「あの、これ…後で読んでください!!」
そう言われ二年の子に手紙を渡された。その子は委員会が一緒でよく私に話しかけてくる子だった。
封筒を開け手紙を読む。
(あなたの事が好きです。なので放課「後、裏庭に来てください…?」
後ろから聞き覚えのある声がした。
「丸井君!?」
そう言うと「ハロー」と言いながら手を振っていた。
「なに後ろから読んでるんですか!?」
咄嗟に手紙を隠す。
「いやさー、何か面白そうなもん持ってんなーって思って」
ヒヒヒっと笑いながら丸井君は言う。
「んで、どーすんの?さっきの子、普通に可愛かったじゃん」
「ですが…」
手紙を読んだ後何とも言えないもやもやとした感情が残った。確かに彼女とは普通に仲が良いが、そう言った感情は一切抱いていない。
(それに、)
私には…
「てかリアルなラブレターの現場始めて見たわ」
「私もですよ」
そんな会話をしながら教室へ向かった。



その日の授業中、何となく集中出来なかった。
(どうしましょう…)
今朝貰った手紙を弄りながら考える。確かに彼女は普通に可愛らしく、要領も良い。それこそ私には勿体無いぐらいだ。
ただ、私には既に「好きな人」がいる。
(まさか、)
まさか仁王君の事を好きになるとは。
私だって当然驚いた。同姓を好きになるなんてイレギュラーな事が自分に起こるなんて思っていなかった。過去何度か普通に女性を好きになっている。
ただ妙に納得したのだ。今まで好きになった相手の中で一番好きになった相手が仁王君だった。
以前、気持ちを伝えず曖昧なまま話を終わらせ、苦い想いをしたことがある。だから、引かれても構わないからいつかは素直に自分の気持ちを伝えようと思う。
(まぁ、仁王君の事だから「ワシも好いとぅよ」とか適当に返して来るでしょうがね)
気が付くと授業が終わっていた。



荷物をまとめて教室を出る。目的地は裏庭だ。
(あ)
裏庭に行くと既に彼女がいた。
「あっ…来てくれたんですね」
笑顔で彼女はそう言った。
「すいません、待たせてしまって」
女性を待たせるのは私のポリシーに反する。
「いいえ!!本当にありがとうございます」
顔を真っ赤にしながら彼女は言う。
(本当に可愛らしい人だな…)
こんな可愛い子に自分に好きと言って貰えるなんて、何て幸福者なんだろう。そしてそれを断る私は何と言う人間なんだろう。

「あの、私…先輩のことが、好きです」

「好き」と彼女に言われたら少しは気持ちが揺らぐだろうか?そんな事を少し思ったが何もなく、それどころか、自分が仁王君に抱いている感情が確信に近づいた。
「ごめんなさい。私、他に好きな人がいるんです」
「あっ…そうですか…」
彼女は切なそうに笑った。
「どんな方なんですか?」
「そうですね、顔は良いとして、性格はいい加減だし…」

勉強ができる割には頭も悪いし、
人の言うことも聞かないし、
時間にルーズだし、
自由人だし、

それでも、

「それでも、その人の悪い部分も含めて愛せると思った人です」

「そうですか」
そういうと彼女は笑った。
「すいません、こんなこと言ってしまって。それに、「いいですよ、全然!!それに来てもらえただけで本当に嬉しかったです」
謝った私に彼女は笑いながら言った。
「最後に、握手してもらっていいですか?」
そう言うと彼女は手を出してきた。
「いいですよ」
そう言い私は彼女と握手した。すると彼女は嬉しそうに笑い「さよなら」と言い去って行った。



彼女が去って行った後、自然と仁王君に会いたいと思った。
仁王君に会いたい。
仁王君に会って気持ちを伝えたい。
(彼は今どこにいるんだろう…?)
咄嗟に携帯を取り出し電話をかける。
『只今留守にしています…』
繋がったのは仁王君ではなく、無機質なガイドアナウンスの留守電だった。

「仁王君…?」



その日を境に、仁王君を見なくなった。

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