うちは一応高級マンションだからそのまま自宅へではなく、一度オートロックと言う関門を抜けなければならない。
だから普通は伺い先にワンクッション置かなければマンションに入ってこれない。
「うちオートロックやのにどーやって入ってん…」
「ここに住んではるマダムが偶々入っていったからそれに合わせてさーっと」
それって、
「不法侵入やん」
「っさいなー。小学生もようやってるやん」
「高校生がなにやっとんねん」
「なんでもええやん」

そう言うと謙也は俺の腕を引いた。
「なんやねん」
「外行こうや」
「なんでやねん」
「だって日曜日やん」
「ほんま、小学生か?」
「そんなん言うお前は日曜日のお父さんか!?」
「…はぁ、着替えてくるから待っといて」
「わかったー」

そう言い、俺は自室に戻る。
謙也のことだからはしゃぎ回るのがオチだろうと思い動きやすい服を探す。
白のシャツにジャケット、ジーンズにスニーカー。
鞄とか持ってたら邪魔になる気がしたので財布を取り出しポケットに入れる。

「おまたせ」
「んじゃいこか」

こうして謙也と過ごす日曜日が始まった。
ここの地理を知らない謙也に付いて歩き、着いたのは近所のテニスクラブだった。
「ここ道具貸出しもやってて安いねん」
「…何で俺の知らんこと知ってんねん」
一応三年住んでんねんぞ。
「ネットなめんな。光に調べて貰ってん」
光…あぁ、四天宝寺の天才君って、
「自分で調べろや」
「まぁ、何でもえーやん。それより侑士、勝負しーひん?」
「勝負?」
勝負と言われて思わず反応する。
「お互いウェアとか無いから3ゲーム先取。勝った方が昼飯驕り」
時計を見ると昼前。ゲームが終わった頃には丁度いい時間だった。
「乗った」
「よっしゃ」





そんなノリで忍足家従兄弟対決が始まった。
これと言った大技は無いが、どんなにコーナーギリギリ狙っても持ち前の俊足でボールに食らい付いてくる。
(まぁ、1パターン戦法やけどな)
向こうの考えてる事なんて簡単に分かる。
(謙也なら次左に出るな)
想像通りにボールが帰ってくる。
「これで、終いや!!」
3-2で俺が勝った。
「二日酔いに負けてどーすんねん」
ハンっと鼻で笑う。
「っさいなー!うわーめっちゃ悔しいッ!!」
「速さだけやとあかんで。ちゃんとコース考えて打ちや」
「そんなん光が全部やってくれてたからなぁー…」
流石天才、と言った所か。
(まぁ、謙也が走ってくれるから財前君も上手くできんねんやろな)
そこは俺と岳人と一緒か。
「んで、昼飯どこで食う?」
「せやなー…近所に何かあるん?」
謙也に訪ねられ携帯のナビ機能を使う。
「あっ、めっちゃ良いとこあった。行くで」
借りた道具を返し、俺達は目的地へと向かった。



んで、何で買い物してんねん!?」
「まぁえーやん」
今いるのはマンションの近くにあるスーパー。
「今日日曜市やから野菜とか安いねん」
そう言いながら俺は目の前にあったキャベツを手にとる。
「侑士…まさか、これ買わせる気ちゃうよな…」
無理矢理カゴを持たされている謙也が言った。
「え、そのつもりやけど?」
「お前なぁ!!」
カゴを下に置き謙也はキレた。
「お客様、店内で叫ばないで下さい」
パート店員が俺らに向かって言った。口調は柔らかだが表情には明らかに怒りが出ていた。
「高校生になってまで怒られるとか」
「お前のせいやろ!」
「はいはい。とりあえず謙也は荷物持っといて」
「……ッ!!」
言われるがまま謙也はさっき下に置いたカゴを持った。
「野菜は買ったな…後は、豚バラと、あっ、牛乳切れてたな」
「俺も割と庶民派やけどお前、ほんま庶民になったな」
「一人暮らししてるとな」
本間はコイツに買うもん全部取りに行かせたいねんけど、育ちが良い坊っちゃんやから肉の種類とか全然理解してない。
俺も実際はそうやったけど、こっちで一人暮らし始めてから庶民派になってしまった。
味覚とかは育ちが良い分味にうるさかったりするが、買い物に対する感覚等は完全に庶民のものとなってしまった。
(散々とかもうできひんしな…)



その後、他の材料などを買いレジで精算して(金は勿論謙也持ち)無事買い物は終了した。

「さて、帰るか」
袋詰めした荷物を持つ。安売り、驕りと言う良いことだらけで欲張って買った分いつもより重い。
「かせ、持ったるから」
そう言うと謙也は二つあるうちの重たい方の荷物を俺からとった。
「ふぅん…えーとこあるやん」
そう言いながら俺は残った軽い方の荷物を持つ。
「一応な」
そう言った謙也は顔には出ていないが少し照れていた。
「んじゃ、行くか」
「おう」
そう言い俺らはスーパーを出てマンションへと戻った。
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