怜Side




屋上でお昼ご飯をとることは、僕が来る前からの習慣だそうです。

渚くんと屋上に着く頃にはもう、先輩達がお弁当を広げていた。





『ど、どうかな?』

「…うまい」

「うん、美味しいよ」

『本当!?よかった…』

「……」






不安気な表情を一気に明るい笑顔へと変えた彼女…真琴先輩と遥先輩と同い年のなまえ先輩。渚くんとも同じ、所謂幼馴染のメンバー。

そんな彼女はよく、先輩達にお弁当の味見を頼んでいる。






「あ、マコちゃん達ズルーい!なまえちゃん、僕にもちょーだい☆」

『もちろんだよ!はい、どーぞ』

「わーい!」

『あ、あの、怜くんも…よかったらどーぞ…』

「……」






横に勢い良く座り込んだ渚くんに笑顔でお弁当を渡すのに、どうして僕にはいつも、そうやってよそよそしく渡すんですか?

ツキンと胸が痛むのは、どうしてなんでしょうか…


僕が後から入り込んだから?






『れ、怜くん…?』

「怜ちゃん、いらないの?なら、僕が貰っても…」

「こら渚。それはなまえが怜にっていったやつだろう?」

「えー、だって怜ちゃん、黙りなんだもんー」

「……あの」






すっかり自分の世界に入っていたのを、無理やり現実に引き戻す。

そう、僕は決めたんだ…







「どうした、怜?」

「前から言おうと思っていたのですが…









なまえ先輩は、僕が嫌いなんですか?」

「「「『……は?/え?』」」」






一大決心をして言ったのに、この人達は全員一文字で反応してきた。

なんですか、「…は?」とか「…え?」って!!


何言ってんだこいつ、みたいな雰囲気から、真琴先輩と渚くんが慌て始めた。


質問をぶつけたなまえ先輩と遥先輩は、固まっている。





「本当、どうしたの、怜?」

「怜ちゃん、何か変なもの食べちゃった?…もしかして、昨日のハルちゃん家で食べた鯖が生煮えだったとか…」

「鯖に罪はない」





鯖、の言葉に復活する遥先輩に、色々な意味で流石だと思いながら、姿勢を正す。





「なまえ先輩、いつも遥先輩達におかずの味見をさせていますよね?」

『う、うん…そうだね』

「それで、どうしてなまえが怜を嫌いだなんて話になるんだ」





遥先輩の突き刺すような視線…って、何故睨まれてるんですか!?

咳払いをして気を紛らわせる。






「いつも、なまえ先輩は遥先輩や真琴先輩、渚くんに直ぐに味見を頼んでいますが……僕はいつも最後じゃないですか。たまたま僕が一番に来た日でさえ!後から来た渚くんに頼んで!…それに、どこかよそよそしくて…嫌いなら嫌いと、はっきり言えばいいじゃないですか!?」





シンっとしてしまったことに、しまった…!と思ってももう遅い。

あまりにも熱弁するかのような勢でまくし立てた自分が、
恥ずかしくて情けなくて、俯いてしまった。


膝上の握りこぶしは、微かに震えていて…






「プッ…あっはははは!」

「こら渚!」

「だって、怜ちゃんてば、勘違いしてるうえに、嫉妬してるから…!」




突然の渚くんの笑い声に顔を上げる。


僕の勘違い…と…嫉妬?





「だって、なまえちゃんは怜ちゃんのこt『渚くん!!』




渚くんの口を手で抑えるなまえ先輩だけど、僕は勘は鋭い方だと思っている。


さっき渚くんが言ったことと、今なまえ先輩に遮られながらも耳に届いた言葉…全て聞いた訳ではなくても、それだけで予測してしまう。





「なまえ、白状したらいいんじゃないかな?」

『ま、真琴…で、でもでも!』

「ほら、なまえちゃんが言えないなら僕が…」

『っ、わかった!言う!』





頬を薄っすら赤く染めて真っ直ぐ僕の目を見てくるなまえ先輩から、目が離せなくなる。





『れ、怜くん!』

「は、はい…」

『わ、たしは…











怜くんが、好きです!!』

「は、はい…?」





予測していた。

でも、予測するのと、実際に言われるのとでは、こんなにも違うのか…

キャパシティがギリギリの僕にはつい聞き返してしまう。





「本当…ですか?」

『本当だよ!好き…大好き!』

「っ、」





真っ赤な笑顔が、僕にも伝染してきたのが、よくわかった。

言葉だけで、人はここまで熱くなれるんですね…





「だって、怜ちゃん!」

「怜、返事しないと」

「っ、ぼ、僕…も…





好き…ですよ」

『っ、うん!』





なまえ先輩は、飛び切りの笑顔で僕の胸に飛び込んできた。





「これからは、味見は僕が一番目ですね。…いえ、むしろ僕のためにお昼を作ってもらいたいくらいです」

『あ…』

「話してくれますよね?僕に積極的に味見をさせてくれなかった理由」

『…笑わないでね?』




そういってなまえ先輩は僕から少し離れると、一呼吸置いた。






『その…私、料理は嫌いじゃないの。でも、得意ってわけでもないから…もし、口に合わないものを食べさせて、嫌われたらどうしようかと思うと、怖くって……三人が美味しいって言ってくれれば、怜くんに嫌われることもないかなって…』

「……まったく」




なんでこの人は、こんなに可愛いんでしょう?




「好きな人の作ったものなら、何だって食べられますよ」




またギュッと抱きしめると、僕の腕の中で、うん、と笑ってくれたなまえ先輩の額に、キスを落とした。




(やっとくっ付いた!もう、焦ったかったんだよね!)
(確かにそうだね。ハルもそう思…って、ハル?…え、固まってる!?)
(もしかしてハルちゃん…気付いてなかったの!?)
End
ーーーーーーー

降って湧いたFree!の初作品が怜が嫉妬って…(笑)

友達と語ってから、書きたくなって仕方がなかった!


2014.01.23

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