夜空に咲いた
「ん〜…なんかうるさいC〜…」
いつもなら何にも気にならないけど、何故か騒がしい声で目が覚めた。ゆっくり起き上がって、伸びを一つに欠伸一つ。
目をショボショボさせながらも、声のする方を向くと……
「…跡部と…なまえちゃん?」
「なんやジロー、目ぇ覚ましたんか?」
「……ねえ、アレなに?」
携帯片手に何かを言ってる跡部と、なんとかソレを止めようとしているなまえの姿に、一体何が起こっているのか、全く持って芥川は理解することが出来なかった。
ちょうど自分の方に(逃げて)来た忍足に聞くと、どこか申し訳なさそうに答えた。
「いやな、俺が軽〜い気持ちで、なまえに“夏休みの予定は決めたんか〜?”って聞いたんよ。んで、なまえは、特に予定はないらしいんやけど、花火はしたい言うたんや」
「花火なら俺もやりたEー!」
「まぁ、そうなるわな…せやけど、たまたま話を聞いとった跡部が…
ーー「花火だぁ?なら、俺様が特注で打ち上げ花火を用意してや『ダメーーーッ!!』っ、何でだ!?」
ーー『そういうのじゃなくて、手持ち花火がいいの!!』
ーー「アーン?花火っつたら、打ち上げるもんだろうよ」
ーー『違います〜!手持ちです〜!』
ーー「チッ、ムカつく言い方だな……サッサと用意させるか…」
ーー『だから、ダメーーーッ!!』
ーー「な、おい、離せ!!」
……ちゅー攻防を繰り広げてたんやけど……決着、ついたみたいやな…」
忍足の指差す先には、携帯を掲げるなまえの姿。どうやら、跡部から連絡手段を奪ったようだ。
「おい、てめーら!一度帰宅したら、俺様の家に集合だ!!なまえの要望通りの花火を用意してやる!!」
「早速花火大会かいな…」
「何だ忍足、文句があんのか?」
「あるわけないやろ。……注文はあるで?」
「何だ?」
忍足はニヤリと口角をあげると、なまえの肩に手を置いた。
「なまえは浴衣着て来てな?」
『……本気デスカ、オシタリサン…』
「おん」
『(下駄とか、得意じゃないんだけどな〜…)』
結局、浴衣を着て跡部家へと足を運ぶなまえである。
『うわ……地獄絵図?』
相変わらず大きいよ、跡部ッキンガムめ。やっぱり下駄は慣れないし、おかげで遅刻するし……といろいろ考えながら中庭に通されたなまえは、いままで考えていたことなどすっかり忘れ、思わずつぶやいていた。
主催者である跡部は椅子に座って樺地が火を付けた噴出花火を眺めており、
(鑑賞方法おかしいでしょ…)
忍足はパラシュート花火を打ち上げ、
(珍しい花火なのに…流石跡部財閥…)
ネズミ花火と共に向日が飛び回り、
(逃げてるの?飛び込んでるの?)
鳳と宍戸は線香花火に勤しみ、(ちょ、私のお楽しみ!)
日吉はUFO花火に夢中。
(…チョイスがらしいなぁ…)
とりあえず、全体的に火薬量がおかしい光景である。
「あ、なまえちゃん!」
呆れてものも言えないなまえのもとに、藍色の甚平を纏った芥川が駆け寄る。
もちろん、手には一般的な手持ち花火。
「ほらほら、見て!」
『わ、そんなに振り回したら、危ないよ、ジロちゃん!』
芥川は花火をクルクル回しながらケラケラ笑っている。そんな芥川につられてか、なまえも思わず笑顔がほころぶ。それを、芥川は見逃さなかった。
「A〜、そんなこと言ってるけど、なまえだって楽しいくせに〜」
『あ、……うん、そうだね!すっごく楽しいよ!!』
「っ、」
後ろで氷帝メンバーがする花火の逆光の中で、自分の持っている花火に照らされたなまえの顔に、芥川は息を呑む。
いつもと同じような笑顔。けれど、いつもと違うように、芥川の目にはうつった。
『?どうかした?』
「…なんでもないC〜!それより、コレ消えちゃったから、次のに火を付けよう!」
『?……うん!』
花火みたいな君の笑顔に、
花火みたいに恋をした。
(跡部がライバルなのかな……ま、勝つのは俺だC〜♪)
(ジロちゃん、何か言った?)
(なんにも!ほら、なまえ、『二人で』もっと沢山花火しよう!)
End
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3ヶ月以上サイトを放置していたのは、この私です。
ついこの間、イトコの家で花火をしたのも、この私です。
ちょっとアホな氷帝が書きたかった&いい加減更新したかったため出来た作品。結構爽やかな仕上がりに(笑)
初ジロー(笑)
ありがちな流れだけど、恋に落ちるって、こんな感じ…?
2013.08.15
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[ mokuji]
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