それはね、恋だよ
『…で、ガロンゾには私とエシオも行くから』
「りょーかい。じゃ、明日ね」
『うん、おやすみヘルナル』
「おやすみナマエちゃん」
自室へと行くナマエの背が見えなくなるまで手を振る。
明日の依頼確認も終了し、ヘルナルも部屋へ行こうと踵を返す…と、ほぼ真後ろに一人の男がいた。
「ぅわ、ゼヘク!びっくりしたじゃないか!」
「さっきあいつと何を話していた?」
「(スルーされた…)あいつって?」
「………だ」
「ん?誰?」
「……ナマエ、だ」
「ナマエちゃん?」
ヘルナルに頷く男、ゼヘクは、何故か眉間にシワを寄せていた。
いつも呪いの痛みに耐える姿を見ているが、それとは違う痛みに悩まされているかのようだ。
いや、本当に呪いのは別の病と戦っているのではないだろうか……と、ヘルナルなニヤけそうになる口元に力を入れる。
「何でそんな事を聞くんだい?」
「……わからないんだ」
「……え」
「ただ、聞かなくちゃならない気がして…気付いたら質問していた」
「ほ、本当にわからないの?」
「ああ」
ちょっとからかおうとした結果、まさかの無自覚だった…?
それとも、本当に何とも思ってはいない、とか…?
ポカンとしていたヘルナルだったが、咳払いを一つすると、ゼヘクに質問をぶつけてみた。
「じゃあ、ナマエちゃんが目の前にいたら、いつもどんな感じがする?」
「そう、だな……あいつを前にすると、決まって胸がむず痒くなる。
あいつが誰かと話しているのを見ると、胸がキリキリと痛みだす。
いつも、必ず。だからこれは、何かの呪いだろうか。
そう思って、出来る限り避けているはずなのに、何時の間にかあいつを見ていたり…
それに気付いてまた胸が痛みだす。
いつもこれの繰り返しだ」
「……それって、百人を超える団員のうち、ナマエちゃんだけにそうなの?」
「ああ…」
「じゃあ答えは一つだね」
「答え?呪いか?」
「まぁ、ある意味呪いだよねぇ…ゼヘクがオレにナマエちゃんの事を聞いたのも、ゼヘクがナマエちゃんだけにそうなのも」
「何だと言うんだ、一体…」
ここまできて、未だ自ら答えを出せないゼヘクに、ヘルナルは苦笑いをする。
確か、バレンタインは師匠に変な物を渡されるとかで、まともにチョコなんか貰った事が無いと言っていたし…こういう事に対して、少し疎いのかもしれない。
そう結論付けたヘルナルは、ゼヘクに答えを教えることに決めた。
「それはね、恋だよ」
ゼヘクは目を見開き、少し固まったものの、くるりと後ろを向いた。
微かに赤い耳に、ヘルナルは笑いを堪える。
「とりあえず…」
「うん?」
「……師匠には黙っていようと思う」
「……コルワちゃんにもバレ無いようにした方がいいかもよ」
ヘルナルのアドバイス(?)に、ひとつ頷くと、ゼヘクはその場を立ち去った。
呪いとは別に、新たな病との戦いが始まった夜だった。
End
ーーーーーーー
ガロンゾに風SRパーティでシルフィードベル狩りに行こうぜ!って話しだよゼヘク!
でも、何でこの二人だったのか、私にもわからない←
ガウェインとかも、こういう(無自覚、言われて気付く)タイプかも←
タイトルは「確かに恋だった」様よりお借りしました。
2017.6.27
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[ mokuji]
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