足りないもの
凛Side
『愛が足りない…愛が足りないよぅ…』
なんだよ、それ。
思わず読んでいた雑誌から視線をずらす。
とくに意識して言ったのではないらしく、ボケっとクッションを抱き締めているオレの彼女。
今日は部活がプールの整備だかなんかで休み。久々の休みだから、どこかに行こうとなまえを誘ったが、《凛は体を休めないと!》の一点張り。
その結果、なまえの部屋で所謂お家デートってやつになったのに…
最近、構ってやれてねーから出掛ける提案したんだぞ。
なのに愛が足りないって何だよ…とは、ハッキリ言えねぇ。
通う高校も違けりゃ、お互い部活やらなんやらで忙しい。二人の時間は、確かに限られている。
それでも甘えてこないのは、なまえなりの気遣いであり、一種の愛情表情になりつつある。
ほんと、仕方ねーやつ。
『うわ、いきなり何!?』
「何って何だよ。なまえが、愛が足りないって言ってたんだろ?態々オレを充電させてやろーとだな…」
うわ、とは何だうわとは。
マジで拒否った声出してんじゃねぇよ。
なまえのうしろにまわって、抱き締めてやったら、予想外の反応。
キョトンとした顔でオレをみるなまえを可愛いと思うオレも、相当だな。
抱き締める力を強めようとした瞬間、突然、ああ!と叫ぶなまえによってそれはかなわなかった。
『違うよ!愛は愛でも、愛一郎のことだよ!』
「……は?」
愛って…
アイのこと?
いやいや、話が全く見えねぇよ。
キツく睨みつければ、伝わったらしい。
『いい?今の私には、愛一郎が足りないの!あの子の癒しの力が!!』
なんだよ癒しって。
言う前になまえが、あのね…と続ける。
『何でか知らないけど、最近、癒しだと思ってた真琴と渚が、何故か黒いオーラを放ってて…今日もさ、《部活が休みなら、凛といる》って言ったら、こう、ブワァッて感じでピリピリした威圧感?…みたいなものが凄くって』
大きな身振りで説明するさなか、なまえが軽く身震いした。あいつらの黒いオーラとやらを思い出したんだろう。
『だから、私には癒しが足りてないの』
言いたいことは、粗方理解した。が…
なら最初から、癒しが足りないって言えよ。紛らわし過ぎんだよ!
あれじゃまるで…オレよりアイの方が好きみたいな…
「……今からオレが癒してやるよ」
『え…』
戸惑うなまえを気にせず、その首筋に顔を埋め、手はなまえの服のボタンにかける。
「覚悟しろよ…色々と」
足りないもの
(ちょ、凛!何で…!)
(黙ってろ…(色んな意味で、注意力が足りてねーよ))
(ぁ…そこ、絶対見える!)
(見せつけるために決まってんだろ(真琴と渚にな))
End
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初!凛くんの小説!
2014.04.03
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