テニス的英語講座 〜赤点回避の道〜
「…という訳なんス、なまえ先輩!先輩だけが頼りで…!」
『……ごめんね、赤也くん。どういう訳なのかな?』
ほぼ半泣きで来た赤也くんの言っていることを理解するのに、少し時間がかかってしまったが、簡単にすると、こういうことらしい。
『つまり、幸村くん達に、見限られた、と…』
「そうなんスよ!」
『えっと、それは…』
どうなんだろう?
***
放課後。
本来なら、テニスコートで部活に勤しむはずなのだが、現在赤也はなまえと教室で向き合うように座っていた。
二人の間には、赤ペンでチェックが入った英語のプリント。
「英語難しい!」
『中二の英語って、不定詞?』
「そう、それとかマジわかんないッス!勉強より部活に行きたいのに…!」
『そっか。じゃあ…』
なまえは一枚の白紙のルーズリーフにスラスラと英文を一つ書くと、赤也に見せる。
『I want to play tennis…私はテニスがしたいです…だね?』
「ッス!」
『じゃあ、将来は有名なテニスプレーヤーになりたい?』
「そうかもッスけど…今は、ブチョー達より強くなりたいってだけかも」
『そっか…I want to be a famous tennis player.私は有名な選手になりたいです…って言ったら、
Practice tennis a lot of to be a famous tennis player.有名なテニス選手になるためにたくさんテニスの練習をしないとだね、って言おうと思ってたの。勿論、幸村くん達に勝つためにもね!」
「そうッスね!チャッチャとプリント終わらせて、次のテスト合格して…速攻で部活に行く!」
『じゃあそのためにはまず、You need a lot of time to study English.英語をたくさん勉強しようか』
「うううっ…やっぱりそうなりますよね…」
グダーッと机に突っ伏すように項垂れる赤也。
クスクスと笑っているなまえに、馬鹿にされていると思い、赤也は抗議しようと顔を上げたのだが、どうやら馬鹿にしている訳ではないらしい。
『赤也くん、気付いてる?』
「え、何がッスか?」
『今の会話で、例文見ても散々わからないって言ってた不定詞の“すること” “するために” “するための”を全部カバーしてるってこと』
「え…あ!」
『こうやって、自分にとって身近なものに置き換えたり、好きなものを例文に取り入れて、覚えていこうね』
「はいっす!やっぱり先輩に頼ってよかった!」
これなら、このプリント全部埋まるんじゃね!?と意気揚々に赤也が問題を解いている間に、なまえはそっと携帯を開く。
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date : 20xx.○.○ 15:54
from : 幸村 精市
sub : (no title)
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連絡ありがとう。
いつもオレ達頼みなところがあるから、少し一人で頑張らせてみようって話だったんだ。
まさかみょうじさんのところへ行くとは思っていなくて。
ウチの赤也が迷惑かけただろう?ごめんね。
ーーーーー END ーーーー
確かに、幸村の言う通りだ。
実際、赤也となまえは、幸村と共通の知り合い…といったところだ。
それでも…と、なまえはメールを打つと、返信をした。
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date : 20xx.○.○ 16:47
from :
sub : re:
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大丈夫だよ。
むしろ、頼ってくれたのが私で嬉しいかな。先輩冥利に尽きるよ!
それに、今の赤也くん、凄く頑張ってるから、いい結果が出ると思うよ。
ーーーーー END ーーーー
一生懸命プリントに向き合う赤也に、なまえは一つクスリと笑った。
テニス的英語講座
後日
(なまえ先輩のおかげで、前回より23点も上がりましたよ!48点!赤点回避ッス!)
(そっか、よかったね…(それでも50点いかない…幸村くん、ゴメンね))
End
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赤点って、確か45点とかだったような…?もっと高いか?
喜んでいいのか、正直微妙な点数。赤点ランカーの赤也にとっては高得点なんだろうな…
2015.8.28
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[ mokuji]
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