熱中症にはご注意を
ジリジリと日光が照り付ける中に響く、テニスボールの音。
セミの鳴き声を掻き消すように聞こえる音に、マネ業に励むなまえは幾分か暑さを誤魔化せている気がしていた。
しかし、体力を削られやすい夏場。普段以上に小まめに休憩を取り入れた部長兼彼氏の白石の一言。
「なあ、なまえ。目眩がして、吐きたなる…この症状って、何やと思う?」
そこそこ重さのあるボトルを振っていたなまえの手が一瞬にして止まったことは、言うまでもないだろう。
『……それって、熱中症…じゃない?』
「すまん、一文字ずつ、ゆっくりゆうて?」
『なんで?』
「ええから」
彼氏の意図することがよく分からないなまえだが、素直に従った。
『ねっ、ちゅー、しょー』
言い終わってすぐ、白石の顔がゆっくり近づく。
余計ワケが分からなくなったなまえは反射的に、持っていたドリンクのボトルでガードに入った。
『ちょ、何してるの、蔵!?』
「え、だって今…
ねぇ、チューしよう?
って言うたやん?」
まさかのギャグに、固まるなまえ。
「そんな顔せんでも…」
『いや、だって…』
ふぅと一つため息をついたなまえに、呆れられてしまったかと、少しアタフタ焦り始めた白石。
つまらん彼氏やと思われてもうたんかな…
こないな彼氏、いらんとか、考えとったら…オレ…
と、負の感情に取り込まれかけたその時。
『安心した…』
「え?」
『だって熱中症じゃないんでしょ?人一倍健康に気を遣ってる蔵がそんなこと言うから、心配しちゃった…』
よかった、と笑うなまえに見惚れながら、何かがブツンと切れる音を、白石は頭の奥で響くのを感じた。
なまえの手からボトルを引ったくると、横に置く。
あれ、飲まないのかな?
と視線をボトルに向けて呑気に考えていたなまえを、夏特有の暖かさとは別の温もりが包み込んだ。
「すまん、なまえ。やっぱガマン出来へん…」
『え、ちょ、んんっ!!』
この時の白石。少しばかり体温が高かったそうな、そうでもなかったそうな……。
それを知るのは、なまえのみであろう。
熱中症にはご注意を。
(部長ら、余計暑くなるんでやめてもろてもええですか?)
(アツアツやね〜♪)
(小春ぅ、オレらもアツアツやんなぁ〜♪)
(いや、やめろや;;ホンマ暑すぎやっちゅー話や…)
End
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外に出たくないけど、出ねばならない…。
暑くて脳天ピンチなのは私だけ?
2013.08.23
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