芥川慈郎の我儘
何様オレ様跡部様の命により、毎度ジロちゃんを捜索する日々…。
私がマネとして引き抜かれる前は、カバちゃんの仕事だったらしいけど、彼だって大切な選手だというのに…あの泣きぼくろ好い加減にしろ。
なんて、今いないアイツに悪態をついたところで、この現状は変わらないんだけどね…
「ねぇなまえちゃん…」
『イヤ』
「…まだ何も言ってないC〜」
例え上半身だけ起こしてジャージの裾を引っ張られ、無駄に可愛い上目遣いで、ほんと男の子とは思えないあざとさを全面的に出されているとしても…
ここで折れる訳にはいかない。
「もう少し寝たいんだけど…」
『ダメです。もうアップ終わっちゃうよ?』
「なまえちゃん、膝枕して!」
『ダメ』
「じゃあ抱き枕になって!」
『…お願い話を聞いて』
毎回ジロちゃんは日当たり抜群なところで寝ている。
程よい環境+ジロちゃんの可愛さに、つい頷きたくなる。
だが、ミイラ取りがミイラになる訳にはいかない…
そう、ここは心を鬼にしていかなくては!
『ジロちゃん、我儘言わないでよ…』
「んー、じゃあ、オレのお願い一個叶えて?」
『…お願い?』
「そしたらスグに行く!」
我儘もお願いも変わらないような気がするんだけどな。
そうは思うも、ついその提案に傾くわけで…
『…枕にはならないよ?』
「わかってる!」
『……わかった、いいよ』
「ほんとに!?じゃあ…」
まるで捨てられた子犬のような瞳に完敗した。
キラキラした目でお願いを考えているジロちゃん。うん、可愛いって正義。
あーでもない、こーでもないと唸っていたが、何かいいお願いが閃いたようだ。ウキウキしたようなジロちゃんに、こっちも頬が緩みそうになる。
何だろう、お願いって…一緒に帰りは寄り道しようとかかな?
それとも、ジュース奢って、とか?
なんて予想していたけれど、相手はジロちゃんだということを失念していた。
「チューして?」
『…ぇ、』
いつの間にか、しゃがんでいたはずの私は空を見上げていて…
あれ?
ジロちゃんを見下ろしていたはずなのに…見上げている?
顎をジロちゃんに捉えられていて、妙に色っぽい顔が近付いてきて…
『だ、ダメ!絶対!!』
「A〜!いいっていったのなまえちゃんでしょ?」
『そういうのは、恋人になってないと!』
ジロちゃんの顎と肩を押して、なんとか距離をとる。
危やうく、流れに任せてとんでもないことをするところだった…
ジロちゃんは嫌いじゃないが…だからこそ、そういうことはちゃんとした段階を踏んでから…って、何考えてるの私は!
口を尖らせるジロちゃんだったけど、少し離れてくれた。
「ふーん。じゃあ仕方ないか…」
やっと理解してくれたらしいジロちゃんに、ホッとしたのも束の間…部活に行こうという前に、とんでもない爆弾をくらった。
「なら、オレと恋人になって!」
『……うん?』
離れたはずの距離は、一気にゼロへ…
やっぱり、お願いという名の我儘だった。
(うんって言ったね?では早速…)
(え、待って、そういう意味で言ったんじゃ…っ、んぅ)
(…は、っ…なまえちゃんあま…)
End
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ジロちゃん、A・ZA・TO・I☆←
2014.08.30
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