この恋、きみ色







こんな感情、知らない。

こんな感情、いらない。

こんな感情、結局、辛くなるだけじゃないか…


そんな自分に驚いて、余計イライラして…



溜め息を付いた。







*******







最近、気になることが多過ぎる。


黄色いおしゃぶりの赤ん坊。

強いのか弱いのか、よくわからない沢田綱吉。

彼の周りにいつもいる、獄寺隼人に山本武。



そして…






「さっき屋上行ったの、みょうじさん?」

「ああ、同じクラスのヤツが、引っ張ってたぜ!」

「……」





廊下にも聞こえるくらい、静かな放課後の教室で話す男子生徒二人の会話に登場した、みょうじなまえ。


彼女の名前にこんなにも反応するなんて、自分でも思わなかった。


どうやら、僕がいない間に、屋上で告白をすると結ばれるなんていうジンクスが流行り出したらしい。


くだらない。


僕には関係ない。



いつもなら、それですむのに…
応接室へ向いていた足は、屋上へ。
行ってどうするというのか。


まぁ、適当な理由でも付けて、相手を咬み殺してしまえばいいか。うん、そうしよう。


君は知らないだろう。

僕がこんなにも、君にとらわれていることを……。








***








屋上への扉の目の前で立ち止まる。





『〜♪〜♪♪』

「?」





何か聞こえる…
話し声ではない、流れるような声。





「…歌」





それも、僕が最も好んでいるもの。

そっと扉を開けば、その声の主は全く気付く気配すら見せない。そのことに柄にもなく安堵して。





『〜♪いーつもー、かわーらぬー
健やか健気〜♪』





まさに鈴を転がしたような声に、思わず聞き惚れる。





『♪〜ああ〜、共にう〜たおう、なーみーもーり中〜♪』




風に靡く彼女の髪にも見惚れた。

この恋、きみ色

僕に入り込んだきみだけを見ていたいなんて、始めて思った。


To be continue…

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