マグカップ彼氏
私、みょうじなまえのモットーは、「小さいは可愛い。可愛いは正義」…例外は勿論あるが、これが基本スタンス。
だけど…これはどうかと…
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「やっと来たな、なまえ!」
『……』
部室に入ったら、真っ白い巨大マグカップの中に部長兼私の彼氏の白石蔵之介がいた。
「小さいもの好きのなまえの為に開発した…その名も、“白石カップエクスタシー”!どや、完璧やろ!?」
『……』
どや顔でバッチリポーズまで決める自分の彼氏に、何て言おうか…
私が好きなのは、あくまで小さいものであって…これは根本的に間違ってる。そのマグカップはどうやってここに入れたの?
「一個欲しいと思わへん?」
『…いらない』
「今ならなんと特別価格!」
え、なに、商品?
この人は彼女にこの状態の彼氏を買わせる気か。そこはタダで譲渡…いや、やめよう。
考えるのが辛い…というかもう、皆来る頃だし、ジャグの準備しよう。
『買わない。ジャグの準備始めるから、蔵も…』
準備して、という言葉は、部室の扉を元気よく開けてやってきた金ちゃんに防がれた。
「来たでー!…って、白石は何してるん?」
『…あのマグカップに入った状態で、私に買えって言うの』
「せや。小さいもの好きのなまえの為に…」
『いらない努力をありがとう』
「っ、この反応!酷いと思わへん?」
金ちゃんに同意を求める蔵。酷いのは、今の蔵の状態だから。
さっきから、へーやら、ほーやらいいながらマグカップのまわりをキョロキョロ見てた金ちゃんがこちらを向いて言った。
「なまえ、こん中に入っとるの、わいのやったらどないー?」
『え、』
「買う?」
『かっ…ちゃう、かも…』
「よっしゃー!!白石に勝ったでー!!」
「何で!?ちょぉ、なまえ!金太郎に甘いんちゃうか!?」
キャッキャ喜ぶ金ちゃんをよそに、私の肩を掴んで離さない蔵。
ジャグの準備しなきゃなのに…
金ちゃんに買うと言ったのは、あの捨てられた仔犬のような目で訴えかけられたからだ。中一男子って、こんなに可愛いのだろうか…と思うほど。それ以前に…
「金ちゃんはもう、存在自体が可愛いから、つい愛でたくなるの!」
この意見を理解してくれる人は、絶対いるはず。
キッパリ断言した私にショックを受けたのか、俯く蔵。
…え、私の金ちゃん好きは、付き合う前から知っているし、それはないか。けれど、中々頭を上げない蔵に、少し罪悪感があった。
「オレやって…オレやってなまえに愛でてもらいたいねん!」
まさかの一言に、固まる。
「いっつもなまえはクールで、小さいもん見た時は、むっちゃええ顔して…オレはなまえ彼氏やのに、金ちゃんにばっか構いよって…」
どんどん尻すぼみになる声量。
この人は、金ちゃんに嫉妬してた?
未だ俯く蔵に、胸がキュンと鳴ったのは、きっと気のせいではないだろう。
『別に…蔵は今のままでいいじゃない。私、今の蔵が好きだし…』
蔵の頭を撫でる。いつもは自分よりも上にあるから出来ないけれど、気をつけないと、病み付きになりそうだ。
ミルクティー色の髪に指を通せば、サラサラとしていて、とても気持ちいい。
『わざわざ私の好みになろうとしなくても…充分蔵はかっこ良くて可愛い。私の好きな蔵だよ』
言い終わった瞬間に顔を上げた蔵に驚き、腕を引っ込めようとするも、その腕を掴まれそのまま引き寄せられた。
その後に額に柔らかい感触とリップ音が響く。
「なまえがデレた!オレも…いつもツンデレななまえが好きやっ!」
『っ、蔵のバカ!』
金ちゃんの前で何してんの!と怒った私は悪くない。
マグカップ彼氏
こんな一面が知れるなら、アリかもしれない
財前(バカップルは爆発してまえ)
千歳(トトロの入ったマグカップなら欲しか…)
ユウジ(俺らもバカップルやんな、小春〜)
小春(んもー、ユウくんったら〜)
謙也(白石が昨日は徹夜した言うとったけど、アレ作っとったちゅー訳か…アホやろ)
小石川(……部活しよーや)
なまえ(っ!?(皆に見られた!?!?))
End
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マカ様のイラストサイト「闇よ中で光る宝石」のイラストに一目惚れし、勝手に小説を作ってしまった所存デス、はい…←
2014.09.08
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[ mokuji]
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