」



リビングにいた高杉くんは明らかに私の異変を感じたようで私の方に寄ってきた。



『だってオレ、


世界一の、ファンだもん。』




少し黙っとけ。」



高杉くんは電話の声を聞くとブチッと切って子機を戻す。しばらくして、再び電話が鳴ると今度は電話線を抜いた。



「うるせえってんだ。」


「……あり…がと、高杉くん。」



泣きそうになっていたから俯いて目を擦ると高杉くんに止められた。腫れるから止めろ。と一言。もう大丈夫だ。と頭を撫でられると、安心したからですかね…?涙がボロボロ出た。



「わたし…っ、あんな人…身におぼえ、ない…っ。」


「あぁ。」


「わたしのひみつ、わたししか知らないことばっか…っ、いっぱい…いっぱい知ってた…!!」


「そうか…。」



彼は相槌を打ちながら、ゆっくり腕を動かしてくれた。それが嬉しかったのに、やっぱりまだ怖くて…不快だった。



「こんなの…やだよぅ…。こわい…、こわいよぅ…っ。」


「わかったから。」


「ティッシュ…だって…っ、こんなに、こんなに鼻かんでないよ…!!」


「あぁ、わかったから落ち着け。」



高杉くんに抱きしめられて背中が摩られるのを感じた。話さなくていいから、まずは落ち着け。って有無を言わせない強い語調だった。



「着替えと明日の時間割一式持ってこい。ここは危ねェ、うち行くぞ。」


「…ひぐ…っ。」



ページにも
  裏写り


(なんっでまた…移動…なんですか…っ?)
(寝てる間にまた侵入されたら困んだろーが。)
(それは絶対、絶対絶対いや…っ!!)
(わかったら行くぞ。)


私を引いてくれる手が…高杉くんが、とってもとっても心強かったです。





なんかぐだぐだになっちゃった。
相変わらず晋ちゃんじゃないしね。stkがリアルに気持ち悪いしね、変態だよアレただの。
ホントは晋ちゃん視点もいれたかったところ。

あ、晋ちゃんお誕生日おめでとう!
そして晋ちゃんの誕生日に八万打迎えた私もおめでとう!(←)うれしいなぁ!



20090810
- 7 - ←→ page: