転生してから事故った(異世界に飛ばされた)件
『いったぁ…』
強打したお尻をさすりながら、辺りを見渡す。人っ子一人いない森の中。どうやら、私だけ遺跡から弾き出されたようだ。解せぬ。
そもそも、仕掛けてある罠全てにかかりに行くカルバと同じチームに振り分けられた時点で、私の運は無かったに違いない。本当、よく同行していたマリーには頭が上がらないよ…。
だからって、何かの拍子に床が斜めになって、滑り台の要領でたどり着いた先が外だなんて…戻るのが面倒過ぎる。
『問題は…私、どこから出てきたんだろ…』
罠には恐らく、隠蔽系の魔法が施されてあるのだろう。出てきたはずの出口が、一切見当たらない。
『諦めて遺跡を目指そう…この、双六で《振り出しに戻る》のマスに止まった感半端ないのがイヤ…はぁ…』
とりあえず、グラン達と合流すべく、歩き始めた。
***
『え…?』
目の前の光景に、驚きを隠せない。
そこには、村が一つあった。
調査依頼をしてきた村に逆戻りしてしまったのかと思いきや、そうではなかった。(一瞬、自分は意外と恐ろしいレベルの方向音痴なのかとも思ったので、その点については安心している。)
調査依頼をしてきた村は、一般的な村だった。ヒューマンの割合が多く、次いでエルーン、ドラフ、ハーヴィンといった感じだった。
だが、目の前の村の住人は…
『ヒューマンと…狼と…
ゴブリン…?』
え、何このウィルが狂喜乱舞しそうな村は。
確かに、魔物が大人しい島とかはあった。人間と魔物との関係に折り合いを付けている村も知っている。
でも、まさか…
「あのぉ…」
『っ、!?』
声をかけてきた主が視界に入った瞬間、手に銃をとったのは、ほとんど無意識のことだった。
大人しい、どう見ても人に危害を与えるようには見えない…ゴブリン。
騎空団にはミニゴブだっている。
だが、それより前に、ゴブリンを悪鬼と呼び、討ち滅ぼさんとする友がいて…
銃を握る手に力が篭った。この瞬間、頭がやっと、銃の存在を理解させた。そして…
『っ、な!…何…!?』
銃の持つ手はもちろん、身体全体が金縛りにあった。……否。鋭い糸のようなものに絡め取られている。
『っ、あなたの仕業…?』
「ち、違うッス!誤解ッスよー!」
「俺だ」
近付いてきたのは、青い髪のヒューマンの青年…
『え…つの?…オ、ニ?』
未だに出会ったことのない種族の内の一人であった。
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2018.2.5
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