「つづら…ねえ、そろそろ起きなさい。」

寝ぼけ眼で見上げると、明朝の優しい明りに照らされ、少し困ったようなそれでいて包み込むような笑顔で小春は覗いていた。朝に弱くいつもはなかなか起きれないが、小春に起こしてもらうとほっとした気持ちで朝を迎え入れることができる。ずっとこのままでいれたら…とらしくないことを考えるが、お互いのことを考えるとそういうわけにはいかない。

「いま何時?」

だいぶ目が覚めたつづらは、目をこすりながら小春に聞く。小春は黙々と支度をしながら「7時半よ。」とだけ言い、メイクに取りかかろうとする。その光景をベッドから眺め、小春は知ってか知らずか念入りにアイシャドウを入れる。

「…いつになくはりきってるね。」

皮肉っぽくいうと小春は嬉しそうに「今日は子供たちとデートなの!」と答えた。もう何度目か…と思いながら小春の子供自慢を聞き流しつつ、つづらもそろそろ支度をしなければとベッドから降りたその時、小春の華奢な体が密着した。

「小春、…動けないんだけど。」

不満を漏らすも、小春は離そうとせず、さらに力強く抱きしめた。−…この手を、腕を離せばこのもやもやした気持ちもなくなるのに。

既婚者、しかも高校生にもなる子供がいる女性とこんな関係になるなんて、辛くないわけがない。最初はなにも感じなかったが、気持ちが傾きつつある今のつづらには堪えるものがあった。
このまま関係が続けば地獄、だが、これまでのことをなかったことにするのは、それを超えるほど耐えられないという状態まで陥ってしまった。様々な迷いがあるつづらにはその手を振り払うことはできなかった。


「つづらのことも、好きよ。」


その言葉が、心を揺さぶって、なお離れない。
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