今からきみに告白します
「何してるの?」
腹が立つ。
彼女の隣に立つ彼に。
彼の言葉に、顔を赤く染めたり、照れたように笑う彼女に。
そして何より…
まるで駄々っ子のように、嫉妬にまみれた声で、二人の前に立つ、僕自身に。
***
「キョウヤ!」
「もう完全下校時間なんだけど?」
声をかけてきたディーノをチラッと見てから、なまえに向かって言う雲雀。
『え、あ、す、すみませ…』
「まぁそう言うなって!なまえを引き止めちまったオレが悪いんだ」
『っ、え!?』
肩を引き寄せて庇うディーノに、なまえは顔を赤くする。
瞬間、雲雀の眉間にシワが。
勿論それがわかっているディーノは、ニヤニヤしている。
「送るぜ、なまえ」
「彼女は僕が送るよ」
『え…』
突然の申し出に驚くなまえ。
しかし、彼女以上に驚いているのは、言い出した雲雀本人なのだが。
「…生徒の安全を守るのは、僕の義務だ。貴方もさっさと帰りなよ」
「へーへー、分かったよ…っと、忘れるところだった」
ただでさえ近い距離だと言うのに、ディーノは更になまえの耳元に口を寄せ、何かを耳打ちする。
勿論、内容など一切聞こえない雲雀にとって、イラつきの元でしかないのだが。
「(好きな人がいるかくらいは聞いてみろよ!)」
『(っ、な、何言って!?)』
「じゃーなー!」
ニヤニヤしたままなまえの背中を雲雀へ押すと、ディーノはさっさと校門で待つ部下の元へと帰っていった。
***
「……」
『……』
妙な雰囲気の中、二人の足音だけが響く。
現状が辛いのか、なまえはチラチラと雲雀を見ることしか出来ないでいた。
そんななまえの様子は、雲雀には当然確認せずともわかることで。
「何か言いたいことでもあるのかい?」
『え、いや、その…』
口籠るなまえの頭にリフレインするのは、別れ際に耳打ちされたディーノの言葉。
ーー好きな人がいるかくらいは聞いてみろよ!ーー
これは、もしかしたら、最初で最後のチャンスなのでは?
そう思った瞬間、なまえはゴクリと生唾を飲むと、雲雀にしっかりと視線を向けた。
『あ、あの!』
「…何?」
『っす、きな人って、いますかっ?』
「………」
言った瞬間、なまえを後悔が襲う。
あまりにも唐突に、何てことを聞いてしまったんだ…
相変わらず無言な雲雀の纏う空気は、先程よりも確実に重たいものだと思ったなまえは、両手をぶんぶん振って謝罪体制にはいった。
『すみません、変な事聞いて…!』
「……よ」
『え?』
「…いるよ。好きな人」
頭を鈍器で殴られたような衝撃というのは、まさしくこの事を言うのだろう。
必死で振っていた両手はピタリと止まり、唇が微かに震えているのが分かる。
でも、情けない姿なんて、この人には見せたく無くて…ギュッと手に力を入れる。
『そうなんですか…』
「うん」
『い、意外です!どんな人なんですか?』
って、私は何を聞いてるの!?
自分で自分の首を絞める行為をとっている事はわかっているものの、自制が効かないでいた。
「…その子は、一言で言えば、鈍感…かな」
『鈍感…』
「ある時偶々会えてね。その時初めて会話をして…それ以降何度も見かけてはいたんだけれど、会話にはならなかった。
そもそも、気付いてたのは僕だけで、向こうは一度も見かけてないと思ってたみたいだけど…」
『鈍感さん、なんですね』
「これは正面から話さないといけないと思ってね。それである時、お茶会に招待した」
『ぇ、』
「そしてまた何度も見かけてはいても会話にはならない…やっぱり気付いてたのは僕だけで、向こうは一度も見かけてないと思っている日々の繰り返し…。普段の僕にはありえない行動をしているのに、僕の気持ちには気付いてくれなくて。あげく、彼女は隣を歩いているのに、僕の好きな人につきて聞いて来るんだ」
『つまり…それって、』
「……
今から君に告白しますってことなんだけど」
二度目の衝撃に、なまえの思考と身体は完全に停止した。
そっと撫ぜた彼女の頬が、熱を帯びた。
「好きだよ、なまえ」
End
ーーーーーーー
なんか滅茶苦茶な感じだけど、やぁっと、完結!
本当に亀更新過ぎてすみませんでした…!
アンケートや拍手、メールからコメントを下さった方々。そしてここまで読んで下さったなまえ様!
本当にありがとうございました☆
2016.3.5
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[ mokuji]
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