「そーいや知ってる?」
昼休み。ブン太と昼食を摂っていた時、ふと言われた。
「なんじゃ?」
「今日の放課後、柳生コクられるみたいだぜ」
食べている菓子パンを飲み込んで言った。
「まじか?」
思わず聞いた。
「おぉー、マジマジ。今日朝柳生と二年の子にラブレター貰っててさ。それで中に放課後裏庭に来てくださいって書いてたんだよ」
「朝、柳生がいて後ろから読んだんだよ」と言うとブン太は菓子パンの残りを一口で食べた。
「え、それ、「丸井君、仁王君、お菓子持ってきたんだけど食べるー?」
クラスの女子に言葉を遮られた。
「おっ、マジ!?いるー!!」
その後、ブン太と二人で大量のお菓子を貰い、一旦その話は置いておいた。

その後の授業中ずっとその事を考えていた。
(迂闊じゃったのぅ…)
D1だからと言う微妙な理由で安心していた。でもそれはただの思い上がりで結局のところ片想いだった。
(それに、)
よう考えてみたら俺と柳生は男同士。普通に考えてあり得ない。ワシが勝手に好いとるだけで柳生は女子の方が好きじゃろう。
と言うか男同士とかそれ以前に俺の事を好いとるなんておかしい。「仁王雅治」を愛せる人間なんていないじゃろ。
(こんな人間じゃしの)
自分自身を改めて嫌いになる。
こんな感情抱かなきゃよかった。男に生まれなきゃよかった。
女子に生まれていたら柳生は俺の事好いてくれたんじゃろか?
(俺は一体何がしたいんじゃろ)

授業が終わり荷物をまとめる。
「にしても、今日から考査一週間前かよー…」
溜め息をつきながらブン太が言った。
「そーいやそうじゃったの」
教室を出るとき「バイバーイ」とクラスメイトに言われたので手を振る。
「今回は幸村君に助けてもらおうかなー」
「アホ。今回“も”じゃろ。それに、幸村の病室には誰がいると思う?」
「げ!!真田いるじゃん!!」
「そーいやそーだった!!」と言うとブン太は本気で悩み出した。
(そんな事より柳生はどーしとるんじゃろ…)
ふとそんなこと思う自分の女々しさが腹立たしかった。
「まぁ…うん、とりま病室行ってくるわー」
そう言うブン太に手を振り、下足室で別れた。

そんな時だった。
(あ)
下足室を出て少しのところに柳生がいた。二年の女子と裏庭に。
(見たくない)
だがそう思えば思うほど見入ってしまう。
(“ア”“ノ” “ワ”“タ”“シ”)
そう遠くない距離。思わず彼女の口の動きを読んでしまう。
(“セ”“ン”“パ”“イ”“ノ”“コ”“ト”“ガ”)

「好きです」

読み取った口の動きをそのまま発する。
彼女はハッキリと、自分の気持ちを柳生に伝えたのだ。
(うそ…じゃろ?)
裏庭から目線を外す。どうしたらいいか分からないからどうしようも出来ない。
(確か、あの二年)
柳生と同じ委員会の子で一緒にいるところをよく見た。
(そんなのどーでもいい)
見たくない。
(いやだ)
知りたくない。
気付いたらその場を逃げるように走り去っていた。



校門を出てその場でしゃがみ込む。
(それにしても普通に可愛い子じゃったのぅ…)
黒髪ストレートで顔立ちも整っていて清楚系で、柳生と並んだらお似合いと言った感じだった。それに比べて自分は、派手髪でだらしなく、柳生とは真逆といった感じで、俺なんかよりあの子との方が良いとそんな当たり前の事を思ってしまう。
(付き合うんじゃろか?)
あんな可愛い子に告白されて付き合わない奴がいるか?

柳生なんて、
顔だってそこそこ、
勉強できるって言っても天才ってワケじゃ無いし、
テニスだってそうだし、
それに、紳士と言われておっても実際性格悪いし、
口うるさいし、
細かいし、
あんな可愛い子、勿体ない。
だから、

だから、



「だから…俺にくれよ」

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