好き、嫌い
「………………」
好き、嫌い
「………………」
好き、嫌い ……
「……あ、」
ブツン、と切れた最後の花びらは手のひらに残り、力が抜けたのか、指の隙間をすり抜けゆっくりと地面に向かって落ちていく。
それをただ眺めていた。
「占いは全く信じないけれど、」
地面に落ちてしまった無数の花びらの残骸を一通りみた。そのあと、どこか満足したような顔で手に残っていた花びらの抜け落ちた茎を地面に放った。
「うん、やっぱりいらない。」
彼はそれを踏みにじりながら、何事もなかったかのように歩き進む。
歩き進むうちに、待ち合わせ場所が見えた。だが、彼が恋い焦がれている人物がすでに彼を待っていた。
「兄さん!」
「…遅いぞ、なにしてたんだよ。」
笑顔で駆け寄る彼に対し、不機嫌そうな態度を見せる。すかさず、彼は答えた。
「暇つぶしに花占いしてたら、いつの間にか時間すぎちゃった。」
その間抜けな答えに、呆れるしかなかったが、しばらくすると彼の頭をポンポンと優しく叩きながら一言つぶやいた。
「好きな人でもいるのか?」
茶化すように笑う。
その笑顔も愛おしい。
「……………」
けれど言えない。
「‥兄さんに俺の可愛いネタを提供しただけ。」
なんだよそれ、と笑う彼に対して一人含んだ笑いをしながら歩き出す。
「おい、置いてくなよ。」
一人で進み出す弟を呼び止めるが、振り向かず「早く来てよ」と言ったが、先ほどよりもトーンが低い。
誰も気付くはずはないだろう。彼もまたそうだった。
そのあとすぐに彼は先に進む彼と並び、共に帰路に着く。
共にいるのに、それぞれ違うことを考え、意識しながら。