詐欺師の勘
つい先日のこと、それはまさに青天の霹靂じゃった。
丸井が購買部に駆け込んでしまい、暇でしょうがなかったオレは何となく、柳生のクラスに行った。
クラスの後ろ側の扉から声をかけようとした時じゃった…
『きゃっ、』
「おっと、」
誰か(しかも100%女子)にぶつかった。
これは面倒なことになると思ったオレは、直ぐに謝った。自慢じゃないが、オレの勘は当たるからのぅ
「すまんかった。怪我とかしとらんか?」
『はい、大丈夫です。私こそごめんなさい…前方不注意でした』
パッと上がった顔に思わず息をのんだ。その瞬間、心臓がバクバクと鳴り出す。
…ウソじゃろ?
オレが…
「仁王くん、君という人は…」
「、や、ぎゅ…」
「見てましたよ。もう少し勢いがあったなら、危うくなまえさんが転ぶところでしたよ…何事もなくてよかったですが、もしなまえさんに何かあったら…」
『柳生くん、ですが、私こそ前を見てませんでしたし…』
割って入ってきた柳生に、ホッとしたような、モヤモヤするような、微妙な気持ちになった。
まあ、この場合は助かったというべきか…
「なまえさんがよくても、私はよくありません。仁王くんは周りをよく見ないと…」
『柳生くん!本当に大丈夫ですから、仁王、くん…を許してあげてください!!』
落ち度があったのはむしろ私の方ですし!という彼女。
「何でオレの名前を知って…」
聞こうとして止めた。どうせこの子もテニス部関係で…
『え、だって今、柳生くんがそう呼んでいたから…』
…という訳ではなかった。
「彼女、みょうじなまえさんはこの間転校してきたばかりなんですよ。なまえさん、彼は仁王雅治くん。私と同じテニス部でダブルスのパートナーなんです」
『そうなんですか!よろしくお願いしますね、仁王くん!』
「よ、よろしく頼むぜよ」
『"ぜよ"って、どこ出身なんですか?』
「プリッ」
『ふふふ、秘密ってことなんですね』
笑うなまえ(って呼ぶ訳にはいけないが勝手に呼ぶ)の顔をいつまでも見ていたかったが、無情にも学校のチャイムがそれを良しとはしなかった。
その日以降、なまえとオレは廊下で会えば挨拶を取り交わすようになった。でも、それだけ。
しかも、廊下でなまえを見かけても、隣に柳生がいれば思わずUターン。自分の持つ黒くてドロっとした感情を隠せるか珍しくも不安にかられたからだ。
「本当に、面倒なことになったのぅ」
詐欺師の勘
(こんなとこで発揮されても、のぅ…)
End
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こんな仁王もあり?
2015.2.27
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