しんおん。 | ナノ
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ここに来てから何日経ったのか…そんなものはもう忘れた。一ヶ月は経っていないのだろうけど、恐らく一週間は過ぎているはずだ。
先日、確かにポジティブに生きようとは思ったものの、さすがに毎日ほろう等という、何かもよく分からないものの血と生肉は堪える。体力的には問題ないけれど、あの後この部屋を出ることさえも禁じられたので、元々そこまで出入りはしなかったとは云え精神的にかなり痛かった。

朝、彼に起こされ血生臭い朝食を取り、最早何も考える気がない頭を垂れて再び寝て、昼には朝と同じような血を啜り、永劫変わりはしないだろう天と月を眺める。
夜になれば、また生肉を空腹感の分からなくなった胃に無理矢理詰め、風呂で制服や下着を洗って床で疲れてない肉体を休ませた。

最後に話したのは、五日程前にずっと制服でいて違和感を覚えたらしいうるきおらさんと…だった気がする。
繰り返される非日常は私の脳を弛緩させていくばかりで、神経を擦り減らしていった。だから、今廊下を歩けているだけでも今の私には散歩気分になれて気分転換になった。真っ暗な世界がここからは見えないのと、初めて通った時よりも廊下が明るいのも私の気分を良くさせた。




…あの、」



喩え、あの“藍染さま”に呼ばれ、これから赴くとしても、



「何だ。」



喩え、この満ち行く先に何が起こるか分からなくても、だ。



「わたし…私は、」



不安は、ある。



「わたしは、ころされるのでしょうか…?」



それを少し口にしてみれば、知った事か。と云う様に彼は冷めた眼でチラと私を見た。



「わたし…しにたくない、です。」


「…それを俺に云ったところで何も変わるまい。」


「…はい。…あ、でも、」



ただ、あの私が動けなくなった一件以来、何か有れば云えと云われてから、なんとなく、うるきおらさんに話しかけ易くなった。気がする。
静かなのは好きでも、あの狭い部屋の空気は別で、重いと感じる時があって、それはとにかく息苦しかったからすごく救いになった。



「でも、何か有れば云えとのことだったので。」


「肉体面で何か遭ったら、だ。俺は貴様のお守りじゃない。」



不愉快だ。と射殺すような視線を向けられ、そうですね、すみませんでした。と嫌々前進する足を見た。



「(
それでも、一人でいるよりずっと…生きてるって、感じがするし…まぁ、いいかな。)」



そう、良い風に見られていなくても構わない。不愉快だと思われても、藍染さまに云われて仕方なくでも、気まずいよりはずっといい。自己中心的だと、人は云うだろうけれど。



「(ずっと……ずぅっといい、はずなのに、なぁ。)」



無意識に吐かれた小さな溜息を、彼はただ見ていた。



♂♀



「あ、あの、お久しぶり…です…。」


「ああ、久しいね。気分はどうかな?」


「えと…ふ、つう、です。」



…はい。と何故か云ってしまった嘘を隠す様に最後に肯定の言葉が口を吐いた。気分は最高に悪い。それを知ってか知らずか、顔色が良くないな。と藍染さまは私の首筋を触った。



「っ、(…うわ、殺されるかも。)」


「臆す事は無いよ。」


「…へ?」



びくっと身を退こうとすれば優しく頭を撫でられ、殺されると、思ったろう?と目を細めた。なんでわかったんだろうと目を丸くすれば、怖がっている事くらい解るさ。と髪をくしゃくしゃにする。



「さて、いきなりで悪いが時間がない。」



本題に入ろうか。とぽかんと口を開けていれば藍染さまの顔つきが真剣になって私から手を離した。



「(本題…?)」


「ウルキオラ、良くやったね。私も尸魂界で話を聞いてはいたが、此処迄とは思わなかったよ。」



藍染さまがそう云えば、俺自身、まさか死に損ないの小娘に此程の霊力があるとは思いませんでした。と膝をつく。一方、それに目を丸くした私には、そうるそさえてぃが地名なのか、はたまた建物の名前なのか判らなくて、一人だけ置いてきぼりだ。



「やはり君の目に狂いは無い。」


「お褒めに与り光栄です。」



彼が頭を深く下げた。何やら褒められるようなことをしたらしい。そして、藍染さまはざえるあぽろさん曰く“この世界の神”であるからして、やはり褒められる事はすごい光栄な事なのかと思った。



「(私には普通の人間にしか…あ、幽霊にしか見えないけどなぁ。)」



あの圧は私の何千、何万、何億、何兆倍もあるのだろうけど。…いや、何兆はないな。



「霊圧っての、まぁ、あって八億倍…。

…?」



あ。と声を上げる。そう言えば二人はお話し中だった。完全に今の独り言は邪魔だ。慌てて謝ると舌を噛んで痛かった(というか、しみましぇん!!って云った、云っちゃったぁあぁああぁぁ…)



「今、何と?」



藍染さまに聞かれて、それはもう、深く頭を下げる。この人に逆らったら死ぬことくらい私でもわかる。殺さないって云ってたけれど、先程よりもずっと雰囲気がピリピリして、濃くて重い、あの霊圧がこの部屋に満ちた気がするのだ。雑魚にも満たない者としては気が気でない。



「すいません噛みました噛んだ事は見逃して下さいそんなことで死にたくないですお願いします許して下さい。」


「そんな事等聞いていない。貴様はさっき何と云った。」


「し、しみましぇん…。っていう………すいません忘れて下さい。」



怯え半分恥ずかしさ半分、勇気を振り絞って応えれば、それではない。と淡々とした声で云われ、ひっ、と息を呑む。すれば一泊おいて、その前だ。と再び促すうるきおらさんの声は少しだけ丸くなった気がした。



「八億倍…かな…ですか…?」


「何が。」


「えと、皆さんの云う、霊圧…と思われるものですけど…。あの、変なこと云いましたか?」


『……。』


「…位置とか大きさがわかるのは普通じゃないんですか…?」


「位置は別として、如何に能の有る者でも、或る程度、だ。数値に表せるものではない。」



表せるものではないと云ったって、私だって感じたものを目分量で云ってみただけである。信頼性の薄い発言をよく信じたものだ。黙りこくった二人に声をかけようとすると、藍染さまは口角をあげてさも愉快そうに笑い、うるきおらさんは私をじっくり見た。あんまり見つめられると、少々恥ずかしい。



「霊力を持ち得ているだけで無く、物質の意図的な構成、そして霊圧知覚…。前者二つは未だ能力値不明だが、殊に後者は相当優れているな。」



そう分析するうるきおらさんに、本当に君は良い仕事をしてくれたよ。と藍染さまが私に手を伸ばした。



「翆、と云ったね。」


「あ、はい。」


「何か得意なもの、趣味、好きな事はあるかな?それを生かす仕事を君に与えたい。」


「しご、と…?」



なんで、いきなりそんなことを口にするのだろう。と疑問と驚きで目が無意識に開いた。
確かにやることが出来れば、何かをもやもやと考えることもなくなるし、体内時間ももとに戻るかもしれない。でも、ここは恐らく、命を奪っても何も問われない場所で、だからあの人は女の人を殺しても平気だったのだ。



「(そんなところで私、生き抜けるかな。)」



いや、生き抜かなきゃ少なくとも元の私のいた方の地球には絶対に戻れなくなる。それに、たぶん外に放り投げられれば私は確実に死ぬのだと思う。
目を反らして、ゆっくり、真剣に、間違えの出ないように考える私の頭の中を見透かしているかのように、遣る事が無いのはとても辛いだろう?と藍染さまは声を掛ける。



「同胞として、私は、君を迎えたいと思う。」



それは、肯定しか受け取らないと言っている様に聞こえた。



死灰復た然ゆ

((だけど、私、生きてられてる…。よかったぁ…。))
(異存は在るかな?)
(え?あ、ない、です…。えと…家事とか一応できますし、教えてもらえさえすれば…あの、お仕事もお手伝いさせてもらいます。)
(決まりだ。ウルキオラ、後は頼むよ。そろそろ時間なんだ。)
(承知しました。)





おそくなりましたすいません継ぎ接ぎすいません
とりあえずしんおん。は書くの楽しいはずなのにキャラがまだ動いてくれない。だがしかし偶に暴走したりするから一気に書き直したりする。堅いよみんな←
脱色はセリフ漢字多い方が雰囲気出るし、言い回しとか昔っぽかったり難しかったりするから勉強しなきゃなぁ



20101104
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