たとえ望まれなくとも




※クロスフェイトエピ「先生VS真夜中の不審者」捏造夢
※エルモートvsアルベール…?




『あれ、エルモート?』

「あァ?お前、まだ起きてたのかよ」

『ううん、目が覚めちゃっただけ…』

「そォかよ」



淡いランプの光で照らされている宿のロビー。


何をするでもなく座っていたナマエだが、階下に降りてきた気配を感じ振り返って見れば、武器とランプを携えるエルモートだった。



「ンだよ」

『もしかして、今から外に行くつもり?』

「だったらどうした」



めんどくさいのに捕まったと言いたげな表情で溜息をつくエルモートに、ナマエの眉間にシワが寄るのは仕方のないことだろう。



『あのねぇ…いくら夜の散歩が趣味だからって、夜には魔物が出るって、言われ、て……

もしかして一人で討伐に…?』

「……ただの散歩だ…」




辿り着いた結論にエルモートを見やれば、綺麗に目を逸らされた。

ナマエの予想ーーエルモート一人で魔物討伐に行くーーは見事的中していた。



『なら、私も行きた…

「来るな。さっさと寝ろ」

…っ、私だって騎空士なのに』

「俺はただ、燃やしたいモンを燃やしに行くだけだ」



そう言い残すと、エルモートは何事もなかったかのようにさっさと出て行った。


その背中を眺めていたが、ラウンジの椅子に座り直し、そのままテーブルに突っ伏した。


あれは拒絶だ。あんな風に言われてしまっては、断ることだってできない。

溜息を付いたとき、背後から再び扉が開閉する音が響いた。


瞬間、エルモートが戻ってきたのかと思い振り返ってみたものの、誰もいない。

その代わり、扉横の窓から見えた小さな背中。あれは…




「おい」

『ひゃぁ!?』

「すまない、驚かせてしまったか」

『あ、アルベール』



別のことに意識を向けていたために、アルベールの気配に全く気付かなかったとはいえ、背後からの声に必要以上に驚いてしまった気がする。

申し訳なさそうに見てくるアルベールに、罪悪感が湧く。



『アルベールも目が覚めたの?』

「あれだけ人の気配が動けば、気になるさ」

『ごめん』

「いや、ナマエのせいでは無いだろう」

『そう、かな…


あの、えっと…もう寝ちゃう?』

「……いや、もう少し起きているよ」

『じゃあ、ちょっと待ってて!』



スッと椅子から降りてテーブルの逆側に回り込むと、しゃがんで何やら作業を始めたナマエに、アルベールは首を傾げる。

立ち上がったナマエの手には、グラスが二つと黒いビン…おそらく中身は酵露だろう。



『晩酌、しよう?』

「酒は苦手なんじゃないのか?」

『……それは、ほら…気にしないで』

「ナマエ?」



受付の反対側の奥には、カウンター席があり、宿泊客が飲み物(主にお酒)を楽しむことが出来る仕様になっているのだ。


訝しむアルベールの背をグイグイ押しながら、先程まで座っていた席に戻る。



『はい、どうぞ』



勢いのままに座らされ、勢いのままにグラスを渡され、これまた勢いのままに乾杯をした。

本来音を鳴らすものではないが、チンと響いたグラスの音を満足気に聞くナマエに呆れた顔をしつつも、拒む理由など無くて。


アルベールはスルスルとグラスを傾けていった。


アルベールがグラスを傾ける度に、淡いランプの光がグラスの中身を輝かせている。その光は屈折し、アルベールの金髪に色付いた天使の輪を作り上げているようにナマエには見えた。

様になってるし、なにより美味しそうに飲むよなぁ…

じぃっと見つめるナマエに、居心地悪い顔を見せたのはたった一瞬だけで。何をいうでも無く、アルベールは淡々とお酒を飲んでいった。言及してこないナマエに、無理矢理追求する必要も無いだろうと判断したのだ。


しばらくアルベールを観察していた視線を、乾杯したきり一口しか飲んでいなかったグラスにうつす。



『私って、やっぱり弱いのかな…』

「どうした突然」

『いや、ね…たしかに、他の団員と比べたら私は弱いよ?十天衆の一人のカトルはともかくとして、ハーヴィンでありながらリュミエール聖騎士団団長を務めるシャルロッテとか…雷迅卿と謳われるあなたとか…他にも沢山、圧倒的に強い人がいるのは分かってる。けど、けどね?私だって、騎空士なんだよ?それなのに、』


ぽつり、ぽつり。

纏まりの無い言葉が落ちて行く。それを止めたのはエルーンの彼の言葉…

ーー来るな。



『……』



再び訪れた沈黙。

自分で作り出したというのに、どこかいたたまれなくなったナマエは、全て無かったことにしようと、笑顔を浮かべた。



『ごめんアルベール、何でもない。今の忘れ…』

「俺は、ナマエを弱いと思ったことは無い」

『え』



咄嗟にアルベールの方を向くと、強い視線と絡み合う。

ランプの淡い光よりも強い、熱いものを帯びたような光が、瞳の中にあるようで…



「それに、他の団員も…ナマエを弱いとは言わない。ただ…《か弱い》と思うヤツもいるかもしれない…」

『《弱い》も《か弱い》も同じじゃないの?頼りないってことでしょ?』

「いや…違う。実際に実力として《弱い》のと、《か弱い》と感じてしまう存在には、大きな差が…いや、差という言葉は語弊か…」

『?』



今度はアルベールの方が、じっとナマエを見つめる。


アルベールが何を言いたいのか、いまいちナマエには分からない。


ただ、言葉を考えて選ぼうとする姿は、ナマエのために…ナマエのためだけにしていることは確かで。

更に、アルベールの頭の中は今、自分のことだけであり、その瞳に映るのも…という思いが過ぎった瞬間、嬉しいやら恥ずかしいやら…いや、恥ずかしさの方が勝ったようだ。


アルベールの瞳に映る自分の顔がじわじわと赤くなったのは、お酒のせいにしようとグッと勢いよくお酒を飲むナマエの手は、一瞬で止まった。

ついでに眉間のしわも寄る。



『んむ…これ、本当に美味しいの?』

「はは、ナマエには早いかもな」

『ああ、アルベールはおじさんだから、味が分かると…』

「誰がおじさんだ!」

「アンタだろ」

「『!』」



ポンポンとくだらないやり取りを繰り広げられるいつもの調子に戻ってきたと思った時だった。



『…エルモート、おかえり』

「…ああ」



ナマエもアルベールも、ドアの音にも、近づいてくる足音にも気付けないほどに話しに夢中だったようだ。

エルモートの素っ気ない返答には、誰もがわかりそうなほどに、不機嫌さが惜しみなく出されていた。
やはり、しつこくついて行きたいと言ったからか、今だに怒っているようだとナマエは推測し、思わず俯く。



「もう寝た方がいいわよ!」

『っ、スフラマール!』



俯いた視線の先に、ひょっこりと現れた顔に、何で…と言いかけて、すぐに思い直す。

エルモートが出て行った後、再び扉の開閉音がした。あの時、扉横の窓から見えた小さな背中と、目の前の彼女の背中が合致したからだ。



「そうだな、もう寝よう」



スフラマールの言葉に同意を示したアルベールは、立ち上がっり、ナマエの手を取った。

ムッとエルモートの眉間にシワがよる。



『えっ、と、アルベール?』

「部屋まで送る」

『だ、大丈夫だよ!少ししか呑んでないし…!』

「男として、そういうわけにはいかない。ナマエは女の子だろう」

『え…えっ!?』



唐突な《女の子》扱いに、嬉しい気持ちと照れ臭い気持ちが、一気にナマエを襲う。

先ほどのやり取りもあってか、顔に熱が集まっていくことに戸惑いっぱなしだ。

握られた手に目がいくと、そこからもジワジワ熱が侵食してきているような感覚と、早まる鼓動に、ナマエのキャパシティが限界を迎えたようで…どうしようもなく目に涙が溢れるしまつ。

何故涙が出たのかわからないナマエは咄嗟に、零すまいと顔を上げた…のと同時に、突然別の方向に引っ張られる。勿論、体は力に抗えずその方向に軽くとんだ。




『っ!?』

「…なら、コイツはオレが連れて行く。アンタは片付けとけ」

『ちょっと!アルベールに片付け押し付け無くても…!』

「あ″ァ″?」



飛び込んだ先はエルモートの腕の中で…近距離からのエルモートの剣幕に体が固まる。
それにつられ涙も引っ込む。

ナマエの脳内では、自身の図上に恐怖アイコンが付いた様が思い浮かぶ。



『っ…(恐怖付与とか…黒騎士とシャオだけじゃないのか…!)』

※他に(主にパー様)もいますが、騎空団にいない故の思考です、あしからず。



「そうよ!嫉妬してイライラしてるからって、それはダメだと思うの!」

「ほぅ…」

『え…』

「なっ!?

チッ…」

『うわわっ!?』

「お前らはさっさと行け」



舌打ちと同時に、今度はスフラマールの方へ押される。



「しょうがないわね。行きましょう、ナマエ」

『え、う、うん?』




抵抗する隙を与えない早さで、エルモートに押され、スフラマールに連行されたナマエ。

エルモートの言葉の真意に気付けるはずもなく。




「ねぇ、ナマエ」

『へ?な、なに、スフラマール?』



ロビーから離れて、女子に割り当てられた一室の前でふとスフラマールが止まった。

それに倣って止まったナマエをにこやかに見上げている。



「……貴女を弱いなんて、誰も思って無いわよ」

『え……えっ!?な、何で、それ!!』

「うふふ、先生にわからないことなんか、無いんだから!」



この先生は普段色々と優しく教えてくれるのだが、本当に大切なことは、本人が気付くための《きっかけ》だけを教えてくれるのみだった。

今回はそのパターンだと、ナマエは理解する他なかった。


たとえ望まれなくとも
(ナマエのことを守りたい)
(そう思う人が…人達が、いるのよねぇ)
(この子のことも考えて欲しいところだけど!)

End
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神バハのアルベールの紹介文「好きなこと:晩酌」より。

アルベールは、神バハでもグラブルでもシャドバでもイケメンだと思う←
最近神バハ攻撃デッキから抜けたけど←
ATKギリギリ3万ないから…
デリンとかファウストに抜かれていく…

神バハのアルベール誕生日イベは、あまり走ってなかったけど!←
アルベールのエピしか解放して無い★

…そして四騎士SSR、パー様だけ来ない←
2018.6.23

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