「こんにちは、沢田綱吉!」
「……こんにちは」
華やかな僕の挨拶とうって変わって、目の前の彼は覇気の無い挨拶だった。
「酷いですねぇ。折角会いに来たと言うのに」
「……」
彼がこんな顔の理由も分かる。
だって場所は彼の、沢田綱吉の家の前だからだ。
それだけではない。時間は既に夜八時を回っている。
「まぁいいでしょう。折角の土曜日なんですから、」
そう言い、僕は彼の手を引く。
「え、ちょ、骸!?」
突然の事で彼は動揺する。
「デートしましょ、沢田綱吉」
「お前さ、ホント勝手だよな……」
呆れた声で彼は呟く。
最初は抵抗していたが、それが無駄だと言うことを理解したのか、成されるがまま彼は僕に大人しく手を引かれていた。
にしても寒いな、と彼は呟く。
それもそうだろう。暦の上では春とは言え、まだ3月。冬の寒さが身に染みる。
ふと、繋いだ手を見る。
彼の温かい手と違って、僕の手はとても冷たい。真冬に野晒しにされていた状態に近いものがある。
「手、離しましょうか?」
「え?」
突然の言葉に彼は腑抜けた返事をした。
「寒いんでしょ?だって、」
僕の手は君から体温を奪ってしまう。
春風と言うには寒すぎる風が吹く。
(ほら、)
「いや別に良いよ。だって骸も寒いんだろ」
そう言うと彼は僕の両手を取り自分の頬に当てた。
うわ、つめたっ、と彼は言う。
「俺さ幼児体温だから、」
そう言う彼を抱き締める。
「え!?」
「……ホント、馬鹿ですね」
彼と契約したいだけだった。
彼の身体を乗っ取ってマフィアを殲滅してやろうと思った。
でも今は、話したい。
会いたい。
触れたい。
抱き締めたい。
彼を求めていた。
(嗚呼、)
どうやら君には依存性があるらしい。