きみ攻略マニュアル
『好きです』
その一言で、世界が止まった気がした。
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「委員長、どうかなさったのですか?」
「……なにが?」
「あ、いえ…」
皆さんこんにちは。風紀委員会、副委員長を勤めております、草壁です。
実はここの所、悩みの種なのか、面白いおもちゃなのか…一部の人達のせいで、委員長の機嫌の上下は非常に激しかった。
今日はいつにもまして、上機嫌なご様子。
何故わかるのかって?
先ほどからペンを回しながら、我が校の校歌を口ずさんでいらっしゃるからだ。
何かそれ程までに良いことがあったのだろうか?
いつもクールで、基本表情を大きくは崩さない委員長が、他人目にはっきりわかるぐらい、口角があがっている。不思議でならないと思っていると、何時の間にか客人が来訪していた。
「ちゃおっス、ヒバリ」
「やあ、赤ん坊」
「なんだ。随分とご機嫌みてーだな」
「そうかな」
委員長は持っていたペンを置き、組んでいた脚を組み替えると、椅子に深く座り直した。
「…それで、用件は?」
「お前、なまえが好きなのか?」
「……なに、突然」
「ちょっとな」
な、委員長に…思い人!?
しかも、あのご様子からして本当のことなのだろう。違うのであれば、「くだらない」だとか「ふぅん、随分と面白いことを言ってくれるね」等と一蹴なさるはずだからだ。
「そう怖い顔すんな。あいつと面と向かって話したことはあるのか?」
「……そんな機会、あるはずもないだろう」
「お前にしちゃ珍しいな…そんなん自分から作ればいいだろう」
黒のボルサリーノで表情はあまり見えないが、口角がいやに上がっているのがバッチリ見えた。
委員長はというと、どこかムッとした顔をしておられる。そのまま機嫌がドン底にならなければ良いのだが…その心配は杞憂におわった。
「なまえはコーヒーが飲めねーからな。甘い菓子と紅茶でも用意してやれば喜んで話に付き合ってくれるんじゃないか?」
「…君の望みは何?」
「今度ツナの特訓に付き合ってくれ」
「何、咬み殺していいのかい?」
「ああ、思う存分暴れていいぞ」
「僕ばかりが得する交換条件じゃないかい?」
「そうか?オレはそうは思ってねーぞ」
「…そう、ならいいけど」
そう言うと、お二人は怪しいまでに笑い合っていた…。
きみ攻略マニュアルどうやら思わぬルートから入手されたようです…
まだ見ぬなまえさん…気を付けてください!
To be continue…
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[ mokuji]
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